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11.過去⑽ 営業スマイル

短めです

 その後ピッタリとお泊まりがなくなった私に周囲は少しざわついたけれども、私が淡々と仕事をこなしていると心配そうな目も薄らいできた。



 相変わらず定期的に訪れる小野様とは、仕事の時の接点はほとんどない。

 せいぜいみんなでするお出迎えの時や女将さんの補助に入った時に顔を見る程度だ。

 最初に私が補助に入った時、何かされるのではないかと思われたのかチラチラ視線を感じた。

 角度的に見えた時だけは儀礼的に微笑んで、あとは流した。


 思ったよりも凪いだ心で淡々と仕事ができたと思う。


 逆に彼はずいぶんと緊張していたらしく、お相手が無事帰った後に大きな息を吐いてこちらを見た。


「お疲れ様でございました。」


 そうお声掛けするとまた息を詰めていた。

 何かするとでも思われたのだろうか。

 仕事上失敗してダメージが大きいのはこっちの方だ、アホか。


 一度だけご案内する時に2人きりになったけれど、庭の花の開花状況など業務上の雑談だけをして案内を終えるとなんだか呆然としていた。

 恨み言でも言われると思ったのか。アホか。


 何かを言えるってことは、その何かを言えるような適切な関係でなくては言うことなんてできやしない。

 別れた恋人からなら恨み言の一つや二つや百個くらいあるだろうけど、『存在自体が家政婦』なんて関係性すら否定されたら言うことなんてあるわけない。


 大人の、社会的地位も財力もある独身のイケメン。

 かたや親なし学無しの19歳の小娘。

 最初はちゃんとわかってたはずだったんだけどな。

 慣れって怖いわー。


 そういえば、サヨナラさえも言われなかったな。

 あぁ、それも改めて言うような関係じゃあなかったのか。



 その日、非通知で不在着信が入っていた。


 はっきり言って私に電話がかかってくる心当たりは1人しかいないが、そのままにした。



 その後はもっと視線を感じるようになった。

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