表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

8019J列車 深夜

 「北斗星」は郡山、福島と停車。時間はだんだんと寝る時間へと近づいていく。だが、今日僕は寝るつもりはない。なんと言っても青森で機関車の付け替えが見られるチャンスなのだ。寝るのはとてももったいない。だが、

(眠い・・・。)

そりゃそうだ・・・。

 仙台を過ぎる頃になるとお母さんが寝に行った。そして、お父さんも自分の寝台へと入った。上野駅で宴会をしていた同じ号車のグループも寝静まり、僕たちの前に来た2人もカーテンを閉めて寝ている。この2号車で起きているのはたぶん僕だけ・・・。寝台に入ったり、車内を静かに歩いたりを繰り返しながら、なんとか起きたままでいられるようにする。

「ガッチャン、ガッチャン。」

連結部から大きい音が出ている。連結部を飛び越えるように隣の号車へと移る。B寝台と窓に書かれた扉を開けて、寝台の並ぶ車内へと入る。車内はどの車両も静かだ。たまにいびきをかく乗客がいるだけだ。

「カンカンカン。」

また踏切を通り過ぎる。

「ピィーッ。」

遠くから汽笛も聞こえる。ロビーカーに行ってもそこにいるのは僕だけだ。大きいソファーの間を通ってロビーカーの上野側に行った。ロビーカーの隣は食堂車だ。中の見通せない扉には「食堂車」と書かれている。この中がどうなっているのかかなり興味はあるが、その「食堂車」の文字が僕みたいな子供が来るところじゃないと言っているようにも見える。

(ああ、足痛い・・・。)

そう思い近くの一人がけのソファーに座った。

「ピィーッ。」

その音で顔を上げた。

「あれ・・・。」

周りには誰もいない。「北斗星」は淡々と東北の地を走り続ける。外には街灯一つ無い。真っ暗な闇が広がっている。

 そのとき僕は少し心配になってきた。ロビーカーを後にして、1号車の方へと歩く。1号車の先頭に来るとEF81-81の文字が見える。まだ牽引機は変わっていない。

(よかった・・・。)

そう思った時、僕の体が機関車に吸い寄せられるようになった。とっさに壁をつかみ倒れないようにする。どこかに止まるみたいだ。

 だんだんと「北斗星」のスピードが落ち、やがて右に大きい構造物がある駅に停車した。明かりの付いたその大きい構造物を見た時僕はアレが新幹線の駅だと思った。新幹線の駅と東北本線が出会うのは仙台を通り過ぎると一ノ関と北上だけだ。仙台を通り過ぎてたぶん最初の駅だろうからこの駅は一ノ関だろうか・・・。

 扉が開かないまま、「北斗星」は一ノ関を出発する。

(あっ・・・。)

もうさすがに無理だ。1号車から2号車の寝台に戻り、僕は自分の寝台へと入った。

(ちょっとだけ・・・ちょっとだけだよ。)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ