8017J列車 「北斗星3号」
19時03分発「北斗星3号」札幌行き。この列車は「北斗星」のなかでは邪道に入る列車であるといえよう。「北斗星」は個室寝台主体の豪華列車というイメージをお持ちの方が多いだろう。もちろん、個室寝台主体の「北斗星」も運行されているが、それは16時50分に出発する「北斗星1号」のほうだ。
今回乗る「北斗星3号」は個室主体と言うよりは開放式B寝台主体の編成だ。一つの窓につきだいたい4つのベッドが上下に設置されており、この景色は寝台特急が夜を闊歩していた朱鷺を思い出す人も多いでしょう。
「僕上行くね。」
僕はそう言うと窓の近くにあるはしごをつかんだ。なお、下の寝台にはお父さんが入り、お母さんは同じ号車の別の寝台に入る。靴を脱ぎ、はしごを一段一段確実に登る。上まで上っていくと上段のベッドと同じぐらいの高さになる。僕は少し身をひねりながら、上段ベッドの中へと入った。上から人が落ちないように付いているバンドがベッドに入るには少し邪魔だ。
(うーん、ちょっと狭い・・・。)
ベッドの上に座ってみると天井までの高さが今の僕の身長でさえ使えるほど低い。
「・・・低いなぁ・・・俺もでかくなったな。」
お父さんの声がしたから響く。
「お父さんって寝台特急乗ったことあるの。」
「あるぞ・・・。っていっても「銀河」だけどな。」
「「銀河」・・・。」
後で知ったことだが、「銀河」は東海道本線を走る寝台急行列車。客車は「北斗星」と同じ24系客車が使われている。今では数少ない急行列車であるが、お父さんが乗った時は「銀河」も数多くの急行の一つに過ぎなかった時であろう。
その頃、反対側の寝台には若い女の人と僕のお婆ちゃんと同じぐらいの人が入ってきた。その人たちが落ち着いた頃、少し話す。こういう旅情が寝台特急では繰り広げられる。
気づくと「北斗星」はゆっくりと上野駅13番線ホームを離れ始めていた。「北斗星」は夜の街へと繰り出す。
「本日も、JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。ただいま上野駅を時刻通り発車いたしました列車は「北斗星3号」札幌行きです。」
数十分後、まだ夕方のラッシュ時間帯の収まることのない大宮駅に「北斗星」はかなりのんびりとした雰囲気で入線する。他のホームには湘南カラーの電車がひっきりなしに入線し、乗客はすでに満タンに近い列車に押し込まれたり、コップからあふれる水のようにホームにはき出される。黒のスーツに身を包んだ人ばかりが待つそれらの列車とは違い「北斗星」を待つ人たちは全員思い思いの服に身を包み、落ち着いている。
列車は大宮を出発。一つの揺れもなく、滑るように出発していくことには、地元の鉄道やJRと違うと言うことを感じずにはいられない。
「ピィーイィッ。」
EF81の汽笛が響いた。