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オチなし奇妙な物語  作者: 活動寫眞
8/12

突然の雨、

僕の目の前に現れた女性は地元中学まで一緒だった同級生。

両親が居なくなった後も、おじさんだけではなく彼女の家族も僕ら兄妹を

いろいろと助けてくれた。彼女とは高校の途中まで付き合いがあったが

親の転勤でその後は地方へと移り住んだ。


そんな彼女は仕事先でこの近くに来たので懐かしくなり立ち寄ったとか。

駅を降りるとそこに偶然、見知った顔があり声を掛けたらしい。



「久しぶりね、元気にしてた?」



今は突然の雨で駅前の喫茶店へと入り、彼女がコーヒーを、僕は紅茶を注文し

それを飲みながらの会話をしているところである。


と言っても一方的に聞かされているというのが正しい表現かもしれない。

だが昔から彼女はこんな感じで、僕は聞き役に徹していた。

それは彼女の声を聞いているだけでどこか懐かしく、幸せな気持ちになれたから。


まさかこんな時に聞けるとは思わなかっただけに

顔に驚きが異常に出ていたと見えて・・・



「あの時の顔、幽霊でも見た感じよね?」



感覚的にはそれに近いのかも知れない。

そこは何とか言いつくろい誤魔化した。


まさか恋焦がれていた彼女の声を“こんな状況下”で聞けるとは思わなかった。

などとは口が裂けても言えない。でもこんな時だからこそ、張り詰めていた気持ちにも

少しの安らぎを感じることが出来ている。

それが彼女の存在であり、声である。



「・・・昔から聞こうと思ってたんだけど」



散々自分のこれまでの人生を一方的に語ったあと

彼女は僕に対して質問をしてきた。それもかなり思わせぶりな質問の仕方である。

昔から?一体いつからだ??・・・・・少し間を置いてこう切り出した。



「どうしてあなたはまだ生きているの?」



外では静かな雨が突然、大粒の雨になり

喫茶店の窓ガラスを割らん勢いで叩きつけているように見えた・・・。


僕には彼女の言ってる言葉を理解できなかった。

何か冗談なのか?それとも昔流行っていた互いの挨拶的な会話なのか?

僕の思い当たる節はなく、余りに真面目な顔で言うので頭の中は混乱していた。



「突然なに?なにか冗談か何か?」


「違うわ」


「えーっと、昔に2人の間の合言葉とか?」


「それも違うわ」


「何か君に悪いことしたのかな?だったら謝るけど・・・」


「どうやら何も覚えていないようね・・・」



やはりこの言葉には理由があるのか。

しかし、いくら思考を巡らそうとも何も浮かんでこない。

まるで“記憶喪失”の男にでもなった気分になる。

彼女の表情を見ていると思い出さなくていけない事だと強く感じる。

何故だか分からないがとても重要なこと・・・。



「ふうー、冗談よ!」


「なっ!冗談なの!?」


「ごめんなさい。子供の頃にいつもあなたは無茶なことばかりしていたから

 どうしてこんなこと出来るのだろう?って関心してたの。

 普通の子供なら危険なことをね。その度に「なんで死なないの?」って思ってた。」


「それって死んで欲しかったように聞こえるけど?」


「うふふっ、でも私の中では何でも出来るあなたは“ヒーロー”だったのよ。」



初めてそんな風に思っていたのだと聞かされ

少し嬉しく、少し悲しい気もした。



「雨も止んだし、そろそろ行くね!」


「あっ、ほんとだ。気づかなかった。」


「今日の夜って予定空いてる?」


「えっ?ああ、一様はね・・・」


「一様なの?折角、私が誘ってるのに!」


「ごめん、お受けさせて頂きます!」


「了解!じゃー19時に駅前でね。」



その後の記憶が僕には無かった。

朦朧 (もうろう)とした意識の中で考えてみたものの

僕がここに何故居るのか全く理解できなかった。

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