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僕達は我に返るシリーズ

僕達は我に返る(2)

作者: 秋月煉

初めて俺様なキャラを書きました。なのでおかしな部分があるかと思いますが、生暖かい目で読んでいただけたら幸いです。

それは全くの偶然だった。昼休み、たまたま通った渡り廊下。そこで会長と呼ばれた気がしたのが、多分、俺の運命の分かれ道。


「会長のキャラってさー、マジで乙女ゲームでのテンプレだよね!」


なんだ? 下を見れば、中庭でお昼を食べている三人組の女子の姿が。俺を呼んだ訳ではないらしい。しかし、俺のキャラ? 乙女ゲーム? 何なんだ?

ふと気になった俺は、スマホを取出し、意味を検索した。今はすぐに調べられるから便利なものだと思いつつ、なにげなしに意味を見て……………固まった。女性向け恋愛シミュレーションゲーム。そんなのに出てくるキャラクターとやらと、俺様が同じ、だと!?

こちらが驚愕しているのも知らずに、彼女達の会話は進んでいく。


「だってさ、俺様生徒会長は、乙女ゲームのテンプレキャラでしょ?」


「人の話を聞かなかったり〜、強引だったり〜、ツンデレとかも〜いるよね〜」


ハキハキと答える少女と、のんびり話す少女。失礼なやつらだ! 俺はゲームになんて出とらん!!

しかし次の言葉には、ショックを隠せなかった。


「だから攻略法通り、自分に反抗する姿とか、肩書きじゃない自分自身を見てくれたとかで、骨抜きになったのかな? 別の場合もあるけど」


…………………なっ!?


おさげの子の言葉に、またしても驚愕した。何でこいつらは俺の思っている事が分かったんだ!?


「そうだからあっさりと落ちたんでしょ」


グサッ。


心と呼ばれる所に、何かが突き刺さる。お、俺はそんなに簡単に攻略されるようなキャラなのか!? ゲームでもそうなのか!? あのショートカットのやつ、酷くないか!?


「しっかし、会長の場合はゲームよりタチが悪いわ」


えっ? ショートカットの子が言った意味が分からなかった。どういう意味だ?


「確かにね〜」


「補助の人達、大変そうだったもんね…………」


ふんわりした子と、真面目なみつあみな子に染々とそう言われるが、心当たりは全くない。


「ゲームならハッピーエンドだけどさ、ここは現実な訳よ? まわりの人間の事も考えろって」


ショートカットのやつに、ズバッと言われた。カチンと来たが、まわりの人間の事も考えろ? どういう意味だ??

しかし答えはなく、変わりに話が進んでいく。


「でも会長ルートって大抵〜、お金持ちルートだよね〜」


「確かに! 大抵どこかの御曹司よね」


「うちの会長も〜、大手企業の御曹司だもんね〜、結婚したら将来安心だね〜」


「でも現実的に、社長夫人て大変だよね? そういうの、会長は考えてるのかな?」


えっ? ふと自分が社長になった時を考えてみる。…………うん、あっさり想像できた。

次に愛しい姫が夫人になった時を考えて…………あれ? 出てこない。こう出るには出るんだが…………不安しか出なかった。礼儀作法、言葉使い、知識………姫に当てはまらない!

あいつ俺には怒ったり、反抗したり注意したり、そんなだからたまに見せる笑顔にやられたんだが。

はっ……………まさかこれがさっき話していた、俺様生徒会長の攻略法………なのか?

急に不安になってきた。ま、まさかな? ありえないだろ!

俺はそのまま廊下を過ぎ、気付けば生徒会室の前にいた。正直、あの場に居たくなかった。

それに今は姫に会いたくない。気まず過ぎるだろう!

そんなモヤモヤした気持ちのまま、勢いよく扉を開けて……………固まった。今日は良く固まる日だな、とふと思う。厄日なのか?


目の前には、山積みの書類が置かれた俺達に与えられた机達。書類は、机に置ききれない分は、床にまで置かれている。

………………どうなってる?

副会長席には書類は全くない。

そういえばあいつ、最近姫の元に来なくなったな。婚約したとは聞いていた。自分から言い出したとも。俺は意味が分からなかった。何で姫がいるのに、別の奴を選ぶのか。まあ、ライバルが減って、内心は嬉しかったんだが。

そういえば、いつからここに来なくなったんだ? そこまで考えて驚愕する。1ヶ月もだと…………?

その間、ここは恐らく補助の奴らが仕事をしていたはずだ。だが、彼らはあくまで補助。判子を押す権利はない。


「くそっ! 何で言って来ないんだよ!」


使えない奴らめ! もっと早く言って寄越せば、まだやったものを!!

腹はくくった。どうせ姫の元へは、この気まずい気分のままでは行けない。だったら判子でも押して、気を紛らわせた方が楽だ。


放課後、俺はすぐに生徒会室に向かい、さっさと書類を片付けていく。補助が来たら罵倒する気満々でだ。

と、扉が開いた。


「おや、会長………珍しいですね? 姫の傍に居なくていいんですか?」


驚いた姿の副会長に、少しだけすっとしたが、顔には出さなかった。


「何となくな、しかし何で溜まる前に補助の奴ら、言ってこなかったんだ? 使えない奴しかいないのか?」


強引に話題を反らしたのは、まあ、何だ。理由を言いたく無かっただけだ。


「そんな事いうのは、貴方だけですよ、生徒会長」


呆れたような、哀れみさえ浮かべた視線を寄越されて、流石に俺もたじろぐ。


「彼ら、何度も言ってくれていたのに、無視したのは我々ですよ? 会長、この事で貴方が誰かを責めよう物なら、貴方はその席にはいれません、というより居てほしくありませんね、上に立つ者として失格です」


そうハッキリ言われ、唖然とした。俺が………?

それ以降の記憶はない。気付いた時には、自宅の自分の部屋にいた。多分、ショックがでか過ぎて、許容範囲を越えてしまったんだろう。よく無事に帰ってきたものだ。

今日の自分の腑甲斐なさに、頭を抱えてしまう。姫には会わず、あの三人には好き放題いわれ、極め付きは副会長ときた。

ふと、あの三人が言っていた、乙女ゲームを思い出す。あいつらがテンプレキャラとか言っていたが、本当なんだろうか? そうだ! 実際にやってみればいい。

そしてプレイをして数時間後…………。

俺は崩れ落ちた。まさに膝をついて、うなだれていた。ああ、彼女達が言っていた通りだよ! チクショー!! いくつか出来る範囲でやってみたが、見事に俺様生徒会長が出ていた。更に極め付きとばかりに、俺と姫の出会いまんまのストーリーもあったよ! 気持ち悪い。正にそれしか出なかった。


「それもこれも全部あいつらの所為だ!」


この不運の連鎖、それはあの三人だ。これは物申さねば治まらぬ! 不運の連鎖は、明日必ずや断ち切ってやるわ!!



◇◇◇◇◇



次の日のお昼休み。俺はあの忌々しい渡り廊下に来ていた。勿論、下には三人のオタク娘がいる。


「ねえ、あずちゃん聞いた? 昨日、会長が1ヶ月ぶりに仕事したんだって!」


お下げの子の第一声に、出鼻を挫かれたが。もう俺の話題が飛びかってるのか。


「わたしも聞いた〜、何か心ここに在らず〜な感じで、時間になったら〜帰ったらしいよ〜? 仕事はきちんとしてたみたいだけど〜」


「よくそれで仕事が出来たもんだわー、仕事なめてんのかしら?」


カチンときた。あずちゃんと呼ばれたやつに。


「何か〜、心配事でもあったんじゃない〜?」


あぁ! お前等の所為でな!

実は朝、姫と会ったのだが、違和感があったのだ。こう………上手く言えないが、本当に俺を見ている訳じゃないんだと、感じてしまったんだ。書記には俺には絶対に見せない無邪気な笑顔を見せ、会計には大人びた姿を見せる。そういえば副会長には、優しい感じで微笑んでいた。そう、まさに昨日の乙女ゲームのような、そんな感じで。そう感じたら、姫が得体の知れない何かに見えて、俺は結局あれ以来、姫に会ってない。気味が悪くて………。


「早く解決すればいいよねー、会長の悩み………生気の無い会長なんて、会長じゃないよ」


「お〜? 何々〜? あずちゃんは会長派かい?」


「えっ!? そうなの?」


「ちょっと! 何言ってるのよ!? あたしは一般論を言っただけで!」


「あー! 向きになる処が怪しい!」


「あずちゃん、そうなの!?」


後はキャーキャー騒いでいたが、俺の方は正に晴天の霹靂。寝耳に水だ。あまりの事に茫然自失。確かに俺は鎖を切る為に来たはずなんだ。なのに、まさかの恋ばなを、それも自分のを言われ、呆気にとられた。

そういえば、下の三人の顔は知らないんだよな。ここは真上だから、頭の旋毛が見えるだけだ。気になって向かいの窓辺へと言ってみる。天下の生徒会長が盗み聞きしたとか、明日学校の話題にならない事を願おう。そんな下らない事を考えつつ、彼女達を見て……………はあ!?

どんなブスだと思ったら、その正反対。全員がタイプの違う美少女達だったのだ。あのショートカットの子、確かあずちゃんと呼ばれていた子。まさにタイプど真ん中だった。品のある顔立ちながら、意思のある瞳が輝いていて…………まさかの一目惚れというやつだった。

そう、俺は恋をしたのである。



◇◇◇◇◇



「なあ、誰か中庭にいる三人の子達を知らないか?」


放課後、生徒会室にて俺は、判子を押しつつ、係で来ていた補助の子達に聞いてみたんだが、何故か微妙な顔をされた。特に副会長には睨まれた。な、何だ!?


「えー、それは中原 梓さんと、大和田 友佳里さんと、ふ、副会長の婚約者の河中 鈴音さんかと……………」


顔が引きつっている補助の子も、此方を睨み付けてくる副会長の事も、全く視界には入らなかった。何故なら、愛しい少女の名を知ることが出来たのだから。


「中原さんてブランドのRAIRAの社長令嬢ですよね? 大和田さんは大手の食品メーカーの社長令嬢だし、副会長の婚約者さんも河中グループのご令嬢…………うわっ、凄いメンバーじゃないですか」


補助の一人が、中々にいい情報をくれた。ほう、ブランドメーカーね? ここは親父達に頭を下げよう。



◇◇◇◇◇



「ねえ、あず? 貴方、神宮寺コーポレーションに知り合いいる?」


家に帰ってすぐに、ママにリビングに連れてこられ、第一声がこれ。


「はあ? 何言ってるの、ママ、いるわけないでしょ?」


「そうよね? 実はね、あちらから事業提携と一緒にお見合いの話が来たのよ」


「え? あたし今、高校生よ!?」


「分かってるわよ? お相手はね、貴方の高校の生徒会長やってる人らしいのよ」


「……………は?」


「何でも向こうが凄い乗り気でね? ちょっと断れそうにないのよ」


「分かった、分かったわよ! 受ければいいんでしょ! 受ければ!」


こうして、あたしの婚約者が決りました。つーか、会長、意中の人がいたわよね? 何で乗り気なわけ??



◇◇◇◇◇



副会長の婚約発表から、きっちり一週間後。またも学校中に、衝撃の話題が飛びかった。あの、生徒会長が婚約発表をしたのだ。お相手はブランドメーカーのご令嬢たる中原 梓さん。これには学校中が上を下への大騒ぎになった。何せ、生徒会長はとある女子生徒に夢中だったにも関わらず、自ら婚約者を迎えたというのだから。副会長の時は皆が納得したが、会長は流石というか周りが信じられなかったのだ。が、それはさらなる情報により、絶叫に変わる。何と、朝の登校を同じ車で来たのである。ここまで来て、漸く生徒達は信じたのである。副会長の前例があるためか、混乱はすぐさま沈静化したが、そうも言えない方も勿論いた。噂の女子生徒である。生徒会長を取り戻すべく、乗り込んだはずが、まさかの会長の溺愛ぶりに、付け入る隙は全く無かったのである。この後、女子生徒の叫ぶ声が聞こえたらしいが、これは定かではない。


まずは御礼をさせて下さいませ。


この作品を読んで下さった皆様、本当にありがとうございますm(__)m


始まりは何となく始めた副会長視点でしたが、えー、まさかの日刊学園ジャンルで3位を頂きました。見た時に、心臓が止まるかと思いましたが(汗

普段は、ファンタジーものを中心に書いている訳ですが…………、乙女ゲーム、凄い人気ですね(;^_^A


お気に入りを入れて下さった皆様、本当にありがとうございますm(__)m



さて、解説と参ります。

今回は初めて書きました、俺様キャラ! まあ、秋月の腕前は未熟者な為に上手く出来たのやら………。かなり不安なクオリティーになりました。

本当に生暖かい目でご覧下さると助かります。秋月には俺様キャラは厳しかったみたいです。

さて、会長ですが、まさかの一目惚れ。副会長と被ってますね。アハハ…………。


次回は来月になりますね。すいません。また浮かんだら、続き書きますね(^.^)b


本日はお読み頂きましてありがとうございましたm(__)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] 乙女ゲームのキャラその物と言われ、”何をと言っているか”とばかりに、確認して、自分の行動の恥ずかしさに崩れ落ちる。 今の所、会長と副会長しか読んでいませんが、このパターンが非常に面白いです…
[気になる点] 誤用のご報告です。 × 恋愛【シュミ】レーションゲーム ○ 恋愛【シミュ】レーションゲーム スペルはsimulationなので。 × 上【から】下への大騒ぎ ○ 上【を】下への大騒…
[一言] 会長がどうして副会長が正気に戻ったのかに気づくと思ってた。
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