表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

深崎 人輝「取材手帳」

 21 july

 終日小説のネタを探す。犯罪者の収容所に取材のために入ったのに、案外と何事もなく平和なまま時間が過ぎていく。

 だが、あの犯罪者のカウンセリングを担当する女医の話は興味深いな。どんな人間が犯罪を犯しやすいのか、またどんな精神の障害を彼らは抱えているのか、そういった話はなかなかに興味深い。



 22 july

 やれやれだ。取材していると犯罪者に絡まれることも多い。自分の心と向き合えていない人間。そんな人間の話を聞きたいだけなのだがな。

 今日も女医のもとに話を聞きに行った。中でも興味深いと思った精神障害は、統合失調症。よく聞く言葉ではあるが、生の職場で聞くその言葉には重みがある。

 統合失調症と一口で言ってもそう簡単ではない。ただ狂ったように暴れるだけの連中や鬱と見分けのつかないものから、ひどい妄想から記憶すらも捏造し、自分が誰だかわからなくなっていく例もあるそうだ。

 記憶を捏造して過ごす人間か……なかなか良い小説の材料になりそうだな。



 23 july

 女医曰く、ここにいる連中は犯罪者なんかではないとのことだ。精神を病んだ人間は病気であり、犯罪を犯してもある種仕方がないとでも思っているのだろうか?

 また、あなたも病気なのだ、というようなことも言っていた。精神病とは突き詰めていけば、誰もが何らかの精神病と判断される。誤診もどれだけあるか分かったものではない。



 24 july

 ある程度話を聞けたので早く帰ろうと思ったのだが出られなかった。刑期を全うするまで、とでもいうのか。冗談じゃない、私は実際に犯罪を犯しているわけではない。

 ……はて。そういえば私はどうやってここに潜入したんだったか?



 25 july

 ふと気付くと、自分の帰る場所が思い出せない。小説の書き出しも何一つとして浮かばなかった。あまり長い間ここにいたからおかしくなってしまったのか?

 まずい、絶対にまずい。絶対にここから出なくては。絶対に……。

 ここから出られればそれでいい。ここでないどこかへ。そうだな、誰か適当に殺せばここと別な場所に行けるだろう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ