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手品で戦士で救世主  作者: 置きねこ
第1章 出会い
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第09話:俺と付き合ってくれ!

 平然とやって来た月曜日は、誰に告げるわけでもなく独断と偏見で快晴を選んだ。だが雲一つない快晴というのも困りものだ。大地に容赦なく太陽光を振りまくのは夏休みだけにしてほしい。成層圏のオゾン層さんもちゃんと仕事してください。

 まあ、その代わりと言ってはなんだが、僕の通う銘鐘めいしょう学園は今日をもって夏服へ移行する。そろそろ4年目の冬服にも飽きたころだったから丁度いい。というのは建前で、待ちに待った夏服女子を崇められることに喜びを覚えているのが本心だ。え? 変態? それがどうしたって?


「男がロマンを求めて何が悪い!」


 僕の目覚めは1周まわって不快だった。


「な、何言ってんのアンタ?」


 飛鳥が冷めた目で寝起きの僕を凝視する。


「あ、おはようございます。今朝はいい天気ですね」

「…なんで敬語なの?」僕にも分かりません。

「は、はは、とにかくおはよう。今日の朝ごはんは何だ?」


 話題の変え方死ぬほど下手だな僕。


「えっとね、今日はそうめんだよ」

「お、いいね」

「早く降りてこないとショウガ入れるからね」

「わ、わかった! すぐ着替えますから! 勘弁してください!」


 僕はショウガが大の苦手で、あんなもの口に入れたあかつきには即刻病院送りだ。それを知っている飛鳥は、しばしばこの手の脅しで僕の行動を制限してくる。小悪魔の「小」がついてないタイプだ。


「早くしないとホントに入れるから。40秒で支度しな」妹はSランク悪魔。

「ま、待て待て待て待て」

「レディ、ファイッ!」

「うおおおおお!」


 声を上げて着替えたのは生まれて初めてだった。


 ******


 ボタン良し。ベルト良し。顔色良し。身支度を37秒で済ませた僕は息切れを起こしつつリビングの最寄りの椅子に座った。


「あら、早かったね。まだそうめん茹で上がってないんだけど」しばくぞコラ。

「なんなんだよもう。僕のバーストリンクが無駄になったじゃないか」

「君も加速できるのか」

「何を今更。僕こそが世紀末の風来坊こと関ケ原大和だ」

「聞かぬ名だな、誰だ」

「私だ」

「お前だったのか気付かなかった」


 2人でくだらない会話をしているとそうめんが茹で上がった。


「じゃ、いただきます」

「ショウガは?」

「いらねえよ」


 なんだかんだ言ってすすったそうめんは美味しかった。これがまた麦茶とよく合う。黙々と食べ進めているとあっという間に無くなった。


「ごちそうさまでした」

「980円になります」

「金取るのかよ!」

「あ、それから深夜料金が」

「嘘つけ。まだ8時だろうが……え?」


 しまった! もう8時になっていたとは!


「もう行かないと! 飛鳥、お前も急がないと遅刻するぞ!」

「うん、行ってらっしゃい」

「おう」


 僕は靴ひもを結びながら学校目がけて全力疾走した。


 8時35分、チャイムが鳴り響くなか、僕は教室に飛び込んだ。


「せ、先生… 判定は?」

「セーフだ」

「ヒーハー!」


 床にうつ伏せのまま叫んでいると早く席に着けと怒られた。


「危なかった…」

「相変わらず時間ギリギリだな、ヤマト」


 前の席の茶髪が振り返って笑う。


「お前も相変わらず生意気だな、佐世保させぼ

「…それは褒め言葉だよな?」

「ああ、馬鹿には丁度いい褒め言葉さ」

「黙れ!」先生が教卓をどかんと叩くと教室は静かになった。

「…それではホームルームを始めますが、今日はみなさんに転校生を紹介します」


 なんだこのホームルームあるある。汗だくだった僕は水筒の麦茶を一口。ああ癒される。


「みなさん初めまして。啓蓮けいれん高校から転校してきた赤羽根茜です。よろしくお願いします」


 噴き出した麦茶が佐世保の後頭部を直撃した。


「うわっ! きたねえぞお前!」

「ごめん、初めましてじゃなかったから」

「は?」

「あ、ヤマトくんだ! 久しぶり!」


 なんの冗談だオイ。


「ヤマト! 知り合いなのか?」佐世保が小声で接近してくる。

「まあ、小学生のときに同じクラスになったりしたことはあるけど…」

「家にお邪魔したことは?」

「え、えっと何回か部屋に…」

「イナフ!」佐世保がガッツポーズをつくって立ち上がる。

「赤羽根さん! いや、茜さん!」

「え、なに?」

「お、俺と…」


 佐世保が下を向いたまま茜に手を差し出す。


「俺と付き合ってくれ!」


 あまりにも突然の出来事にあっけにとられた教室はしばし沈黙に包まれ、生徒全員の目線が佐世保と茜に向けられたその折、2回目のチャイムはひとりでに鳴り響いた。 

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