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手品で戦士で救世主  作者: 置きねこ
第1章 出会い
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第15話:さながら戦士のようだ

 なぜいつも途中で投げ出してしまうんだろう。なぜみんなと同じ場所に立てないんだろう。

 いつもいつでもどんな時でも、俺は勝ったことがなかった。勝ったと思えることがなかった。

 欲しかったのは成長。成長する力、それだけだった。

 平均を上回れず、普通についていけず、常識が理解できず、みんなが1から10まで当然のように出来ることが、俺には半分もできなかった。悔しかった。世界が嫌になった。


「もっと上に、もっと大きく、なにもかも『倍』になればいいのに。そうすれば俺だって…」


 俺は身を投げた。

 だけど、死ねなかった。俺自身が死なせてくれなかった。骨ひとつ折れてない事実に驚いた。


 一体何が――


 やがて自分の力を自覚しつつ、その力の正体を、俺は必死に調べた。この力はなんなのか。

 結局、正体に行きつくことは出来なかったが、「同類」はすぐに見つかった。たまたま立ち寄った喫茶店でその男に声をかけられた。


「君には特別な力がある。世界を動かす大きな力が」

「世界を動かす力…?」


 何言ってるんだこの男は? 最初は冗談だと思っていた。


「そう。君はこれまで、世界に疑問や違和感や嫉妬や不満を感じたことはなかったかい? 僕だってその一人さ。だから僕は世界を変えるための組織を立ち上げた。君も一緒に世界を変えてみないかい?」

「俺が世界を…!」

「よし! それじゃあとりあえず今日から、君と僕は友達だ! よろしくね!」


 世界を変えたかったのは本心だ。みんなが平等でなく、優れる者と劣る者がはっきりと混在する世界が、大嫌いだった。

 だけど、なにより俺の「友達」になってくれたのが、嬉しかった。その男の組織には、俺と同じような悩みを抱えた人たちがたくさんいた。

 同じことを思う人間と一緒にいるだけで、こんなにも幸せなのか。

 俺はこの仲間を失いたくなかった。やっと見つけた俺の居場所を逃したくなかった。


「大丈夫。必ず僕らで世界を変えられる」


 正直、世界なんてどうでもよかった。ただこうして俺を普通以上の人間として扱ってもらえることが嬉しくて、それだけで満足なのだ。だから、そういう運動に参加してもっとみんなの為になろう。


「そういえばまだ名前を聞いてなかったね」


 とっくの昔に捨てた名前、それを使う日が来るなんて思わなかった。


久々野(くぐの)久邦ひさくにです。えっと、あなたは…?」


 男は頭をかいて笑う。


「別に、みんなは『リーダー』って呼んでくれてるから」

「じゃあリーダーさん。これからよろしくお願いします」

「『さん』はつけなくていいよ、久々野くん」

「ははっ、ですよね!」


 俺は、革新軍イノベイターが大好きだった。


 ――――――――――――


 倍の背丈にまで豹変し、僕達を見下ろすようにリングに居座る久々野。彼の起こした地響きによって、ボクシング部内のトレーニング器具がひとつ残らずコンクリートの床に倒れ、古びた壁にはさらにひびが入っていた。

 そして同時に二度目の白紙戻し(ホワイトアウト)が始動し、リングの上の久々野は徐々に見えなくなっていく。

 だが、久々野も当然対処法を練っていたようで、待ってましたというように吠える。


「視力! 嗅覚! 走力!」


 視界が完全に遮られる前に久々野は安曇野の目前に迫る。


「お返しだ」

「がっ……!!」


 久々野の部分部分の倍化の積み重なりが、驚異的な威力の右ストレートを生み出し、ガードを破って安曇野の身体を壁まで吹き飛ばした。


「安曇野…!!」


 向こうで壁の割れる音が響く。しかし、駆け寄ろうにも白紙戻し(ホワイトアウト)の影響で安曇野の居場所がつかめない。


「どこだ? 大丈夫か?」


 返事は聞こえない。足元には安曇野のバンダナが落ちていた。

 僕は改めて実感した。今までこの能力ちからを、不思議だとか別次元だとか夢だとか妄想だとか、「あの日」から常に付きまとっていながら、それでもなお真実だと、現実の出来事だと思い込めずにいたのだ。

 それを、目の前で起こる闘いを通して確信した。


 僕は本当に転生者リンカネイターなんだと――


「次はお前だ、アホ面」


 久々野が白の世界から飛び出してきた。僕は瞬時に左手を構える。


「ぎいいん!!」


 久々野の強烈な打撃は、蒼い盾(サファイアシールド)を少し凹ませる程の凄まじい威力があった。


「なんだお前も転生者リンカネイターか」


 久々野は呆れた顔で、それでも手を休めようとはしない。


「誰がアホ面だ! それと転生者リンカネイターで一括りにするな!」


 反撃をしようと右手から紅い剣(ルビーソード)を出すと、久々野は攻撃をやめて5歩ほど下がった。剣のリーチにギリギリ入らない位置をあのわずかな時間で判断するとは。


「これはこれは、盾に剣に、さながら戦士のようだ」

「よく聞け久々野! 僕は『手品戦士イマジンセイバー』の関ケ原大和! お前をアーカイブとして本部へ連行する! デッドオアアライブだ!」

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