???
今回は閑話っぽい、???サイドの会話です。
……ファンタジー成分が出てきます。SFにそんなもん持ち込むなとお叱りをいただくかもしれません。不快な思いをしてしまったらすみません。
~ ??? ~
「あら? どちらへ行かれるのですか、主様」
「なに、ちと今回の世界の観光にな」
「おやおや、それはいけません。主様にはここでじっと見守っていただかなくては」
「そんなケチ臭いことを言うな、候補者を直接下見しに行くのも立派な仕事ではないか」
「さきほど堂々と『観光』と仰られましたが?」
「……はて? そうだったかの」
「長く生き過ぎて、とうとう耄碌なされましたか。おめでとうございます」
「言うに事欠いて何がめでたいじゃーッ!? 消し去ったろかこのアマぁー!」
「お言葉ですが、ちゃんとした理由がございます。あとキャラ付け口調が抜けてますよ?」
「ほう、主を耄碌おめでと呼ばわりしといて正当な理由があると? そしてこの口調は元からじゃ」
「では僭越ながら申し上げます。……もし主様が耄碌なされれば、主様は自身の使命をも忘れる事が出来て、自由に生きることが出来るようになるではありませんか? ……それほど私にとって嬉しいことはございません」
「っ……そうか。だが残念じゃが、わし耄碌はしとらんし、使命についても片時も忘れるようなことはせん」
「そうですか、それは本当に残念です」
「というわけで、行ってくるぞ」
「なにが『というわけで』ですか、前後の文が繋がっていません。ダメです」
「いいではないかー! 減るもんでもないし!」
「いえ減ります、それはもうがっつりと減りますよ主に土地と建物が。以前の世界での出来事をお忘れですか?」
「えっと……どの時の事じゃ?」
「私に隠れてコッソリと街まで遊びに行って、年端もいかぬ子供に『うはっwwwめっちゃだせえカッコwwww』と揶揄されただけで癇癪を起こし、半径100m草木も生えぬ焼け野原した時の事です」
「そ、それは……わしの時代を先取りしすぎたファッションをあのガキが理解できなかったのが悪くて……」
「いったい『寝巻き』がどこの時代を先取りしているのか教えてください」
「仕事は完璧な機械にまかせ、24時間寝て暮らせるようになった時代」
「滅べよそんな自堕落な時代」
「従者……怖い」
「おっと、失礼いたしました。そのよう糞な時代など、ロボに反逆されお滅びなった方がよろしかと」
「いや、丁寧に言い直してもなお怖いわ」
「それほど私も腹に据えかねたのです。あの後の再建と隠蔽工作がどれほど大変だったことか」
「ぅぅ……。それはホントにすまんかった。じゃが今度はそのようなことはせん、だから行かせておくれ」
「……本当ですか?」
「本当じゃ」
「神に誓って?」
「……わしにどの神に誓えと?」
「冗談です。では主様のプライドにかけて、一生とは言いません、『この場で嘘はつかない』と、誓うことが出来ますか」
「出来る! 誓う!」
「そうですか」
「な? じゃから行ってもいいじゃろう?」
「ダ ☆ メ」
「ホア―――ッ?!」
「主様、落ち着いてください暴れないでくださいイタイです」
「落ち着いていられるかァーッ! いいようにわしをからかいおって!」
「もういい大人なんですから、大人はそのように取り乱しませんよ? イタイイタイ」
「わしに年齢なんて関係ない、あんな固ッ苦しい大人という生物になるくらいなら、子供の方がましじゃ!」
「左様ですか。イタイイタイ。……っと、お待たせしました、準備が完了したようです」
「なに? 準備じゃと?」
「ええ、私も今までただ無駄話をしていたわけではありません。主様で遊――主様の願いをお聞きしている間に、主様に相応しいキャラクターを作っていたのですよ」
「なにやら無礼な言霊が聞こえかけたが、不問にしておいてやろう。で、わし用のキャラクター?」
「主様の誓いを信じぬわけではありませんが、もしもの事故が怖いですし、それならば今回は主様自身もプレイヤーとして参加して頂くのが安全と思い、それ用のキャラクターを作成しておりました」
「おお! なるほど! さすが従者、準備がいいのぉ!」
「手の平を返したようなお褒めの言葉、光栄です」
「まいどまいど一言多いわ」
「申し訳ありません。ではこちらの主様専用のディバイサーをお付けください」
「ほぉこんなものまで。本当に用意していたかのように準備がいいのぉ」
「そりゃ準備していましたから」ボソッ
「えっ」
「なんでもございません。では続いてこちらを――ガチャッと」
「!? 今何をした? ディバイサーのせいで何も見えん! 手足が動かなくなったぞ?!」
「今お付けいたしたのは、『非常用魔力制御装置』です。向こうの世界で主様が癇癪を起こしても向こうの世界は無事ですが、主様の身体があるこちらの世界で何が起こるかわかりませんからね。これはその暴走を防ぐ物です」
「は、はぁ、なるほど。いつの間にそんなもん開発しとったんじゃ?」
「今までの世界で得てきた知識を元に、だいぶ前に開発しておりました。今まで使える場面がなかったのでずっとお蔵入りでしたが」
「ほー」
「では早速《The Unknown World》へ――」
「ちょっと待つのじゃ、わしの分身はどのようなキャラクターなのんじゃ? 確認しておきたい」
「チッ 勘がいい」ボソッ
「えっ 今なんか舌打ちが……」
「いえ、そんなことはございません。今ディバイサーに主様のキャラクターを投影しますね」
「う、うむ」
「では、ポチっとな」
「……………は?」
「いかがなさいました?」
「お、おぬし、これは……ッ!」
「はい?」
「『はい?』ではない! これでは年端もいかぬ子供ではないか!」
「はい、大変可愛らしい仕上がりとなっております」
「しかもなんかフリフリのワンピース?! わしにこれを着ろと!?」
「寝巻きより何倍もマシです」
「なぜじゃ! なぜこのような姿にした!?」
「だって先ほど仰られたではありませんか」
「は?」
「――『子供の方がましじゃ!』、と」
「?! ……まさか……おぬし」
「はい?」
「わしから『子供の方がいい』という言葉を引き出すためだけに、さっきまでの言葉遊びを……!」
「はて? なんのことですか? にっこり」
「確信犯じゃな!? 『にっこり』と音読するぐらい確信犯なんじゃな?!」
「そんなまさか。では新たな身体に慣れなければいけませんので、まずは人気のない世界樹の元にでも転送しますね」
「まて! これは嫌じゃ! 変更を求める!」
「またまた、お戯れを」
「戯れてはおらん! 普通に今のわしのような可憐で威厳溢れる大人の姿に戻すのじゃ!」
「えっ 主様って可憐で威厳に溢れていたんですか? てっきり不憫で哀愁漂う方かとばかり……」
「誰の所為だーッ?! 張っ倒したろかコンニャロォッ!」
「どちらにしろ変更は認められません。先ほど誓ったではありませんか、『この場では嘘を吐かない』とね」
「なッ」
「ですから『固ッ苦しい大人という生物になるくらいなら、子供の方がましじゃ!』、というお言葉通りに設定したのですよ?」
「おぬし……いったい何処まで計算して……ッ!」
「はて? なんのことでしょう? にっこり」
「もう嫌じゃこんな従者ぁーッ! こうなったら――って身体が動かん! 魔力も使えん!?」
「おお、ということは私の設計は完璧だったということですね。爆発しなくてよかった」
「爆発?! ま、まつのじゃ従者、なにやら嫌な予感――じゃなくて体調が悪い! 私の中に封印したはずの九つの大罪っぽいのが騒ぎ出してなんか眩暈とか嘔吐感らしいのおがひどいことになってるよッ!」
「というわけで、いってらっしゃいませ」
「話し聞いてぇーッ?!」
「再び、ポチっとな」
「この鬼ぃー! 悪魔ぁー! 帰ってきたら覚えてろよコンチクショーッ!」
「主様主様、キャラ付けキャラ付け」
「元からだと言うておろうにぃぃぃいぃぃ――ぃ―ぃ――……」
「……いっぱい羽を伸ばしてきてくださいね。我が主様」
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
( ゜д゜)<S…F……? m(_ _;m) 全力土下座。
次回からはフツーにサバイバル再開です。
ご意見ご感想ご指摘、お待ちしております。