生命線の《アビリティ》―2
そして探索した結果、
『薬草×4』
『治癒草×11』
『滋養草×3』
『ハーブ×7』
『リーンの実×1』
『ヤコの実×7』
『鳥の羽×3』
『木の枝×11』
を入手した。訳がわからんものばかりだ。
あと十回に一回ぐらいの確立で、一つ拾ったアイテムが二つになったりした。おそらく《採取》の影響だろう。
『――ルルルルル』
と、ここで呼び鈴。確認するまでも無く、沙耶とジーンからだ。
夜になったら連絡を取り合えうのが習慣になりつつあった。
『こんばんは、無事ですか?』
『よう、二日目の夜だが、いかがお過ごし?』
「順調でございますよ。とりあえず生きるのに必要な食糧を確保してきた。本格的な探索は明日からだ」
で、とりあえず手に入れた物を報告してみる。
『ふむ、ハーブは《調合》でポーションを作り出すのに必要なものだ。《滋養草》は《SP》回復、調合すればSPポーションが作れる。リーンの実と治癒草は知らんな、ヤコの実はこっちにもあるが固くて食えん。他はなんかの素材に使えるか、ゴミだな』
『治療草というのに興味がありますね、どんな効果なんですか?』
「ここらへんじゃいっぱい取れるぞ。HP回復+60だそうだ」
『60!?』
ジーンが思った以上の驚きをみせた。
「それは凄いのか?」
『凄いよ。そりゃきっとまだ見つかってない薬草の上位版だ。こっちに持ち帰れればきっと高値で売れるぞ』
「そうなのか?」
『はい、高い需要があるんです』
沙耶のそれに同意する。
『薬草の三倍の効き目ということは、それから《調合》できるポーションの効き目もおそらく三倍です。つまり、HP回復+150の『HPハイポーション』が作れるはず。これは店でも売っていなくて、βテストのとき敵のドロップで少量確認されてただけです』
『それに珍しい草での《調合》は、《調合》アビリティのレベルアップにもなる。だから……そのままの『治癒草』で薬草の8倍、『ハイポーション』ならポーションの10倍で売れるかもしれん』
「そんなにか!」
そのインフレ具合に俺もさすがに驚いた。
「回復量は3倍になるだけだろう?」
『ああ、だがその回復量以上に、希少性と利便性に価値がある』
「――ああ、なるほど」
理解した。アイテムを使う場合はイベントリから掴み出して割る必要がある。HP150回復する為にはポーションを掴んで割ってを三回繰り返す必要があるが、ハイポーションならそれが一回だけで済むわけだ。素早い反応が必要とされる最前線で、その差は大きい。店売りで手に入れられないならなおさら価値はあるか。
「こりゃ面白くなってきたな」
生還して一攫千金。なかなか夢があるじゃないか。
『その様子じゃ、脱出も結構なんとかなりそうだな』
と、一転して楽観的なったジーンに、俺はそうじゃないと一応否定しておく。
「いや、実はそうでもない。今日は例の大猪3頭に追い掛け回されて、また死ぬ思いをしたよ」
『……よくそれでまだ生き残ってるな』
「セーフティエリアが近かったのもあるが、それ用のアビリティを習得したからな」
『ん? どんなだ?』
俺は習得したアビリティを伝える。
『もう完全にサバイバル用ですね』
『……そんなんにAP使っていーんか? 戦闘用なきゃこっち戻ってきた時苦労するぜ?』
沙耶は普通に受け入れたが、ジーンはだいぶ渋い反応をした。
「いーんだよ俺は。とりあえずは、できる限りあがいてみることにしたからな」
『私は兄さんならそうすると思っていましたから、驚きもありませんけど』
『……ハイハイ、まったくこの兄妹は』
チャットの向こうでジーンが苦笑した。
――パシュッ ――パシュッ
クリスタルの広間で、矢を放つ音だけが静かに響く。
――パシュッ ――パシュッ
(だんだん使い方はわかってきたな)
夜になって外出できなくなった俺は、広間にあった枯れた根っこに対して《弓術》の練習をしていた。
リーンの実を採った時のように、思わぬところで必要になることがわかったからだ。
しばらく練習を繰り返して、止まっている物にならだいぶ当てられるようになっていた。
(今度は動きながらやってみるか)
《ダッシュは》使わずに、普通に走りながら矢を放ってみた。
タタタッ――パシュッ
(…………)
矢は、ターゲットの大きく上を通り過ぎていった。
(……まだ戦闘にはつかえそうにないな)
それでも諦めることなく練習は続けた。
そうして夜が明けたところで、再び探索を始める。
結果、新たな発見物はなく、またモンスターに追い回さたが、ヤコの実がたくさん実っている場所を見つけた。ヤコの実は硬い殻に覆われていてるが、説明文に【実は柔らかくて美味しい】とある。今度いろいろ試してみよう。
そうしてまた一日を終え、もはやホームとなった大樹の中に帰ってきた時には、さすがに疲れて眠くなってきていた。
沙耶とジーンにログアウトする旨を伝えて、現実の世界に戻る。
「……ふぅ、疲れた。こんなにゲームにはまったのは久しぶりだな」
実際の身体は全く動かしてないはずなのに、適度な疲労感があった。
これなら良く眠れそうだ。
「明日は、もうすこし遠くまで行ってみよう」
――こうして俺の怒涛のサービス開始一日目が終わった。
**********
ネーム:【ユウ】
クラス:【ハンターLv6】
セットアビリティ
《短剣術Lv6》
《弓術Lv6》
《ダッシュLv11》
《ステップLv13》
《忍び足Lv5》
《鷹の目Lv6》
《目星Lv5》
《採取Lv6》
《持久力Lv6》
残りAP=4
空腹値:20 状態:空腹
**********