第12話 出発、いざ北西へ!
ああ時間が欲しい!書くための時間が欲しいぃぃ!
そんななかやっとこジーンPT編の話が大体できあがったので投稿開始します。3話分ほど連日投稿……したい!
~ 第12話 出発、いざ北西へ! ~
「ちょ、ちょっと待ってくださいよマスター、冗談でしょッ、4万Gって、なに?!」
飲食費でそんなにかかるはずが無い!
そんな俺の講義に、表情を変えずマスターはこう言った。
「確かに半分冗談ですが、半分本気です。これは酒場の修理費でして」
「「…………」」
瞬時にマスターから目を逸らす俺とアキ。
「あらかじめ壊さないように言っておくべきでしたが……ここまで派手に戦われるとは思っていなかったので。できれば修理に協力していただけませんか?」
今や酒場の入り口付近のロビーは、ちょとした戦場跡地だった。剣による切り跡、刺し跡、壊れたテーブルや椅子、そしてアキの必殺技で床を突き抜けた大穴。
初めてこの場を訪れた者はモンスターの襲撃にでもあったのかと疑うだろう。事実、決闘が終わってから入ってきた来た客は目を丸くしていた。
まぁ、そうだよな…そりゃ払ってほしいよなぁ。というよりマナー的に壊した物は自分で直すか負担するべきである。
しかし……4万かぁ。
「これでも3分割なんですけどね」
「なにっ、3分割?」
そういえばこんだけボロボロにしといて4万は安い。
「えっと、ジョーたちも負担してくれたってことか? ……けど3分割って……あとは誰だ?」
「私です」
「えっ、マスターが?」
そりゃまたwhy? あなた被害者でしょ?
「今回の顛末、私にも責任がありますからね。注意もしていませんでしたし、『破壊した店の備品は、決闘者にお支払いいただく』というルールは決めていませんでしたから。だから厳密にいえばこれは強制ではありません、わたしからのお願いです、修理にご協力していただけないでしょうか?」
お願い……ですか。
「……ちなみに、ジョーたちは?」
「ご協力していただきました」
「な、なにぃっ」
あっちは二人だから、それぞれ2万G負担か。……賭けに負けて苦しい中、無理して搾り出したに違いない。
さらにマスターまで自腹を切ると言う、これがなかなか上手い策略だ……ッ! それなのに大勝した俺たちが払わないということはできない。絶対に出来ない!
「……さ、沙耶ちゃんよ」
「は、はい?」
「俺の分のモンスタードロップを売るとすると……いくらになる?」
「えーと、ジーンさん素材だけなら……3万ぐらいといったとこでしょうか?」
3万…び、微妙に足りない。
「……その3万を、今渡してくれ……」
「えっと、3万といわず、配当を山分けして5万でいいですね?」
5万! 喉から手が出るほど欲しい! だ、だが!
「いやっ! それは沙耶ちゃんが賭けたからこそ得られた金額だ。俺だったら賭けてない……だから……その10万は…沙耶ちゃんの…ものだっ」
断腸の想いで、それを断る! キャーカッコイイーオレ!(笑)
「ジーンさん……!」
おお、沙耶ちゃんからの尊敬の眼差しッ! タマンネェ!
「ちょ、無理するなって! おまえたいして儲けてないんだろう? 修理費ならほとんどが暴れた私の責任じゃないか! 私も払うから!」
おお、アキが優しい言葉をっ!?
くッ……だが!
「何を、言っている…ッ!」
「え?」
「俺は『奢る』と言った! ……言ってしまった……だが、二言は……ないッ」
それが、漢というものだァーッ!!!(泣)
「「「ジ、ジーン!」」」
フッ…決まった。
代償はでかかったが、決まったぁぁぁぁ!(白目)
今の皆が俺を見つめる表情、プライスレスです。
「では、お会計を」
「え、あ……はい」
そんな感傷に浸る間もなく支払いを促すマスター。もうちょっと余韻を楽しませてくれよ……。
しかたがないから沙耶ちゃんから受け取った3万と、俺の所持金全部を、そのまま支払いに回す。
けど……それでも足らないんだよな。
「……皆は先に行って、出発の準備をしておいてくれ。俺は……ついでにマスターから食料を買っておくから」
見栄を切ってしまった手前、これからのマスターとの交渉は3人に見られたくない……。
「そうだな、私たちは行きましょ。奢ってもらう時、その人が会計をしている姿はあんまり見ちゃいけないんだよ」
アキが変に気を使ってくれて、三人が酒場ラグーンを去る。
「で、マスタぁー……、お願いがあるんだが……」
残った俺はグイッっとカウンターに身を寄せ囁く。
「はい、残りはツケ、ですね?」
さすがに察しがいい。
「そうしてくれ……絶対払うから」
「いつでも大丈夫ですよ、払っていただけるだけでも嬉しいのですから。……ああ、それとこちらのサンドイッチをどうぞ。もちろん御代は頂きません、お願いをきいていただいたせめてものお礼です」
「た、助かるぜぇ!」
「ガルム山脈を目指すなら、食料は必要不可欠ですからね。御武運を、またのご来店をお待ちしております」
ガランと酒場のドアを抜け、外に出る。……何故だろう、吹いてくる風が、とても冷たく感じる。
なんとなく(しなければいいのに)所持品を確認。……嗚呼、なんとシンプルな画面なんだ!
片手剣、大剣、槍、盾×2、サンドイッチ、そして燦然と輝く(?)0Gの数値!
………
……
…
「ウオォオオオオオオオッ!!!」
最大の声量で《雄叫び》を発動させる。そこまでの大声で叫ぶ意味は無い。だが叫ばずにはいられなかった。
遠くにいた【リザード】6匹がビクッと反応する。
「一番槍ぃ!」
そして槍を《投擲》して投槍! 普通ならありえないファイターの遠距離先制攻撃に、1匹が串刺しになって動けなくなる。残り5匹がこちらへ突撃。
「わー……もういろいろと投げやりだ」
「アキよ、誰が上手いことを言えと!」
だが座布団一枚! もう一発追加だァッ
「続いて、いっけぇ俺のクレイモアァッ!」
気分はベイ・ブ○ード。
凶悪な風切り音と共に、一体の上半身を切り飛ばして光にした。
「わー、ジーンさんのでっかくて固いクレイモアすごいなー、ユキが喰らったらイチゲキだなー」
「っ! バカ! バカッ! 姉さんの馬鹿!」
意味を理解して顔を赤くしたユキが、姉を杖で殴る。
そしてそれを素手で《受け流す》姉。なんというアビリティの無駄使い。
「おー、ユキもそっちのネタが分かる歳になってきたかー」
「誰のせいよ! 誰の!」
そんな微笑ましい姉妹漫才を横目で見ながら俺は盾と片手剣を装備する。
「野郎ども! リザードが来るぞ! 迎撃準備ぃー!」
「野郎はジーンさんだけですって……」
沙耶ちゃんの的確な突っ込みもいただきました。
あれから俺たちはポーション等入念に準備をして(俺は投擲用に片手剣をさらに2本入手した。金? ……剣眺めてたらいつの間にか沙耶ちゃんが買ってくれてたんだよ……!)、日の出と共に山道までの道を進軍していた。
で、ここで襲い掛かってくるのは【リザード】というトカゲ型モンスターだ。鱗が硬くて体力が高い。斬撃系より打撃系武器が有効だが、さっきの俺のクレイモア投擲のように、一定以上の攻撃力があれば弾かれず大ダメージを与えることが出来る。そして炎属性以外の魔法攻撃が有効だ。といってもこのリザード、それなりに素早くて噛み付き攻撃が強いから、油断していると後衛のクラスはあっという間にやられるので注意が必要。さらにはたいてい集団で固まっているので、こっちもパーティを組まないとキツイ。
しかし俺たちは4人という少数パーティでありながらも、傷らしい傷も受けずに快進撃を続けていた。
「開幕ジーンさんの投擲で数を減らせるのが心強すぎですね。リザード相手に無双状態です」
「うん……確かに強いけどさ」
「なんか痛々しくて見ていられないよ……」
「うおおおおぉぉぉぉッ!」
なんか哀れむ目線を感じるが、もうそんなこと気になるかぁ!
切っては投げ、切っては投げる。
てめぇら! 全員俺の憂さ晴らしになってしまえぇぇぇぇ! そして売れるドロップ品を寄越すんだッ!
………
……
…
「ジーンさーん! 無双もいいですけどそろそろ休憩しましょー?」
「無茶すんなー! もうSP切れかけだろー?」
後ろの離れた場所からかかってきた沙耶ちゃんとアキの声でハッと我に帰る。イカンイカン、ちょっと一人で突っ込みすぎていたようだ。この先敵も強くなる、しっかり回復しておかなければならない。
「……ふぅ、スッキリしたわ~☆」
とりあえず暴れるだけ暴れられて、ボク満足。
帰ってくるとアキが呆れ顔だ。
「一転晴れやかな顔になっちゃって……立ち直り早いねぇ」
「過ぎた事を言ってもしょうがない、楽しく前向きにが俺のモットーだからな」
「いい性格してるわー」
「お前が言うな」
そんな感じで座ってステータスが自然回復をするのを待ちながら、マスターからの美味しいサンドイッチの差し入れを食べて空腹度も満たしておく。
この付近の敵はかなり狩ったから暫くは安全だろう。
「けど、意外と弱くてよかったです」
「だね、難所と言われてたからもっと骨があるのかと思ってたよ」
ユキちゃんがホッとしたように、アキが少し残念そうに感想を言うが、俺は「それは違うぞ」と断っておく。
「ここはまだ『アルフガルド西街道』だ、俺たちはまだガルム山脈に入ってすらいない」
「えええっ、これでも結構歩きましたよ?? あ、でもホントだ……ステータスの現在地に書いてある」
「山道への入り口は、あそこからなんです」
沙耶ちゃんが指差す、そこからは石や岩が増え、より山肌という感じになっていた。、
「ということは、これからが本番かい?」
「その通り。二人はよく知らなそうだから、この先現れる敵について話そうか。ガルム山脈に入ってからはリザードに加えて、二足歩行の人型トカゲ【リザードマン】が出ててくる。こいつがなかなか厄介で、武器を持って攻撃してくる。更に中には【リザードファイター】や【リザードマジシャン】なんていうクラス持ちの強敵が混じっていたりする。油断してるとトカゲ達の連携に負けちまうこともあるぞ」
「そりゃ面白そうだ」
強敵と聞いてアキが興味深そうな顔になる。
「ああ、こっからはアキとユキの方が大活躍だろうな。人型相手ならアキは《受け流し》から一気に決められるだろうし、ユキちゃんの《氷呪文》のダメージと鈍足効果で動きを鈍らせればトカゲパーティの連携を乱すことができるからな。で、そいつらを取り仕切ってるのが、山頂で待ち構えるボスの【リザードリーダー】。こいつは身長3mを超えていてる大トカゲだ」
「3mって……」
「翼が生えてりゃドラゴンだなそれ」
「ああ、間違いない。こいつはレベルが違う。硬い鱗の上にさらに鎧を着ていて、大剣を片手で振り回し、魔法も巨大な盾で防いでしまうんだ」
「そ、そんなボスに、4人で勝てるんですか?」
ユキちゃんが心配そうに尋ねてくる。
「普通は6人以上のパーティで挑んで畳み掛けるのがセオリーだ。だが俺は弱点をつけばイケルと踏んでいる」
「弱点……どこなんですか?」
俺はトントンと、自分のこめかみを叩く
「『頭』だ」
「頭……ですが身長3m相手に狙えます?」
「普通の戦士じゃ無理だな、だが俺たちなら可能だろう」
「え? ――あっ」
そこでユキちゃんはハッとした顔になる。
「気づいたか? 俺には《投擲》、アキには《ジャンプ》があるんだ」
この二つがあれば、弱点まで攻撃が届く、不可能も可能にする。
「なるほど……それならいけそうですね!」
「けど、それで十分でしょうか?」
納得したユキちゃんに対して、沙耶ちゃんは難しい顔をした。
「ダメージは与えられるでしょうけど……私たちがもつかどうか」
確かに沙耶ちゃんの言う通り、攻撃面では問題ないが、防御面にはある。いくらダメージを効率よく与えることができても、先に自分たちがやられてしまっては意味がない。リザードリーダーの攻撃力はすさまじい、まともに受ければ俺でも2、3発で、アキに関しては2発、下手してクリティカルを受けてしまえば一撃すらありえる。後衛二人は言わずもがなだ。プリースト沙耶の回復があるとはいえ、長期戦は無理だろう。
「フッフッフッフ」
だが俺はあえて不敵な笑みを湛えてみせる。3人が気味悪そーに見てくるが問題ない。
「そこで俺から提案があるのだが……その前に確認、沙耶ちゃんには素早さと攻撃力を上昇させる補助魔法があるよな?」
「え? ええ、さっきも使ってましたが、《速度補助呪文》の『スピード・アディション』と《攻撃補助呪文》の『フォース・アディション』があります」
「そっちじゃない、上昇率がもっと高いやつだ」
「……レベル上の『クイック』と『アウェイクン・パワー』ですか? 確かに使えますが……今のアビリティレベルだと、効果時間がたったの5秒ですよ?」
5秒、それだけあれば十分だ。
「ユキちゃん、足止め効果のある『アイスウォール』はどれくらい持続できる?」
「ええ~と、7、8秒ぐらいですかね」
ちょっと心もとないが、俺がフォローに入ればイケルだろう。
それにアキの《チャージ+――》と俺の《投擲》があれば……。
「……クックック」
思わず漏れてしまったマッドサイエンティスト的な笑み。3人はやや引き気味だ、そんな顔すんなってハッハッハ☆
「で、なんなんだいその提案っていうのは?」
じれったそうにアキが聞いてきた。ぃい↑だろう、ではそのロマン溢れる作戦を発表してやろうではないか!
「なぁ……『合体必殺技』を編み出してみないか?」
「「「……え?」」」