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とろけるCheese  作者: KoKoRo
97/156

Cheese97〜ブラックコーヒー〜

久しぶりに砂糖の入っていないコーヒーを飲んだ。

 甘いコーヒーを選んだら、今の俺と重なる気がして飲めなかった。



自分を追い詰めてどうすんだよ………




山田「落ち着いたか?」



野高「…はい」



山田「しっかし、お前が立川さんを好きだったとはねぇ。意外」



野高「………」



山田「つーかさ、野高くんがもっと行動を起こしてれば、立川さんはお前のこと好きになってたんじゃないかと俺は思う」



野高「勝手だな…。山さんの憶測は」



山田「憶測?違うね。俺は立川さんと初めて会った時、お前のことが好きなのかと思ったぜ?」



野高「どうして断言できるんですか?そんなこと」



山田「俺をそっちのけにして、お前のことを見てたからだよ」



野高「立川さんが…?」



山田「ああ。でもお前はあの時、写真に夢中だったけどな。自分が熱い視線を浴びてるなんて微塵も思ってなかっただろ?ざまーみろってんだ」



野高「それって、俺が夕日の写真を撮ってる時ですよね」



山田「お、当ったり〜!思い出したか?」



野高「なんとなくですけど。でも俺はあの時、立川さんよりも、夕日を撮ることが好きだった」



山田「じゃあ、今は?」



野高「今は…」


(瞳を閉じる野高)




今は………





『野高先輩』







はっきりと見えたんだ……。




彼女の声と、姿が……



(ゆっくりと瞳を開ける野高)



野高「夕日よりも、立川さんのことが好きです」



山田「あつ……」



野高「!!」かぁぁ


(ゆでダコのようになる野高)



山田「じゃ、君はバイトを終了して、さっさと彼女を追い掛けなさい」



野高「え…」



山田「え?じゃねぇよ。次、逃げたらぶっ飛ばすぞ!?」



野高「山さん」



山田「なんだよ?」



野高「俺はぶっ飛ばせないよ」



…………ガタッ


(席を立ち、カフェを出る野高)



山田「ブラックコーヒー……ね」








―――その頃、華は…



華(野高先輩にちゃんと返事、できなかった…。気持ちに応えられないことがこんなに辛いなんて思わなかった…。鈴木くんもわたしを振るとき、こんな気持ちだったのかな……)



『立川の気持ちには答えられない』



そんなわけないか……




「立川さん!!」



華(――え?)


(後ろを振り返る華)



野高「―――」



華「野高先輩……」



野高「逃げてごめん、嘘ついてごめん、弱くてごめん……」



華「先輩が謝る必要なんかないんです……。謝らなきゃいけないのはわたしです!」



野高「違う」



華「だってわたしはっ……」



野高「わかってる」



華「野高先輩…」



野高「本当はわかってたんだ。君が誰かを想っていることも」



華「……」



野高「それでも俺は…立川さんのこと、好きなんだ」



華「!」



野高「あ〜…!なんか言えてスッキリしたかな」



華「そんなっ…!野高先輩、勝手すぎます……」



野高「立川さん」



華「……はい」



野高「俺は言えただけで満足なんだ。これ以上の気持ちを押し付けるつもりはないし、立川さんがそんな悲しい顔をする必要もない」



華「先輩……」



野高「でも……勝手に想わせてもらう。これだけは譲れないから」



華「や、やめたほうがいいですよ!?こんな変な女…。野高先輩にはもっと素敵な女性が似合います……」



野高「今は立川さんしか見えないんだ。だから、そんなこと言っても無駄だよ。…じゃあ俺、戻るから。さよなら」



(華に背を向ける野高)



華「野高先輩っ……ごめんなさい…。でも、嬉しかった………」



野高「…うん、大好き!」


(一度だけ振り返り、また走り出す野高)



華(どうしてだろう……。すごく…辛いよ…っ……)








――どこまで走ろう?




―――出口が見えない




――――終着点が見つからない………





――――♪♪


(野高の携帯が鳴る)



野高「―――!」



携帯の着信で、『薄井 翔』と表示されていた。




野高「……もしもし」



薄井『メダカのばぁ〜か!!僕からの着信には三回鳴る前に出たまえ!(怒)』



野高「無茶言うなよ…」



薄井『どうした?机の角に小指でもぶつけたか…?』



野高「どうして?」



薄井『いや、気のせいならいい。鼻声に聞こえるから泣いてるのかと』



野高「………」



薄井『お〜い、メダカ〜?応答せよ〜』



野高「俺、立川さんに好きだって言ったよ」



薄井『花子に?』



野高「見事に玉砕したけど、言えてよかったと思ってる」



薄井『それで泣いてたわけか』



野高「なっ……泣くわけないだろ!?薄井こそ、何で急に電話なんかするんだよ」



薄井『あ。そうだ。コーヒーの出前を頼む♪砂糖は三つ入れて持ってきてくれたまえ★』



野高「………パシリかよ……」






―――それでも今、薄井と話せてよかった。




見つからないと思った出口に出られた気分だったんだ………。



今度は薄井と、甘いコーヒーを飲もう。







〜ブラックコーヒー〜 完。



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