Cheese83〜届ける気持ち〜
海岸を走り回って彼女を探した。
だけど見つからない。見つけることができない。だがその時、目の前に一人の海水浴客が立っていた。
客「ああ、やっぱりそうだ。君だ。君だ。赤いボンボンの子、探してたよね?」
池本「そうですけど…、よくわかりましたね。俺があなたに聞いたのはもうずいぶん前なのに…」
客「ギターだよ」
池本「え?」
客「海に来てギター担いで走り回ってるのは君ぐらいだよ?」
池本「あ…」
客「それより、赤いボンボンの子を見掛けたよ。」
池本「本当ですか!?」
客「ああ。この先を真っ直ぐ。真っ直ぐ走れば彼女に会えるよ。」
池本「ありがとうございます!」
俺は真っ直ぐに海岸沿いを走った。
―――その頃、華は…
華(みんな、何処にいるの??このまま合流できなかったらどうしようっ……)
………ウロウロ
(海岸を見渡しながら歩き回る華)
華(やっぱりいない……。ど、どうしよう……!!)
―――――同じ頃、学校では心配になった龍、玲、雅、圭が集まっていた。
圭「淳ちゃんの携帯、繋がらないんですけど?絶っ対、電池切らしてるよー!!」
雅「ってゆーか、あの二人は会えたわけ?出来れば行き違えててほしいわ〜♪なんて」
龍「立川に電話すりゃあいいだけの話しだろーが?おい、伊藤。お前、ちょっとアイツの携帯に電話しろよ」
玲「………知らないのよ……。華の番号…。」
龍「はぁ?お前、それでダチやってたのかよ!?」
玲「一回聞いたんだけど、タイミング合わなかったのよ!あんたのせいよ!!龍!」
龍「俺は関係ねぇだろが」
雅「華ちゃんの家の番号なら知ってるけど?ほら。連絡網!」
圭「家に掛けても意味なくない?」
龍「いや、待て!弟…アイツの弟に聞き出しゃいい!」
―――華の自宅にて。
〜〜ピルルルル♪
(電話が鳴る)
母「葵ー!今ちょっと手が離せないから電話に出てくれるー?」
葵「あーいよっと!」
…………ガチャッ
(電話に出る葵)
葵「もしもしー?立川でーす」
龍『よっしゃ!グッドタイミングじゃねーか!お前、立川の弟だよな?』
葵「そうですけど…、どちら様?」
龍『お前の姉ちゃんと同じクラスの鈴木だよ。前に一回、商店街で会っただろ?』
葵「あぁ〜!香水の兄ちゃんか!姉ちゃん、今居ませんけど?」
龍『お前に用事があるんだよ。姉ちゃんの携帯番号、教えてくれねーか?』
葵「携帯番号…?」
――――その後、葵から華の携帯番号を聞き出し、龍が電話を掛けた。
ヴゥーッ…ヴゥーッ…
(華の携帯が鳴る)
華(知らない番号…。誰からだろう…?)
華「はい。もしもー…」
龍『たちかわぁぁ!!』
華「ひぃぃ!?」
龍『お前、今何処にいる!?』
華「海…。長浜海岸にちゃんといるよ!皆、何処にいるの!?」
玲『…ちょっと貸しなさいよ!華!!一人なの!?誰か傍にいない!?』
華「玲ー!!誰もいないよっ…!雅ちゃんはそっちにいるの?」
雅『ハロ〜☆華ちゃん!寂しさのあまり、泣いてな〜い?』
華「もっ…もしかして私だけ皆と合流できてない!?」
龍『…電話貸せ!俺の携帯だ!おい、立川!お前、ぜってぇそこにいろよ!?わかったな!!』
華「はいっ!」
圭『…俺もたっちゃんと話したい!代わって代わって!もっしもーし。たっちゃん?』
華「その声は……堤之原くん!?」
圭『ピンポーン!大正解!ちなみにたっちゃんは今、海岸のどの辺に……』
圭「!」
龍「…おい、どうした?」
圭「……電話切れた」
玲「なんですってーー!?」
圭「淳ちゃんなら大丈夫だよ。絶対にたっちゃん、みつけるよ」
雅「そんなのわかんないじゃない」
圭「わかるよ。だって今、電話から淳ちゃんの声が聞こえたもん」
龍「!」
玲「それって、つまり…」
圭「たぶん、びっくりして携帯落としちゃったんだと思うよ。たっちゃん」
――――――――――
池本「立川さん!!」
華「池…本……くん?」
――――カチャンッ
(携帯を落とす華)
華「どうしてここに……?」
池本「会いにきた。俺が立川さんに会いたくてここにきた。」
華「!!」
―――これは夢だよ…。
―――大好きな池本くんが私の目の前にいるなんて、そんな都合のいいことあるわけないよ……。
池本「今からギター弾いて歌うから聞いてくれる?」
華「………え?」
池本「立川さんにだけ聞いてほしい。」
華「……」コクッ
私は大きく頷いた。
池本「…ありがとう」
俺はギターを持って、大きく深呼吸をした。
池本「俺の気持ち、隠さず君に伝えます」
―――君が例え、他の誰かを想っていても…
俺はもう、迷わない。
〜届ける気持ち〜
完。