Cheese79〜SOS!緊急信号〜
わたしと野高先輩以外、誰もいない保健室。
窓が少し開いていて、そこからセミの鳴き声が微かに聞こえた。
野高「……」
華「……」
野高「本当はテスト中も結構、体調が悪かったんだ。でも放課後になったら立川さんに会えるかもって思って、我慢してた」
華「う、嘘つかないでください…。わたしをおだてようとしたって無駄ですよ!?何もでませんからっ!」
野高「おだててない。本当にそう思ったんだ」
華「………」
野高「学年が違うだけでこんなにも会えないんだね。…もっと立川さんと話したい」
華「野高先輩?」
野高「……」
――――違う。
抱きしめたいんだ…
彼女を……
もしも抱きしめたら…………君は嫌がるのかな?
―――――ギュッ
(野高は華を強く抱きしめた)
華「せっ…先輩!?」
野高「……」
華(…くる…しいっ…。それになんだか硬い…)
華「……硬い?」
野高「……」くてっ
(急に力が抜けたように華に寄り掛かる野高)
華(!)
――――ムギュッ
(思わず野高に抱きつく華)
華(先輩の体って石みたい…。細そうに見えて実はマッチョ!?)
…………ドタドタ
(保健室に薄井と田中先生が入る)
薄井「メダカー!!無事かーー!?」
華「薄井先輩!大変なんです!実は野高先輩はムキムキのマッチョだったんです!?」
薄井「……は?」
田中先生「野高くんは風邪よ。さっき保健室に来た時、具合が悪そうだったからすぐにわかったわ。帰れっていったのに。まったく…」
薄井「いうこと聞かなかった罰だな!しょーのない奴だ」
華「マッチョ…」
薄井「マッチョはほっといて、花子は先に帰りたまえ!」
華「へ?」
薄井「メダカの風邪がうつったりでもしたら大変じゃないか。今日は同好会中止!また明日会おう♪」
華「は、はい…。ではさようなら…」
薄井「そうだ。花子!僕の鞄からチーズのサンドイッチを一つ持って帰りたまえ!せっかく作ったのに食べる人がいないと困る」
華「……はい。ありがとうございます」
田中先生「気をつけて帰るのよ?立川さん。最近、学校付近で露出脅が出てるっていう噂だから」
華「はい。会わないように気をつけます!」
その後、保健室を出たわたしは写真部室に戻って、薄井先輩の鞄の中を覗いた。
すると、綺麗に包装されたサンドイッチが三つ並んでいた。
華(きっと野高先輩とわたしの分…かなぁ?……いただきます。薄井先輩)
サンドイッチを一つ持って、わたしは学校を出た。
………ぐぅう〜〜
(華のお腹が鳴る)
華(お腹空いた〜…。どこかに座って食べちゃおうかな…)
わたしは学校近くにある公園のベンチへと向かった。
公園に着くと、ベンチには誰も座っていなかった。
華(やった!あそこで食べてから帰ろう♪)
早速ベンチに座り、薄井先輩からもらったサンドイッチを広げた。
華「う〜ん!おいしそう♪いっただっきまー…」
??「おいしそうだねぇ?」
華「ひっ!?誰ですかっ!?」
??「やだなぁ。通りすがりのおじさんだよ♪」
華「まさかっ、露出脅…?」
??「うわぁお!何でわかったのぉ?大せいか〜い♪」
(華に近寄る露出男)
華「嫌です嫌です来ないでください!!」
露出男「じゃあ、そのサンドイッチ僕にちょーだい?」
華「絶対に嫌っっ!!誰か助けてっ――…」
池本「いち、にの…」
圭「さん、はいっ!」
――――ドゴォッ
(二人同時に持っていた鞄を露出男の顔面にぶつける)
華「―――え…?」
池本「早く逃げよう!立川さん!!」
華「……うん!」
圭「俺、ちょーイカしてない?カッコよすぎだよ!自分!!」
池本「いーからお前も早く逃げなさい」
露出男「ま、またお前か!?今度は許さないぞぉっ!!」
圭「あ!お巡りさんだ!」
露出男「その手にはのらん!」
圭「こっちでーす!!ココ!ココ!」
露出男「うるさいうるさいうるさーーいっ!おとなしく観念しろー!」
警察「観念するのはお前だ。馬鹿たれ!!署まで同行してもらうぞ。わかったな!?」
圭「ほーら、言わんこっちゃない」
池本「捕まったのか?」
圭「うん。さっき淳ちゃんがドバーッて走ってっちゃった後に俺が警察に電話した。さすが俺!みたいな」
華「池本くん、走って来てくれたの…?」
池本「!!」
圭「そーだよん♪たっちゃんが学校一人で出たのが教室から見えたから、心配になって跡つけてたんだよねー?淳ちゃん」
池本「ささっ最近ここら辺、物騒だって聞いたから!!」
華「…ありがとう。二人が来てくれなかったらわたし……」
池本「立川さん…」
華「わたしのチーズサンドイッチが取られるところだったよ!本当にありがとう!!」
池本「へ?」
圭「は?」
………ぱくっ
(サンドイッチを一口食べる華)
華「おいひぃ〜♪」
圭「たっちゃんってさ……天然?」
池本「天然とかもうそんなことはどーでもいいよ…」
圭「え?」
池本「無事でいてくれただけでいい」
圭「そっか…」
―――俺はなんとなく淳ちゃんの想いに気付いているのかもしれない…。
〜SOS!緊急信号〜 完。