Cheese76〜本気〜
僕は自分の姉が好きだった。
大好きだった……。
―――姉さんが好きだったユリの花を買って墓参りに行こうと、なぜかそう思った。
学校帰りにユリの花を一本買い、春の墓に寄った薄井は、その花を墓に添えた。
薄井「一本しかなくてごめんな。手持ちがなくてこれしか買えなかったんだ」
………………
―――静かだった。
聞こえるのは
風の音だけ………
薄井「僕は……姉さんが好きだった」
………………
薄井「姉さんしか見えてなかった。姉さんが元気に笑うだけで、僕は幸せだった」
一生、伝えまいと思っていた言葉。
今になって言葉が溢れた
薄井「でも今は…姉さんよりも好きな人がいる」
…………ザァァッ
(風が強く吹き、ユリの花びらが散った)
薄井「………」
―――姉さん……これは嫉妬かい……?
薄井「……愛してたよ。春……」
―――翌日―――
華(ついにキターーー!!期末テスト!!)
龍「あ〜…たりぃ」
華「鈴木くんは余裕なのでは!?期末テスト…」
龍「んな頭よくねーし。つーか、今回のテストで赤点取ったら、夏休み補習みたいだぜ?」
華「補習!?受けたくないっ!!」
―――そして、テストが始まったが、、、
スラスラと解ける問題が絶望的になく、補習を受けそうな予感がプンプンと漂っていた……。
―――テスト終了後
華「(;O;)」
玲「華!?どうしたの!?テスト駄目だったの!?」
華「玲〜〜!どうしよう…。補習だよぉ〜〜!!」
雅「そういえばぁ〜、そんな顔してる人が向こうにもいたわよん♪」
華「……へ?」
玲「誰よ?それ…」
雅「ほらぁ〜!あっち!あっち!」
(雅は池本を指差した)
華「池本くん…?」
龍「あいつ、ギターの練習しすぎなんだよ。真面目なんだか馬鹿なんだかわかんねぇ」
華「………」
こうして、期末テスト一日目を終えた。
……でも、わたしは玲と一緒には帰らずに、なんとなく教室に残っていた。
池本「………」
(ギターを取り出す池本)
華(池本くん、またギターの練習やるんだ…。テスト勉強しなくて大丈夫なのかな…?)
………♪………♪♪…
池本「………」
華「池本くん!」
池本「え?」
華「もう、皆帰っちゃったよ?池本くんは帰らないの?」
池本「……立川さんこそ帰んないの?」
華「わっ、わたしは〜……」
池本「なんか俺、どうしようもないくらいギター好きなんだよね」
華「……うん。」
池本「今より絶対上手くなって、人に聞かせたい。元気が出るような歌、作りたい」
華「池本くんならできるよ…?大丈夫!」
池本「…なんか、立川さんに励まされてばっかだよな。俺」
華「励ましじゃなくて、応援だよ。わたし、池本くんのギターを聞いてると元気になれるもん!」
池本「!」
――――本当に俺の歌を1番に聞いてほしい人は……
――君なんだ……
池本「立川さん、もしよかったら俺と…」
華「………」ドキッ
池本「一緒にかっ…帰んない…?」
華「………あ」
池本「?」
華(どうしよう……。今……告白されるのかと思ってしまった…)
池本「立川さん?」
華(なに考えてんだろ……わたし…)
………ガラガラッ
(教室の前の扉から圭が突入)
圭「池ちゃーーー……ん?」
華「!!」
圭「え!?ナニナニ!?二人、付き合ってんの!?」
池本「ばか!!お前…」
華「ちっ、違います!さよなら!!」
―――わたしは走って教室を出ていた……。
池本「………」
圭「じゃあ、池ちゃんが振られたんだ?」
池本「……うっさい」
圭「つーかさ、ねぇ、聞いて聞いて?俺の今日の星占いでさぁ……」
池本「うるさい」
………ガラッ
(ギターと鞄を持って教室を出る池本)
圭「………」
――――その後、池本は帰り道である商店街をぼんやりと歩いた。
池本「……」
………バタバタッ
(圭が全速力で池本の後を追う)
圭「待ってよ!?池ちゃん!!」
池本「………」
圭「俺っ、池ちゃんとバンド組みてぇんだよーーー!!(泣)」
池本「こんな商店街の真ん中で泣くなーーー!?」
圭「俺、まだベース始めて一週間も経ってないけど、本気だから!」
池本「どこらへんが!?始めてからたった一週間も経ってねぇお前とは気持ちの入りが違うんだよ!」
圭「……後悔するよ」
池本「……どうゆう意味だよ?」
圭「だって今日の星占いで将来につながる新たな一歩が踏み出せるって書いてあったんだよ!!」
池本「星占いに頼るなーー!?」
圭「どうしても駄目なのかよ…」
池本「……お前、本当にベース好きか?」
圭「そんなの決まってんじゃん。ベース弾くことが俺の生き甲斐だ」
池本「……」
(黙って手を差し出す池本)
圭「!」
池本「もっと練習してうまくなれよ。」
圭「…!うん!!」
………ギュッ
(池本の手を強く握りしめる圭)
池本「痛いよ」
圭「…すいません」
堤之原 圭、正式にバンドメンバーに加入!……か?
〜本気〜 完。