Cheese71〜炸裂平泳ぎ〜
七夕祭に出掛けた数日後、本格的な夏が到来したようなムシムシした暑さがやって来た。
そして教室はその暑さによってサウナのように熱を帯びていた…。
龍「………だりぃ」
華「あ゛……暑い……」
玲「確かに暑い!だけど……華!3時間目はいよいよ待ちに待ったプールの授業よ!」
華「プール……」
龍「はぁ?女子はプールかよ?」
玲「そっ。男子は何やんの?」
龍「このくそ暑いのに体育館でバスケ」
玲「う〜わ〜…。ご愁傷様」
雅「プールって私も参加していいの☆?」
龍「………いや」
玲「無理だって。明らかに」
雅「えぇえ!?せっかく女子用の水着持ってきたのに…」
龍「てめぇ…下のモッコリ隠す度胸あんのかよ?」
雅「!!全然無理…」
………そして3時間目がやってきた。
玲「う〜ん!高校初のプールの授業か!燃えるわぁ〜〜!」
華(玲……スタイルいいなぁ……)
玲「ん?どーしたの?華。タオルなんかいつまでも巻いてないで早く水着になっちゃいなさいな!」
華「無理無理無理〜〜〜!?」
玲「へ?なんで?」
華「さっ…三段腹がっっ!!」
雅「え〜?どれどれ〜?私が触って確かめてあげよっか〜?」
……………ドゴッ
(玲が雅に向かって回し蹴り。そして直撃)
玲「テメェは引っ込んでろ。この変態」
華(うぅ……。プールなんて…プールなんて…だいっっきら…)
玲「華!体形のことなんか気にしてたらいつまでたってもプールに入れないよ?」
華「……」
玲「そんなに嫌ならあたしの後ろに隠れてていいから!ほら!行こう?」
華「………うん」
わたしは玲の影に隠れてプールサイドを歩いた。
青山先生「はーい!集まってーー!!今日は全員50mは泳いでもらうからそのつもりでー!」
華「ごごっ!?50mも!?」
玲「なぁにぃ?華、もしかしてカナヅチ?」
華「違うもん!!でも……平泳ぎしか出来ないのぉぉ〜〜!!」
玲「あはは!泳ぎ方なんてどうでもいいんじゃない?平泳ぎで50m突破せよ!」
華「うぅ……」
―――準備体操を終えた後、一人づつ50mを泳ぐはめになり、ついにわたしの番がきてしまった。
華(神様、仏様〜〜!!)
玲「はーなっ!ファイト!!」
華「ラ…ラージャー」
青山先生「じゃあ次!始めっ!」
………ピッ
(笛が鳴る)
華(いざゆかんっ!!50mの長旅へっ!!)
…………バシャンッ
…………すい〜すい〜
(華の平泳ぎ炸裂)
青山先生「こら!?立川!平泳ぎじゃなくてクロールで泳ぎなさい!」
華「む゛むり……でずっ……ゴボゴボ……」
青山先生「……仕方ない。そのまま50m泳ぎなさい」
華「はい゛……」
………すい〜すい〜
ひぃひぃ息を切らしながら、平泳ぎで50mを泳ぎ切り、プールサイドに登ろうと手を掛けた。その時、わたしの正面には、体育座りをした雅ちゃんが見えた。
雅「お疲れ様。華ちゃん」
華「………。」
雅ちゃんはわたしに優しく微笑み掛けてくれた…。
…………こうして第一回目の体育でのプールの授業が終わった。
華「つっ…つかれたぁぁ……」
玲「100mくらい泳ぎたかったけどな〜」
華「あ…あはは…」
??「ひゃっほ〜う♪プールだ☆プールだ☆」
玲「このバカそうな声出してる人って…」
華「間違いなく薄井先輩だ!?どうしよう!?この勢いだとプールサイドに来そうだよっ!」
玲「それはちょっと嫌ね…。あたし達、まだ着替えてないし」
華「水着姿なんて見られたくないよ〜!?」
…………ドタドタ
(プールサイド目掛けて走る薄井。そしてそれを追い掛ける野高)
薄井「あっはは〜♪」
野高「こら!?待ってって!薄井……」
華「ひぃっ!?」
(玲の後ろに隠れる華)
玲「先輩…。まだチャイム鳴ってないんで、こっちに来ないでもらえます?」
野高「ごごごっごめん!!!本当っごめん!さよならっっ」
(顔を真っ赤にしながら野高、退場)
薄井「コラーー!!僕を置いていくな!?メダカ!!」
玲「先輩もあっちに行ってくれると助かるんですけど?」
薄井「ああ、そうだね…。すまなかった。」
(とぼとぼと歩く薄井)
薄井「ああ、そうだ、花子」
華「はいっ!?」
薄井「かわいいね」
華「!!??」
そう言い残して、薄井はプールサイドを出た。
華(……お世辞?)
その後、体操服に着替えて更衣室から出ると、雅ちゃんが教室とは反対方向に行こうとしていた。
玲「ちょっと、佐藤さん?どこに行くのよ?」
雅「どこって…体育館♪」
玲「…なんで?」
雅「なんでって…暑さでひぃひぃ言ってる男子見に☆」
玲「ふ〜ん、面白そうじゃない。華も行こ?」
華「えぇ!?」
玲に手を引かれながら、わたしは蒸し暑そうな体育館に向かって走っていた……。
〜炸裂平泳ぎ〜 完。