Cheese70〜笹舟に乗って〜
今日は七夕。
……ということで、わたしは今、商店街の七夕祭に参加していた。
華(うひゃあ!混んでるなぁ!!)
葵「姉ちゃん、迷子になるなよ〜?」
華「………む」
……そしてわたしは、なぜか弟の葵と二人で祭に参加していた。
葵「あ!でっかい笹があるよ!!あそこに短冊つけよーよ!」
華「嫌だ!!商店街の人に見られたくないもん!」
葵「……どーせ、たいしたこと書いてないくせに」
華「………う゛」
??「よお。立川じゃねぇか」
華「すすすっ鈴木くん!?」
龍「奇遇だな。お前も買い出し?」
華「い、いえ〜?その〜…」
葵「誰この人?姉ちゃんの彼氏?」
華「!ちがっ…」
龍「んなわけねぇし。この小さい奴、お前の弟だろ?マジそっくり」
華(なんだかすごいショックを受けているのはなぜ…?)
葵「不可解な姉ですが、今後ともよろしくお願いします!」
華「不可解ってそんな!?ふつつかじゃないの?それになんであんたがそれを言うの??」
龍「シスコンな弟を持って大変だな?立川」
葵「シスコンじゃありませんよ!?」
龍「じゃ。俺、用事あるから。またな」
(立ち去る龍)
華「……シスコンだったの?」
葵「違うに決まってるだろ!?あ〜もう、姉ちゃんなんかと一緒にいるから勘違いされたんだっ!!こっからは別行動ね!!!」
(走り去る葵)
華(???難しい年頃なんだろうな。きっと…)
しばらく一人でぶらぶらと歩いた。
華(何か食べようかな…。)
―――その時、前方に見覚えのある姿が見えた。
華(池本くん…?)
池本「………」
(商店街とは逆の方向に歩く池本)
華(どこに行くんだろう…?)
―――わたしは池本くんの歩く方向へと向かっていた。
華(なんでわたしは池本くんの後を追ってるんだろう…。)
―――しばらく歩いていると、河原に出た。
池本「……」
(鞄から笹舟を取り出す池本)
華「あ!笹舟だ!!」
(池本の前に飛び出す華)
池本「うわっ!?なんでいるの!?」
華「はっ……!!ごめんなさい!失礼しました!」
(その場を去ろうとする華)
池本「待って!!」
華「はい…」
池本「本当は昨日のことずっと謝りたかったんだ…。ごめん」
華「あれはわたしが池本くんの邪魔をしたからで…」
池本「……邪魔なもんか」
華「……?」
池本「パンダに入ってた奴が俺だったなんて知られたくなかったんだ」
華「やっぱり…池本くんだったんだね」
池本「……鈴木に聞いたんだ。立川さんと動物園に行くこと。でもあいつが行かないって言うから……」
華「ありがとう。池本くん。」
池本「え…?」
華「あの時、池本くんがいてよかったって思うんだ。わたし一人だったら…きっと泣いちゃってたと思う」
池本「立川さんは鈴木が好きなんだよな…」
華「どどっ?どうしてわかったの!?」
池本「えっ?いや、今の流れで大体の人はわかると思うよ?」
華「ははは、そっか…。でも…鈴木くんとは友達だよ。ずっと…友達」
池本「……」
華「鈴木くんに好きな人がいるって言われたから…しょうがないかなって諦めたよ!」
池本「……」
―――本当は辛いだろうに…。なんで我慢するんだよ……
池本「笹舟。よかったら一緒に流そうよ。笹に願いごと書いて流すんだ」
華「わたし、舟作れないよ…?」
池本「俺が作った分が余分にあるからこれに書けばいいよ」
(華に笹舟とペンを渡す池本)
華「ありがとう…」
笹舟に願いごとを書いた。わたしの願いは叶うだろうか……?
華「書けたよ!」
池本「よし。流そう」
華&池本「せーの!」
―――笹舟は川の流れに沿ってゆっくりと進んでいった……。
華「池本くんのお願いってなに?…って聞いちゃ駄目だよね」
池本「俺はいつかバンド組んでデビューしたいって書いた。」
華「……うん。それはきっと叶うと思う!」
池本「ありがとう。立川さんはなんて書いたの?」
華「わたしはー……、へへへ〜。内緒」
池本「え〜?ケチだなぁ」
華「ケチだもん」
―――わたしの願いは……
『みんなの願いが叶いますように』
池本「そういえば、さっき商店街で立川さんに似た人を見掛けたな…。すごいうりふたつでさ」
華「それはきっと、わたしの弟かと思われます…」
池本「弟?ああ、どうりで…」
華「??」
池本「商店街に飾ってあるでっかい笹に短冊付けてたよ。1番下の方に名前入りで付けてたからすぐにわかると思う」
華「そうなんだ…。じゃあ、後でこっそり見てみようかな」
池本「うん。そうした方がいい」
華「……」
―――池本くんと別れ、わたしは商店街の大きな笹の下へ行った。
色んな短冊が吊り下げられている中、「葵」と大きく書かれた短冊を見つけた。
わたしはそこに書かれた文字を読んだ。
華「……本当……シスコンだ……」
『姉ちゃんが幸せになりますように』
汚い字で書かれていたけれど、こんなに嬉しいと感じた言葉はなかった。
華「ありがとう…。葵」
〜笹舟に乗って〜
完。