Cheese69〜贅沢な願い〜
7月6日。曇り。梅雨は当分続きそうです……。
雅「うきぃい〜〜!!この異常湿気で髪がくるくるパ〜になるっ!」
龍「…ダセぇ」
雅「お前の髪も異常事態なんだよ。この寝癖ボンバー」
龍「あ゛あ゛?テメェの方が異常なんだよ。このワカメ」
雅「………」
龍「………」
華「………。」
朝から鈴木くんと雅ちゃんは険悪ムードです………。
池本「おはよ。鈴木」
龍「よお。どうした?わざわざ後ろの席まで来て」
池本「これあげる。」
(龍に一枚の細長い紙を渡す池本)
龍「なんだよ…?これ。ゴミ?」
池本「……ひど」
玲「あーー!それ、商店街で配ってた短冊じゃない!?」
雅「あ〜あ。うるさい人が来ちゃった」
池本「そう、それ短冊。なんかいっぱい貰ったから鈴木にもあげようかと思って」
龍「ふーん。つーか、いらねぇ」
玲「せっかくなんだから受け取りなさいよ?あたしも貰ったし」
池本「よかったら佐藤さんと立川さんにもあげるよ。…はい」
雅「やった!ありがと!池本くん」
華「………」
池本「……あ、立川さんはいらない?」
華「…あっ!ううん、欲しい!ありがとう…」
(池本から短冊を受け取る華)
薄井「いい物持ってるね?僕にもくれたまえ」
池本「どうぞどうぞ………ってなんでいるんですか!?」
野高「あ。短冊だね。そういえば明日は七夕だもんね」
池本「野高先輩まで…」
薄井「ならば枚数が多い方が得だね♪100枚よこしたまえ〜い☆」
池本「そんなに持ってるわけないでしょーーー!?」
華(七夕……かぁ…)
野高「………」
――その日の放課後、わたしは写真部室に向かった。すると……
薄井「え〜…、まずは世界征服。そして億万長者。200歳まで生きる。死んでも生き還る。それから〜…」
(池本から奪い取った短冊に願いごとを書き込む薄井)
華(………。)
薄井「お!花子!いいところに来たね♪」
華(どうしてだろう……。すごくパシリに使われそうな気がする………!!!)
薄井「ジュンジュンから短冊を貰ってきてくれないかい?」
華「短冊って……先輩!池本くんから全部奪い取ったんじゃないんですか!?」
薄井「いやぁ?隠し持ってるかもしれん。よろしく頼むよ〜♪」
華(な…なぜ……?)
―――わたしは写真部室を出て、また教室に戻った。
華(池本くん、いるかなぁ……)
(教室を覗く華)
―――♪――♪♪―
池本「……」
(窓側にある机の上に座り、ギターを弾く池本)
華(お礼……。今なら言えるかな…)
(教室の中に入る華)
池本「……え?たっ…立川さん!?」
………ガタガタッ
華「ごっ、ごめんね!?驚かしたりして…」
池本「いや…、別に…」
華「短冊って…もうないよね?」
池本「短冊?俺が持ってた分は全部薄井先輩にあげたけど…」
華「やっぱりそうだよね!薄井先輩に貰ってこい〜って言われて来たんだ」
池本「そっか」
華「………」
池本「………」
華「……あの」
池本「え?」
華「動物園にいたパンダさんは……池本くんなんだよね?」
池本「!」
華「ずっとお礼が言いたくて…その……ありが…」
池本「俺じゃない」
華「……え?」
池本「だから俺にお礼言っても意味ないよ」
華「でも山さんが池本くんだって…」
池本「ごめん。練習やるから出てってくれる?」
華「………ごめんなさい……」
(教室を出る華)
池本「………」
―――教室を出たわたしは写真部室に戻った。
………ガラガラ……
(写真部室の扉を開ける華)
薄井「お!花子〜♪遅かった……ね」
華「………」
薄井「どうした花子?」
華「………へ?」
薄井「今にも泣き出しそうだよ」
華「わっわたし、そんな顔してますか?」
薄井「ジュンジュンにいじめられたかい?」
華「違うんです!違うんですけど……」
――――痛い
練習の邪魔をしたのはわたしなのに………
池本くんの言葉がチクチク胸に刺さったように痛い………
薄井「花子」
華「……は……はい……?」
薄井「君も短冊に願いごとを書くといいよ。」
華「願いごと…」
薄井「うん。ほら、いつまでも立ってないでこっちに来て座りなさい」
華「…薄井先輩の1番叶えたい願いごとってなんですか?」
薄井「……一人になりませんように」
華「……贅沢だなぁ…」
薄井「?」
―――だって薄井先輩の周りには、いつだって人が集まってる。
わたしだって気付けば先輩の傍にいるんだよ……?
〜贅沢な願い〜 完。