Cheese68〜秘めた決意〜
池本くんにお礼を言えないまま、月日は流れ、気がつけば7月になっていた。
華(言わなくちゃ……。言わなくちゃ……。言わなくちゃ……。)
玲「華」
華「はっハイッ!?」
玲「何かあたしに隠し事してない?」
華「…え?」
玲「……」
華「な、なんにも隠してないよ?」
玲「…ごめん!今のは忘れて?ね?」
華「玲?」
――――玲は最近、何かを確かめたがっている。わたしが鈴木くんのことを好きだったこと、何となくだけど気付いているような気がした。
………そして放課後。
華(玲も部活に行ったことだし、わたしも早く同行会に行こう…。早く行かないとまた薄井先輩が教室に来ちゃう)
龍「……」
(ギターを持ち、練習する龍)
華(鈴木くん…。今日もギターの練習するんだ…)
龍「立川、もう帰んの?」
華「うん。同行会の方に行こうかと…」
龍「同行会?何の?」
華「Cheese同行会…」
龍「は?なんだそりゃ?わけわかんねー!つーか、急いでんだろ?早く行けよ」
華「…うん」
龍「じゃあな」
華「鈴木くんも練習頑張ってね!バイバイ」
龍「……」
――やっぱりまだ…
どことなく好き……。
華が教室を出た直後、柔道着を着たままの玲が龍のもとにやって来た。
龍「なんだよ?伊藤。その格好」
玲「見ての通り、部活抜け出して来たのよ」
龍「俺になんか用かよ?」
玲「ちょっと顔かしてくんない?」
龍「……」
玲と龍は屋上に向かった。
…………ガチャ
(屋上の扉を開ける玲)
龍「で?俺に何の用だ……」
…………ヒュッ
(龍目掛けて拳を突き出す玲)
龍「何の真似だ?俺と喧嘩してぇのかよ」
玲「あんたが…………あんたが華を泣かせたの?」
龍「!」
玲「あたし馬鹿だから今まで何も考えてなかった。華だって何にも教えてくれないけど……あんたが関係してるってことだけはわかった」
龍「それで?」
玲「華は……あんたのことが好きなんじゃないの?」
龍「だから?」
玲「動物園だって…二人で行く約束してたんでしょう!?」
龍「そんだけ理解してりゃあ、俺が説明しなくてもわかんだろ?」
玲「わかってんのは……あんたが華を傷つけた張本人だってこと」
龍「殴りたかったら殴ればいーじゃねぇか。それで気が済むんなら、あん時みたく俺を殴ってみろよ」
玲「………っ!!」
…………シュッ
龍「……」
…………ガシッ
(玲の放った拳を掴み押さえる龍)
玲「!?」
龍「俺は立川を振った」
玲「……なんでっ…」
龍「他に好きな奴がいるって言った。俺だって好きで傷つけたわけじゃねぇ」
玲「もっと言葉選びなさいよ……」
龍「好きじゃねぇ女に優しくなんかできるか」
玲「あんたがそんな男だから華はっ……」
………ヒュッ
(もう一度、龍に拳をぶつけようとするが当たらない。)
玲「なんでっ……?なんで当たんないのよ……」
龍「俺はお前より強くなる。前に喧嘩した時、そう決めた」
玲「………冗談じゃないっっ!!!」
…………ガッッ
(玲の拳が龍の頬に当たる)
龍「………っ」
玲「………足りない。一発なんかじゃ足りない。あんたをボコボコにしてやりたいのにっ……なんであんた強くなってんのよ!!」
龍「訳なんか言えるかよ……」
玲「……?」
龍「俺がお前より強くなったら言ってやるよ!!くそ女っ」
玲「は……はあ?怒りたいのはこっちだっつーの!!おい、コラ!待てっ!!!」
龍「最後に言っとくけど、立川にはちゃんと分かってもらった。俺が嘘言ってると思うなら立川に直接聞け。…つーか、口切れた。マジ痛ぇ。覚えてろよ?このバカ女」
玲「やっぱりもう一回殴りたいんですけど……よろしいでしょうか〜???」
龍「………たりぃ」
(龍、全力疾走)
玲「逃げ足だけは早い男……。」
龍「………」
―――いつか絶対、
お前より強くなる。
―――そしたら……
俺が守ってやる
〜秘めた決意〜 完。