表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とろけるCheese  作者: KoKoRo
65/156

Cheese65〜一人じゃない〜

ドタドタと走る足音が写真部室に近づいてきた。



華「な…なんなんでしょう?一体…」



薄井「メダカがランニングでもしてるんじゃないか?」



華「それは違うような気が……」




………ガラガラッ




写真部室の扉が開き、そこから薄井桃が出てきた。



桃「かーけ兄ーー!!」



華「桃ちゃん!?」



薄井「なんでここにいるんだね!?」



おじさん「やあ。」


(ひょっこり出る)



薄井「じいさんまでどうやって忍び込んだんだ……っていつ帰ってきたんだ!?」



おじさん「いつって…今だよ。い・ま。いやしかし、ここの事務の人は疑い深いね。僕が薄井翔の父だと言ったら『証拠ありますか?』だって。桃がいなかったら捕まってただろうね。僕。」



薄井「…この嘘つき。それになんでわざわざ学校にまで来るんだ!?」



桃「桃、今日お家に帰るの!だから帰る前にかけ兄に会いたいってお父さんに言ったの!」



おじさん「桃を今まで世話してくれてありがとう。そうだ、これあげる。」


(ポケットから何かを出し、薄井に渡す)



薄井「ありがとう……ってなんだコリャーーー!!??」



華「ギャーーー!!」



………びょ〜〜ん


(薄井の手から小さなカエルが飛び出す)




おじさん「旅行中に足の生えたおたまじゃくしがいてね。拾って育てたんだ。大事にしなさい。」



薄井「無茶苦茶だーーー!?」



華(この人……薄井先輩より変な人だーーー!?)



おじさん「そうだ。もう一匹いるんだ。たぶんメス。君にあげよう。」


(華に小さなカエルを差し出すおじさん)



華「わわわわたしは遠慮しておきますっ…!」



おじさん「大人しい子だから何も心配することはないさ。受け取りなさい。」



華「は……はい……」

(カエルを強引に渡される華)



華(うぅっ……。この感触……気持ち悪いぃっっ!?)




…………ガラガラ


(扉が開き、野高が中へと入る)



野高「あれ…?桃ちゃん?」



桃「優兄ーー!!」



おじさん「残念。もうカエルがいないよ。すまないね」



野高「?」



華(野高先輩にもあげようとしてる……)



おじさん「さてと。ほら、桃。そろそろ帰ろう」



桃「やだやだーー!!まだここにいるもん!!」



おじさん「外が暗くなる前に帰るんだ。わかったら返事して」



桃「……はぁい…。」



おじさん「じゃあ、お邪魔したね。桃を連れて帰るよ。」



薄井「……昇降口まで送るよ。」



華「わたしも行きます!」



野高「じゃあ、俺も」


おじさん「…ありがとう。」









昇降口までの短い距離をみんなで歩いた。途中、桃ちゃんが『森のくまさん』を歌い出したので、みんなで合唱した。

そこで一つ、大きな発見をした。薄井先輩と野高先輩はびっくりするくらい歌が上手かった…。







そんなことをしているうちに、あっという間に昇降口に着いてしまった。



桃「まだ帰りたくないよぉ……」



おじさん「ほら。行くよ」



薄井「桃が帰ったらまた一人か…。すこーしだけ寂しいよ」



桃「かけ兄」



………ギュッ

(薄井の服の端を掴む桃)



薄井「ん?」



桃「かけ兄は一人じゃないよ…?」



薄井「……!」



桃「華姉も優兄もかけ兄の傍にいるよ?」



野高「そうだね」



華「……ですね」



薄井「………」



桃「かけ兄のお父さんとお母さんも傍にいるよ?春姉だってきっとかけ兄の傍にいるよ!」



薄井「……ありがとう。桃」



桃「えへへ…」



薄井「大好きだよ。」


桃「うん!桃もかけ兄のこと大好きっ!」



華(……!)







「大好き」と言った時の薄井先輩の表情が、とても穏やかで優しい顔だった……。







―――そして、桃ちゃんはおじさんと手を繋いで帰っていった…。


姿が見えなくなるまでずっと桃ちゃんは手を振っていた。




野高「寂しくなるね。薄井」



薄井「僕には花男がついている」



野高「花男?」



薄井「こいつだ」



(ポケットからおじさんに貰ったカエルを取り出す薄井)



野高「ぎえぇえぇっ!!!???」



華「の…野高先輩……もしかして……」



野高「しまってくれーーー!?カエルだけは……カエルだけはっ……無理だあぁぁぁーーー!!!」




…………スタタタタ


(野高逃走)



薄井「花男に失礼じゃないか!?待ちたまえーーいっ!!!」




………スタタタタタッ


(薄井暴走)



華「あ…あはは…」





わたしは一人、取り残された。そしてふと思った。わたしのポケットの中にいるカエルの名前を「花子」にしよう……と。








〜一人じゃない〜

完。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ