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とろけるCheese  作者: KoKoRo
64/156

Cheese64〜翔の追憶〜

姉さんが家を出た直後、一本の電話が掛かってきた。









僕は受話器を握りしめながら電話に出た。




薄井「……はい。薄井です」



『白川病院の者ですが、そちらは薄井さんのお宅で間違いないですね!?薄井春さんが病院を抜け出したんです!!そちらにいませんか!?』





薄井「……いません」


『そうですか…。御両親はご在宅ですか?』



薄井「両親には僕から伝えます。」



『わかりました。こちらも周辺を探していますから、見つかり次第連絡致します。』








―――そんなような電話があった後、僕は父さんと母さんの携帯に連絡して伝えた。





―――案の定、二人はすぐに家へ帰ってきた。





そして………





あの電話が掛かってきた。





…………プルルルル




………ガチャ


(素早く電話に出る父親)



父「もしもし」



『白川病院の朝窪です。薄井春さんがこちらに救急車で運ばれてきました。只今処置をしていますので、すぐに来て下さい。』






―――父の顔つきが、みるみると悪くなっていくのがわかった。




父「病院に春がいる。すぐに向かうぞ」





――僕達は外に出た。



花子が見つめる中、僕は父さんの車に飛び乗った。








今の僕には姉さんのことしか頭にない。










………病院に着き、父さんは受付のカウンターにいた看護師に姉さんの居場所を聞いた。





すると、姉さんは入院している部屋にいると看護師は答えた。






駆け足で病室に向かった。父さんも母さんも顔が真っ青だ。



―――――僕は今、どんな顔をしているんだろう………








ノックもせずに父さんは扉を開けた。





目の前には体中、線で繋がれた姉さんと、傍には医者が立っていた。




母「はっ……春は………大丈夫なんですよね!?先生!?」



医者「……確実に脈が弱まっています。心臓も僅かに動いているだけで、いつ止まってもおかしくない状態です。」



母「春は………助かるんですよね……?」



医者「前にも言いましたが、春さんを救う方法は心臓移植しかありません。」



父「……」



母「ドナーは見つからないんですか……?お金ならいくらでも出します!!だから春を助けて下さい!!」



薄井「………母さん」


母「ドナーがいないなら私の心臓をこの子にあげて下さい!!春が助かるのならこんな命っ……」



薄井「母さん!!」



母「!」






僕は泣き叫ぶ母の腕を強い力で握った。






薄井「母さんの心臓を貰ったって姉さんが喜ぶわけないだろ……?」





母「………翔……」



薄井「まだ姉さんは生きてるじゃないか…。今、生きようとしてるじゃないか」




医者「……我々も最善の手を尽くしました。後は春さんの生きる気力に託すしかありません。」








……………………………………………………時間だけが流れた。






……そして、午後7時47分。姉さんは眠るように息をひきとった。






―――目の前が真っ白になった。







僕は無意識で優に電話を掛けていた。




―――優はすぐに病院へ駆け付けた。



病室に入った優は姉さんの顔を見て、すぐに出て行った。涙を流しているのがわかった。




僕は姉さんが死んでから涙を流していなかった。母さんは大声で泣いている。今まで泣くことがなかった父さんも涙を流している。





悲しいのに涙は乾いたように出なかった。







―――――姉さんが死んで三日後、花子の様子に違和感を感じた。





心配になった僕は、餌を皿いっぱいに入れ、花子の前に出した。



花子はただ見つめるだけで食べようとはしなかった。



薄井「なんで食べないんだよ……?」




次の瞬間、花子は僕の目の前で倒れた。




薄井「………花子………?」




僕は花子に触れた。



今までまともに触れたことのない花子に触れた。




息をしていない。




薄井「冗談だろ?花子……。なぁ……起きろよ…花子……」




体を摩っても動かない。



薄井「ほら…、花子の餌だ…。全部食べろよ……」




花子の手を掴んでわかった。ガリガリに痩せている。




――僕のせいだ……




―――僕が花子にちゃんと餌をあげていなかったから………







僕が花子を………





殺したんだ……






触れていた花子の体が冷たくなっていった。



薄井「ごめんな。花子…。もう餌あげないなんて言わないから…だから僕を一人にしないでくれ……」






「………逝かないでくれ!!花子」






…………ガバッ




気がつくと僕は誰かの手を掴んでいた。




僕の目に立川華の姿が映った。



華「わたしは……ここにいますよ?」




あまりにもすっとんきょうな答えに何だか笑えた。




―――長い夢を見ていたようだ。




薄井「優はどうした?」



華「今、お茶を買いに行ってます」



薄井「そうか…。僕が寝てる間、ずっとここにいたのか?」



華「はい…。起こそうと思ったんですけど、熟睡してたのでやめました」



薄井「そうか…。」



華「ところで……わたしの夢でもみてたんですか?先輩…」



薄井「内緒」



華「う゛……」






…………ドタドタドタ



そんな時、写真部室前の廊下を誰かが走ってくる音が聞こえた。







〜翔の追憶〜 完。



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