Cheese60〜大切な「今」〜
涙をいっぱい流した。
体中の水分を出しつくすぐらい泣いた。
目も鼻も真っ赤になって、すごく痛い。
そんなわたしは今、雅ちゃんに連れられて保健室にいる。
雅「本当に華だよね…?」
華「………う゛ん゛」
田中先生「泣いてる子を保健室に連れてこられてもねぇ…」
雅「でも、こんな状態でこの子を教室に置いとけませんよ」
田中先生「それはそうだけど……、原因はなに?」
華「……ズズ〜〜〜〜ッ」
(鼻をかむ華)
雅「さっきから聞いてるんですけど、答えてくれないんですよね…。」
田中先生「困ったわねぇ…」
………ガラガラガラッ
保健室の扉が開き、玲と高橋先生が慌てて入ってきた。
高橋先生「たたたっ立川!?伊藤から聞いたぞ!?ずっと泣いてるって本当か!?」
玲「華ーーー!!誰かに何かされたの!?だったらあたしがそいつぶっ飛ばしてやるから言いな!?」
華「ズズッズズ〜〜〜ッッ」
(相変わらず鼻をかむ華)
田中先生「立川さん、もう今日は早退しなさい。なんだか具合も悪そうだから」
華「…そうします。」
高橋先生「早退か…。そうだな。そうしたほうがいい。今日は帰ったらゆっくり休むんだぞ?」
華「……はい。ご迷惑おかけしました…」
玲「明日は元気に学校来なさいよ?華がいないとつまんないんだから……」
華「うん…。ありがとう。玲」
雅「…わたし、華の鞄、取ってくるね」
華「ごめん、雅…ちゃん。ありがとう…」
雅(「ちゃん」かよ…)
雅は保健室を出て、教室に向かった。
………ガラガラッ
(教室の扉を開け、華の席へと向かい、鞄を手に掛ける雅)
雅「……何か知らない?鈴木くん」
龍「何がだよ」
雅「華ちゃんが泣いてる理由。」
龍「俺が知るわけねーだろ」
雅「だったら…」
龍「………」
雅「そんな辛そうな顔、しないでくれる?」
龍「!」
―――嘘に嘘を重ねてもう疲れた。
―――立川のことを、嫌いなわけじゃない。
―――嫌いじゃない奴を傷つけるのは苦しい。
―――立川の想い一つで、俺の気持ちが揺らいだことが許せない。
龍「…佐藤!」
雅「?」
龍「立川、まだ泣いてたか?」
雅「今は……我慢してるよ。」
龍「……俺も保健室行くよ。たりぃけどな」
雅「やっぱりあんたが原因?」
龍「うるせぇな。さっさと行くぞ」
雅「…はいはい」
龍と雅は保健室に向かった。
―――保健室にて。
………ガラガラッ
玲「おかえり〜。遅かったじゃない……ってなんで龍まで来るの?」
華「!!わたし帰るっ…」
(雅から鞄を受け取ろうとする華)
雅「だ〜め。鈴木くんの話しを聞いてからね?」
華「………」
龍「動物園……本当は行った」
華「……え?」
龍「だけどお前がいなかったからすぐ帰った。…わりぃ」
華「……うん」
龍「これからも『ダチ』でいよーぜ。立川」
華「うん。ありがとう。」
わたしはこの時、はっきりと振られたんだなって思った。
でも、もう涙は出てこなかった。
鈴木くんがちゃんとわたしの顔を見て言ってくれた。笑って言ってくれたから……。
だからもう泣かないよ。
わたしも精一杯の笑顔で鈴木くんのことを見れたから。
でも、その顔が、不器用な笑顔だったら……
ごめんね?
雅「お話終了?はい。鞄!」
華「わたし……やっぱり教室に戻るよ」
玲「本当!?」
華「うん!元気になったよ!」
高橋先生「そうか!!戻るか!!よかった〜!安心したよ」
龍「……あ?高橋いたの?」
高橋先生「…はい?」
玲「…ぷっ!アハハハッ!龍、サイコ〜!」
龍「んな、口開けて笑うんじゃねーよ」
玲「あんたっ…本当不良!普通、先生を前にして呼び捨てなんかする?」
華「あ、本当だ〜!不良だ〜!!」
龍「……うっせぇ」
キーンコーンカーンコーン……
(予鈴がなる)
玲「あ!?やばっ!早く教室に行くよっ!華!!」
華「うん!」
雅「教室まで競争ね〜♪」
龍「ぜってぇ負けねぇっ!!」
玲「佐藤にだけは先頭を譲るもんかっ!」
華「みっみんな早い!?待ってよー!!」
高橋先生「廊下を走るなーー!!」
わたしの想いは鈴木くんには届かなかったけど……それでもいい。
みんなといられる「今」を大切にしたいんだ……。
――保健室内では…
田中先生「今日は野高くん、来ないのかしら…?そろそろ薬を貰いに来る頃なのに…」
高橋先生「…野高?二年の野高ですか?」
田中先生「ええ…。高橋先生、知ってらしたんですか?」
高橋先生「野高なら学校近くのカフェでバイトしてますよ。そこでばったり会いまして…」
田中先生「あそこのカフェで働いてたんですか?じゃあ、今度行ってみようかしら………ブツブツ」
高橋先生「………」
(疑惑の目で見つめる高橋)
高橋先生「…田中先生。生徒にだけは手を出さないで下さい」
田中先生「……何のことかしら?」
疑惑が渦を巻く保健室内であった……。
〜大切な「今」〜
完。