Cheese56〜交錯〜
放課後の教室で鈴木くんと二人きりになった。
こんなチャンスは、もう二度とやって来ないだろうと思った。
華「それはー…」
音が伝わる。
心臓が破れそうだ…。
今まで告白なんて一度もしたことない。
鈴木くんが初めてになるんだ………。
龍「なんだよ?」
華「わたしが鈴木くんのことを………………好きだからです」
―――言っ…た……。
龍「―――」
華「………」
龍「………俺は止めとけ」
華「どうして……」
龍「前から好きな奴がいんだ。だから立川の気持ちには答えられない」
華(………好きな……人……)
ずっと鈴木くんのこと見てたのに………
全然気づかなかった…………。
華「ごめんなさい。突然こんなこと言って…。ちゃんと返事をくれてありがとう」
龍「……わりぃ」
華「わたしは……平気だから……。だから、鈴木くんは謝っちゃだめだよ」
龍「………」
華「最後に一つだけ……お願いしてもいいですか?」
龍「なに?」
華「鈴木くんと動物園に……行きたい」
龍「だってお前、伊藤と行くんだろ?」
華「………」
龍「……わかった。伊藤には俺から言っとくよ」
華「え…?」
龍「俺がチケット返してほしいって言えば、あいつも納得すんだろ」
華「わがまま言ってごめ…」
龍「謝んな。これで最後なんだろ?」
華「うん。ありがとう…。鈴木くん」
龍「………」
………正直、
なんで俺なんだよ?とか思った。
立川が俺のこと好きだとか微塵も思わなかった。
気持ちは嬉しい。
でも、俺は―――
――――翌日――――
玲「えぇ!?やっぱり返せ〜〜!?今頃、何馬鹿なこと言ってんの!?」
龍「わり。やっぱダチと行くから」
玲「……まぁ、元々あんたが当てたんだし、文句は言えないけど」
龍「………」
玲「なんて顔してんのよっ!あんたらしくもない!」
………バシッッ
(龍を叩く玲)
龍「いってぇっ!」
玲「しょーがない!今回は諦めてあげる!天気予報で今週の日曜日は雨って言ってたしね〜」
龍「………雨かよ」
玲「また今度にでも行こうね!華!」
華「…うん。ごめんね……」
玲「なんで華が謝るのよ〜?謝んなきゃいけないのは龍でしょ!龍!」
華「………」
…………痛い。
玲に嘘をつくのは……
……すごく痛いよ。
その後、授業が終わって、わたしはCheese同行会を行う写真部室に向かった。
写真部室の扉を開けようと手を伸ばしたその瞬間、扉が開き、目の前に野高先輩の姿があった。
野高「……びっくりした。こんにちは」
華「こんにちは…」
野高「なんだか元気ないね。どうかした?」
華「いえっ…!元気ですよ」
薄井「花子〜?昨日、またサボったね?」
華(昨日……?そっか…。鈴木くんに振られて、そのまま帰ったんだ……)
薄井「残念だが今日の同好会は中止だよ。メダカくんがカフェでバイトだそうだ。僕もカフェに行くから中止決定!」
華「そうですか…。失礼しました」
(帰ろうとする華)
薄井「ん?花子はカフェに行かないのか?」
華「…はい。今日は帰ります。じゃあ、また明日来ますね」
そう言ってわたしは写真部室から離れて行った。
野高「なんか……元気なかったね」
薄井「ノリが悪いだけだろう?明日になればまたノリが良くなるさ☆」
野高「…………」
華と別れ、薄井と野高はカフェに向かった。
――カフェにて――
薄井「や〜まだ〜!元気か〜〜〜?」
山田「……元気なわけねーだろ」
野高「山さん。最近マスター来てますか?」
山田「全然来てない。電話とか掛かってくるけど『あとよろしく』とか言われてすぐ電話切るし」
薄井「あはは♪嫌われてるね☆」
山田「直で言うな。ムカツクから」
……チリンチリンッ
(カフェの扉が開き、誰かが入った)
山田「よお!いらっしゃい」
池本「げ」
野高「あれ?」
薄井「ジュンジュ〜〜〜ンッ☆」
池本「!!」ガタガタッ
(思わず後ろに下がる池本)
薄井「逃げなくてもよいではないか!さぁ…!来たまえ☆」
池本「俺は……コーヒーを……飲みに来ただけでして……」
山田「なんだ?お前ら知り合いだったのか?こいつ、最近よく来る常連なんだよ」
野高「へぇ〜。…っと、俺もそろそろバイトしなきゃな」
池本(あ〜…。今日の俺はアンラッキーだ。絶対そうだ……。)
薄井「何をしてるんだい?ジュンジュン!こっちにおいで……」
池本「先輩、怖いです。マジで。」
山田「あ〜…、日曜日のバイトは辛いな」
薄井「急に何をぼやいてんだい?山田」
山田「日曜のバイトだよ。動物園でパンダの着ぐるみ着て、風船配り」
野高「パンダ…?」
池本「着ぐるみ?」
薄井「この暑いときに着たら汗がぶわ〜!ついでに臭いもぶわ〜!だね☆」
山田「…直で言うな」
この着ぐるみが後に救世主になることを、今はまだ誰も知らない……。
〜交錯〜 完。