Cheese52〜いつか、必ず〜
教会に子連れのおじさんが薄井先輩を尋ねてやって来た。
そのおじさんと薄井先輩の関係がわからぬまま、おじさんは逃走。変わりに残ったのは小さい女の子だった。
桃「かけ兄〜!帰ろー?」
薄井「くそじじぃの策略にまんまと飲み込まれた……。不覚だっ!!」
華「ところで、さっきの男の人って誰なんですか?」
薄井「あー…、僕の父さんの弟でくそじじぃだ」
野高「そんな言い方しなくても……」
桃「………」じぃ〜
(野高を見つめる桃)
野高「……?」
桃「このお兄さん、かっこいい〜!!桃、このお兄さんと結婚するーーー!!」
野高「へっ!?」
薄井「あはは〜?よかったね〜♪結婚相手が見つかって☆桃!メダカくんちに泊めてもらいなさい」
野高「……そうだね。結婚しようか」
薄井「!!??」
華「!」
桃「わぁ〜〜い!やったーー!!でもねでもね、桃、かけ兄とも結婚するのーー!」
薄井「は!?」
野高「…だってさ」
桃「ねー?かけ兄〜!」
薄井「そんな馬鹿な…。約束した覚えがない!!」
華(桃ちゃんってかわいい子だなぁ…)
桃「このお姉ちゃん、だあれ?かけ兄の恋人?」」
薄井「ぶーーっ!?」
華「ななっ!?」
野高「ちがうよ。ただの友達。」
薄井「…なんで君が否定するんだね?」
野高「いや…、なんとなく」
………ツンツン
(野高と華の服のはじを掴む桃)
桃「お兄さんとお姉ちゃんのお名前教えてー?わたし、桃ー!薄井 桃だよ〜」
華「はじめまして。桃ちゃん。わたしは立川 華です」
野高「俺は野高 優。よろしくね」
桃「華姉と優兄!うん!よろしくねっ」
薄井「……」
桃「じゃあ、かけ兄!華姉と優兄と一緒にかえろ〜〜?」
薄井「は!?」
そんなこんなで桃ちゃんに連れられて、薄井先輩の家まで来てしまった。
華(うひゃ〜!!おっきな家だなぁ!!)
桃「あれー?花子はーー??」
華(花子って……確かもう……)
薄井「もういないんだよ。桃。どこか遠くに逃げ出したんだ」
桃「えー?かけ兄がいじめたからじゃないのーー?春姉ならそんなことしないのに…」
薄井「―――」
桃「春姉はー?今、お家にいるー?」
薄井「………」
華「野高先輩。薄井先輩ってお姉さんがいたんですね!わたし、全然知らな……」
野高「――……」
その時みた野高先輩の顔は……
すごく悲しい表情をしていた………。
桃「ねー!かけ兄!春姉に会いたいよーー」
薄井「姉さんは……もう家にいないんだ」
桃「どうしてー?」
薄井「……天国に行ったんだよ。だからもう……帰って来ない」
華(………え…?)
桃「やだーー!!春姉に会いたい!!会わせてよーー!かけ兄!!」
薄井「……ごめんな。桃……」
桃「かけ兄のいってることわかんないよーー!!うわあぁぁんっ」
薄井「………優と花子は帰ってくれるかい?」
華「先輩……」
薄井「桃が泣き止むまでしばらくかかるだろうから…。君達にまで迷惑をかけたくない」
野高「………わかった。帰るよ。…じゃあ、また明日学校でな」
薄井「……ああ」
華「…失礼します」
薄井「じゃあな〜!花子!」
華「…………」
先輩が無理に笑っているようにみえて………胸が痛くなった……。
わたしは野高先輩の歩くペースに追い付こうと、必死に先輩の後ろ姿を追った。
華(野高先輩、歩くのが早い……。わたしがついていったら迷惑かな……?)
野高「…………」
(立ち止まる野高)
華「………」
野高「立川さんの家ってこっち?」
華「はい…」
野高「……違うよね。立川さんは駅に向かって歩かないと、家に帰れないよ」
華「……そう……ですね…」
野高「………」
華「あのっ、先輩…」
野高「……?」
華「……やっぱりなんでもないです!さようならっ!」
野高「立川さん!!」
………ガシッ
(華の腕を掴む野高)
野高「やっぱり送っていくよ」
華「す……すいません…。」
野高「え……?」
華「実は駅がどっちなのか道がわからなくて…。…た…助かります…」
野高「……うん。ごめんね、気づいてあげられなくて。こっちだよ」
華「………」
わたしは歩き出した野高先輩の後ろ姿を追った。
ほとんど会話をしないまま、駅に着いてしまった。
華「ありがとうございます!野高先輩!」
野高「立川さんは優しいね」
華「へ!?」
野高「薄井のお姉さんのこと、俺に聞かなかったでしょ?」
華「それは……わたしなんかが聞くべきじゃないと思ったからです…」
野高「………」
華(本当は……野高先輩があんな辛そうな顔をしていたから……聞けない。聞けるはずないよ……)
野高「いつか…」
華「?」
野高「いつかちゃんと話すよ。だからそれまで……待っててくれる?」
華「先輩…」
野高「……」
華「……はい。」
その後、わたしは野高先輩と別れ、電車のホームへと歩き出した。
〜いつか、必ず〜
完。