Cheese50〜序曲〜
池本くんから借りたCDを家で聴いてみることにした。
華(ゴロゴロしながら聴こうかな〜…)
………パタッ
(CDをかけ、自分のベッドで横になる華)
「〜〜〜〜♪♪♪」
華「!」
「〜〜〜〜♪♪」
華「……。」カサッ
(CDの中にある歌詞カードを取出して見る)
華「………」
――――数分後……
弟の葵が一階から大きな声を出して話しかけてきた。
葵「姉ちゃーーん!母さんがご飯できたから降りてこいってさーー!」
華「もうちょっとだけ……聴いてたい」
葵「はーー?なんか言ったーー??」
華「もぉ〜〜!!すぐ行くってば!!」
「〜♪〜♪〜〜♪♪」
華(この曲の歌詞……なんだかすごく切ないな……)
―――翌日―――
バタバタバタッ
華は教室に着くやいなや、池本の席へと急いだ。
華「いいい゛っ!?池本くん!!」
池本「うわっ!びっくりした〜…。どうしたの?」
華「エルレさんの曲、聴いたよ!!ヴォーカルの人の声がすごくよかった!!それに曲もすごくよかったよ!!」
池本「…………」
華「……あれ?わたし、何か変なこと言った??」
池本「いや、そこまで良く思ってくれるとは意外だった」
華「良いものは良いよっ!!」
池本「…そっかそっか!それだけ喜んでくれたらこっちまで嬉しくなるよ。」
華「嬉しいのはわたしだよ!こんないい曲を聴いたの初めてだもん。貸してくれてありがとう。」
池本「…うん」
華「じゃあ、わたし席に戻るね」
池本「あ、うん。…わざわざどうも」
華「いえいえ!こちらこそどうも」
(池本の席から自分の席へと戻る華)
池本(やっぱり俺……立川さんのこと……)
――好きなのか……?
―――数日後―――
今日の日付は6月10日の日曜日。
高橋先生と雅ちゃんのお姉さん、梓さんの結婚式が行われる日だ。
そんな日にわたし、立川 華はというと……
華(うぅ〜〜!先生とマスターさんの結婚式……気になる〜〜!!)
……家の中でソワソワしていた。
葵「姉ちゃ〜〜ん!佐藤さんって人から電話〜〜〜!」
華「えぇ!?佐藤さんって……雅ちゃん!?」
わたしは慌てて電話に出た。
華「もしもしっ!雅ちゃん!?」
雅『どうも〜。華ちゃん、元気?今何してる〜?』
華「今、家の中でソワソワしてたよ!!だって今日はっ……」
雅『結婚式なんだけど華ちゃんも来ない?カフェ近くの教会にいるんだけど』
華「ううう嘘っ!?あのお洒落な教会で!?待ってて!!すぐ行くーー!!!」
…………ガチャンッ
(一方的に電話を切る華)
……ツー…ツー…
雅「……おかしな子」
――教会にて――
雅「遅いな…。華ちゃん……」
薄井「はな?まさか立川華のことか!?」
雅「そうですけど、どちら様ですか?」
薄井「メダカの付き人だ♪」
雅「……は?」
野高「薄井!!頼むから静かにしてくれよ!もうすぐ始まるみたいだから…」
薄井「どうせなら披露宴の方に参加したかったよ」
野高「文句いうなって…」
薄井「ところで山田はどうした?奴も誘われたんだろう?」
野高「うん。連絡したんだけど、繋がらない…」
薄井「そうか……」
その時、教会の扉が開いた。
華「し…失礼します………」(小声)
雅「華ちゃん!?こっち!こっち!」
華「雅ちゃん!!ごめんね!?着る服がなかなか決まらなくて……」
野高(!!……かわいい……)
野高「ずいぶんとめかし込んだじゃないか?花子」
華「なんでいるんですか!?それに野高先輩も……」
野高「マスターに誘われたんだ。カフェの近くだから是非って」
華「…?山さん先輩は来てないんですね」
薄井「………」
――数分後、高橋先生が現れ、牧師の前に立った。
そしてお馴染みの音楽と共に、マスターさんとマスターさんのお父さんが一緒に現れた。
雅(姉さん…。悔しいけど……綺麗だ…)
華(わたしもいつか…あの道を歩くのかなぁ……。鈴木くんと結婚……って何を考えてるんだろう!?)
野高「………」
薄井「……うるんでないかい?メダカくん」
野高「!?別にうるんでなんかないよ!」
薄井(嘘が下手な男だ……)
その後、梓さんが高橋先生と腕を組み、牧師の元までゆっくりと歩を進めた。
―――その時だった。
………ガチャン
(教会の扉が開く)
薄井「!!」
華(……え…?)
教会の扉が開き、現れたのは山田だった。
華「――――!?」
一瞬の出来事だった。
でもわたしにはスローモーションに時が流れていくような感覚に陥っていた。
山さんが前に向かって走ってゆく。
―――そして
梓さんの手を取り、逃げるように走り去ろうとしていた………。
〜序曲〜 完。