Cheese31〜意地悪な男〜
−チーズフォンデュ−作り方→カマンベールチーズをくり抜いてレンジで温めるだけの簡単な料理。それを薄井先輩に渡して、わたしは写真部室を出た。
華(野高先輩…一体誰のお墓参りをしてるんだろう。でも、関係のないわたしが知る資格ないよね…)
そんなことを考えながら校内を歩いていると、どこからかいい匂いがした。
華(むむっ!?)
くんくん……
匂いを嗅ぐ華。
華(紅茶の香りだぁ!どこからだろう?)
匂いのする方をみるとそこには生徒会室があった。
華(ドアが開いてる!ちょっとだけ覗いてみようかな!?)
…………ひょこっ
中を覗く華。
??「誰?」
華「ぎゃあっっ!?」
??「あのさぁ、そんなビビんないでよ?鼓膜破れそう」
華「すすすすいませんっ!!」
浅井「あら〜♪可愛い子☆ちょっと!書記の分際でその子をいじめないでくれる?」
書記「うっさいなぁ。いじめてないよ」
華「しっ、失礼しましたっっ!!!」
浅井「待って!美味しい紅茶、飲みたくなぁ〜い?」
華「飲みたいです!!………あっ」
浅井「はい!決まり!どうぞ〜♪中へ入りなさいな?」
華「えっと…お邪魔します……。」
紅茶の匂いにつられて生徒会室を訪れたわたしは……
華「おいし〜です」
紅茶をすすりながら、すっかりお世話になっていた。
浅井「紅茶飲んだだけでそんなに幸せそうな顔してくれると、こっちまで嬉しくなるわ〜」
華「本当に美味しいですよ!?」
書記「生徒会室で紅茶飲んでること自体おかしいと思うだろ?普通…」
浅井「書記は黙りなさい!?しっかしまぁ、ゴールデンウイーク中に学校来るなんてあなたも大変ね〜?部活か何か?」
華「へっ!?…ええ、まぁ…」
浅井「何部なの?」
華「え…えっと……、Cheese同好会…です」
書記「はぁ?」
浅井「そんな同好会あったかしら?」
華「先輩が勝手に作っただけでっ…趣味の集まりみたいなものです!!」
書記「けど勝手に作って活動するなんて異例じゃね?いいんですかね〜?会長?」
浅井「その同好会を作った人物は誰?」
華「う…薄井先輩という人です…。」
浅井「ブーーーッッ」
書記「きたねぇっ!?紅茶を吐くなっ!?」
浅井「薄井…翔…?」
華「はい!金髪の変な人です!!」
浅井「それ以上言わないでーぇーえーー…」
華「???」
浅井「あの男の名前を聞くだけで虫ずが走るわい。」
華「薄井先輩のこと、知ってるんですか?」
浅井「あの男はわたしの疫病神よ…。忘れもしない。あの時のことを………」
それはわたしが小学生の頃……
薄井 翔とは家が隣り同士だったため、自然と小学校低学年までは仲良くしていた……ような気がする。
わたしがあの男を嫌う前までは普通に公園で遊んだり、学校で遊んだりしていた……ような気がする。
あの事件が起こる前までは………
わたしが小学六年生の頃、休み時間にそれは起こった。
浅井の友人「不幸の手紙が届いたって本当!?」
浅井「うん…。家のポストに入ってたの」
友人「なんて書いてあったの?」
浅井「この手紙を100人に回さなければお前は明日、地獄に落ちる…って」
友人「なにそれ〜?イタズラだよ〜!きっと!」
浅井「誰がこんな手紙書いたんだろ…」
友人と不幸の手紙について話しをしていると、突然薄井が教室に入ってきた。
薄井「浅井くん!」
浅井「あ、あんた…五年のくせに、よくノコノコ六年の教室に入って来れるわね!?」
薄井「好きだ!付き合ってくれ!」
浅井「えぇえ!?急にななななに言ってんの!?そんなこと言われても困るしっ!!」
薄井「王様ゲームの罰ゲームだよ。本気にしないでくれたまえ」
浅井「はぁ!?だったら最初からそう言いなさいよ!?」
薄井「言わなくても気付くだろう?誰が君みたいな野蛮な女と付き合いたいと思うんだい?」
浅井「今……野蛮って言った?」
薄井「あ、それとその机の上にある不幸の手紙、早く100人に回したほうがいいよ〜?」
浅井(まさかコイツが犯人!?)
薄井「地獄に落ちちゃうよ☆」
浅井「お……おめぇが地獄に落ちやがれーーーーーー!?!?」
こうしてわたしは薄井翔を嫌いなまま、中学に上がる前に引っ越しをした。
浅井「…というわけでわたしはアイツが大嫌いなの!」
華「でもそれって…」
浅井「あ゛〜!?思い出しただけで腹が立つ!!うが〜〜っっ!」
………バサバサバサッ生徒会重要資料をバラまく浅井。
書記「おい、一年。被害を受けたくなかったら早くこの場を離れたほうがいいぞ…」
華「あ…ありがとうございます!書記さん!あと紅茶、ごちそうさまでした!!」
そそくさと生徒会室を出たわたしは、さっきの話を思い出した。
華(やっぱりさっきの話での薄井先輩の行動って……好きな人だから意地悪なことしちゃったんじゃないのかな…?)
……………♪
華(…?今何か音がしたような??)
………………♪……
華(微かだけど聞こえる…。どこからだろう……?)
わたしはゆっくりと音色を辿りながら歩き出した。
〜意地悪な男〜 完。