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とろけるCheese  作者: KoKoRo
30/156

Cheese30〜謝罪〜

春さんの死から一年が経過した。




俺はまた、あなたの前にいる。





ここで眠るあなたに会いに。






野高「………。」






雨が強くなる中、野高は春の墓の前から動くことはなかった。





「…風邪ひくよ」





雨に濡れる俺に傘をかざしてくれた。





野高「なんだよ。別々に墓参りするんじゃなかったか?」



薄井「気が変わった。やはり最初に墓参りをするのは家族だろう?」



野高「そうだよな。ごめん」



薄井「線香はたてたかい?」



野高「持ってきたんだけど濡れちゃって火がつかないよ」



薄井「馬鹿だね。君は。姉さんも天国で爆笑しているに違いない」



野高「そうだといいよ…」



薄井「………線香忘れた」



野高「駄目な弟だな……。薄井」



薄井「………。」




野高「薄井?」




薄井「優に謝らなきゃならないことがある。」



野高「なんだよ?」



薄井「今日は姉さんの誕生日なんだよ」



野高「……え?」




薄井「あの日、姉さんは君に会いに病院を抜け出したんだ」



野高「なに……言ってんだよ?春さんが俺なんかに会いに来てくれるわけないじゃないか!?」



薄井「優のところに行く前に家に帰ってきたんだ。チーズケーキを作りに」



野高「……」



薄井「優に絶対食べてもらうって張り切って作っていたよ。馬鹿な姉さんだ。もう体は限界だったはずなのに」



野高「なんで…?なんで止めなかったんだよ!?」



薄井「止めたに決まってるだろ!?そんなことはやめろって何度も言った。でも僕は本気で姉さんを止めることができなかった」



野高「どうしてだよ……。薄井」



薄井「姉さんは優のことが好きだったんだよ」



野高「!」




薄井「誕生日に好きな人に会いたいと願う姉を、どうやったら止められるんだ?」



野高「ごめん。薄井」



薄井「………っ」



野高「………ごめん」





謝らなければいけないのは僕の方なのに……








悔しかったんだ。





姉さんを優に取られるのが………








僕は姉としてではなく、一人の女としてみていたのかもしれない。






貧弱な姉を僕が守りたかった。






………でも




僕じゃ駄目だった




優でなければ姉さんを守れないとわかったから







夏祭りのあの夜、



僕は身を退いた………







薄井「暗い雰囲気になってしまったじゃないかっ!?…あ、そういえば花子が学校に来てこんなものを置いていったぞ!」




野高「なにそれ?」




薄井は華から預かったケースの蓋を開けた。すると………





ぷぅ〜〜〜〜ん



野高「くっ!?クサッ!!」



薄井「あはは〜♪チーズフォンデュだ☆花子もなかなかシャレたものをつくるね♪♪」




野高「ちちちち〜ずっ!?」



薄井「花子いわく、メダカへの差し入れだそうだ!!さぁ……」



野高「………さあ?」



薄井「食いたまえ〜〜〜〜っい☆☆☆」



野高「嫌だーーーーーーーーーーー!?」



薄井「もれなくマシュマロ付きだぞ?それでも食わん気かっ!?」


野高「マシュマロ…?」



薄井「マシュマロにとろとろチーズをつけて食べてごらんよ。ほら!」



野高「…………」





野高はマシュマロを一つ取り、少しだけチーズを付けて食べた。




薄井「どうだい?」



野高「うまい……かも」



薄井「その言葉、花子に会ったら言ってあげたまえ。きっと喜ぶよ」



野高「……そうだね」










春さん、





俺は





あなたが作ったチーズケーキも食べてみたかったな……








きっと俺、







全部食べたと思います。








好きな子が作ったものならなんだって………








〜謝罪〜 完。



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