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とろけるCheese  作者: KoKoRo
27/156

Cheese27〜もう届かぬ言葉〜

玄関先で野高くんと別れたわたしは家の中へと入った。

すると玄関を開けてすぐ目の前に翔が立っていた。



薄井「おかえり」



春「ただいま。」




翔の様子に気がついたわたしは逃げるように二階へ上がろうとした。



薄井「姉さん」



春「…なに?」



薄井「いや、何でもない」



春「安心して。野高くんとはただの友達」


薄井「別にそこまで聞いてないよ」





翔はそう言って先に二階へと上がっていった。



春「本当……性格悪い……」







わたしが仮退院を許されたしばらくの間、野高くんは家へよく遊びに来てくれた。



薄井「そういえば明日花火大会があるそうだよ」



春「へぇー…。そうなんだ」



薄井「僕と優で行く予定なんだ♪男二人で寂しい夏祭りになりそうだよ…」




野高「よかったら春さんも……」



春「わたしは……行けないよ…」



野高「……」



春「ほら!わたしが行ってもきっと迷惑かけちゃうだろうから二人で楽しんできて!」



薄井「よし!姉上の分まで楽しもう!優!」


野高「…そうだね」



春「……」








そして夏祭り当日……


俺は待ち合わせ場所で薄井が来るのを待っていた。




野高(遅いな…。何やってんだよ。薄井の奴…)




春「……こんばんは」


野高「…!なんでっ…!?」




待ち合わせ場所に来たのは薄井ではなく、浴衣を着た春さんだった。




春「あ、翔もすぐ来ると思うよ」



薄井「あっはは〜♪祭りだ祭りだ〜〜♪♪」


春「ほらね?」



野高「大丈夫なんですか?結構歩きますよ?」



春「うん。平気」



薄井「こら!そこの二人、会話してる暇なんかないんだよ!?早く行くぞ〜っい☆」



春「さっきっからあの調子。本当、子供みたい」



野高「それが薄井のいいところじゃないですか」



春「……だね」





花火大会の会場に着くと、たくさんの人で賑わっていた。



野高「春さん、はぐれないように着いて来てくださいね」



春「うん…」



薄井「喉が渇いたから何か飲み物を買ってくるよ」



野高「え?あっ、おい!薄井!!」




薄井は人混みの中へと消えてしまった。





しばらくその場から動かずに待っていたが、薄井は帰ってこなかった。



野高「……」



春「ちょっとその辺を探さない?翔っておっちょこちょいなところあるから迷ってるのかも…」



野高「……」



春「ほら、行こう?」


そう言った春さんは人混みの中へ入ろうとした。



…………………………


春「!」



野高「…俺から離れないで下さい」




春さんの手を掴んだ俺は、ゆっくりと歩き出した。








その頃、薄井はお面を売っている出店の前にいた。



薄井「おっちゃん。この面、くれない?いくら?」



店のおっちゃん「お!兄さん、仮面ライダーの面とるたぁ、お目が高いねぇ!」



薄井「…そうかい?」


おっちゃん「ああ!その面は300円ね!」


薄井は小銭を渡し、面をつけた。




するとその時、薄井の前を手を繋いだ野高と春が通り過ぎて行った。



おっちゃん「??兄さん、一人で祭りに来たのかい?」



薄井「…そうだよ」







優が姉さんをみていることは知っていた。





だから姉さんも………






多分、優の気持ちに気づいているだろう…。





野高「……」



春「……」






わたしは自惚れているのかもしれない。






もしかしたらこんな自分を野高くんは好いてくれているのかもしれないと思ってしまう…。



春「……野高くん。」


野高「なんですか?」



春「これって病人扱い?」



野高「!」



春「わたし…、まだ普通に歩けるよ。だからもう離して?」





同情してもらいたくない。




こんな体なわたしを彼は心配してくれているだけなんだ。





ただ……それだけ。




野高「強がるなよ」


春「……!」



野高「誰かに頼ったっていいんだよ…」



春「………」







今のわたしは可愛くない。



強がることしか出来ない。




だって甘えたら…



あなたに恋をしてしまいそうな自分が怖い。







……………バンッ



近くで花火が上がった。



野高「………」




春「……?」




花火が上がった瞬間、彼が何かを言ったような気がした。




野高「言い忘れてました。」



春「え…?」



野高「春さんの浴衣姿、綺麗です。」



春「……それ、今言うセリフかなぁ?」



野高「すいません」



春「ううん…。ありがとう」



野高「……」





あの時、彼女には聞こえていなかっただろう。





『俺があなたを守る』





花火が上がった瞬間、




口に出た言葉は








彼女に伝えられずに花火と一緒に消えてしまった………。









〜もう届かぬ言葉〜

完。



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