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とろけるCheese  作者: KoKoRo
26/156

Cheese26〜春の思い〜

薄井の家で久しぶりにケーキを食べた。

苺のショートで味は甘すぎず、中に桃が詰まっていておいしかった。





春「味はどう?おいしい?」



野高「はい、うまいですよ」



薄井「まあまあ。」



春「翔がまあまあっていうならまあまあの味かな…」



野高「え?おいしいと思いますけど」



春「ううん、まだまだ!翔が作った苺のレアチーズケーキには遠く及ばないよ」



野高「……チーズ?」


薄井「あはは〜?優はチーズ嫌いだから僕が作ったケーキの素晴らしさは一生わからないだろうね!」



春「チーズ嫌いなんだ?よかった〜!今日チーズケーキ作らなくて」



野高「……。」




あなたが作ったものならチーズケーキだろうが、なんだって食べれる気がしたんだ。





春「…さてと。花子の散歩にでも出掛けようかな」



薄井「何を言ってるんだ!?歩いただけでも息が切れるくせに」


春「だって誰も花子を散歩に連れていってあげないじゃない。」



薄井「それは……」



春「わかってるよ!翔もお父さんもお母さんも犬嫌いだもんね!わたしがちゃんと世話するって決めてたのに……ごめんね」




薄井「姉さんのせいじゃないよ」




野高「…散歩、俺も一緒に行っていいですか?」



春「え、でも…」



野高「行きたいんです。駄目ですか?」



薄井「仕方がないな。僕が家の見張りをするから二人で行きたまえ〜いっ!」



春「……うん。了解。ちゃんと家、見張っといてよ?」



薄井「任せなさい♪」


春「じゃあ、いこっか?野高くん」



野高「…はい」








花子を連れて二人で家を出た。



正直、女の人と二人きりで歩くことが初めてだった俺は緊張していた。




春「ねぇ、野高くん」



野高「はっ、はい」



春「わたし、いくつにみえる?」



野高「18…ぐらいですか?」



春「え〜?それ本当?だったら嬉しいかな」


野高「本当はいくつなんです?」



春「……22」



野高「若いじゃないですか。そんなに小声で言わなくてもいい歳ですよ」



春「だって野高くんはまだ15でしょう?若いよー。わたしと7つも違う」



野高「歳なんてそんなに重要なことじゃないよ」



春「そう?」



野高「そうです」



春「そう…かな?」


花子「ワンッ」



野高「あははっ!ほら!花子だって…」



春「はぁ…はぁ…」



野高「春さん!?」



春「ごめん、ちょっと息が切れただけだから…」



野高「……これ以上歩かないで下さい。」



春「なんでっ…」



病人扱いされたくない!



野高「どうして無理ばっかりするんですか?」



春「野高くんにはわからないよ!」



わたしだって皆と同じように普通に生きたいんだよ…。



野高「…乗って下さい。」



春「!」



野高「俺の背中に乗って下さい。家まで送りますから」



春「そんなことして恥ずかしくないの…?」



野高「全然」



春「……」



わたしは黙って野高くんの背中につかまった。



花子「ワンワンッ」



野高「花子のリード、ちゃんと持ってて下さい」



春「……うん」



野高「じゃあ、行きますよ」




…………………………時が止まったような感覚に陥った。



彼の背中は大きく感じて、やっぱり男の子なんだと思った。



恥ずかしくないと言ってくれた彼の気持ちが嬉しかった。



今のわたし達は人にどんな風に見られているんだろう…?




野高「………」



春「……ありがとう」


野高「………」



『ありがとう』なんて言わないで。



今の俺はあなたを乗せなければよかったと後悔している。



身体の重さを感じない。空気みたいだ…。





そんな彼女を乗せて家まで歩いた。



春「ありがとう。野高くん。おんぶなんて久しぶり……」



野高「――――…」




見るな……




春「……野高くん?」



俺を見ないでくれ……



春「野………」








気がつくと彼女を抱きしめていた。






あなたは自分の軽さに気づいていますか?





あなたは……ちゃんと生きていますか……?




春「大丈夫だよ。」



野高「!」



春「大丈夫」





彼女の強さが伝わった。



俺なんかが心配しなくても彼女はちゃんと生きている。



野高「何が大丈夫なんですか?」



春「疲れてないから大丈夫って意味!」



野高「春さん」



春「ん?」



野高「また会いに来てもいいですか?」





春「………はい」








薄井「………」





玄関先での二人の様子はまるで……恋人のようだった…。









〜春の思い〜 完。



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