Cheese25〜優の追憶〜
あの人に初めて会ったのは二年前のことだった……。
二年前、中学三年生の頃、俺は薄井と初めて同じクラスになった。
新しいクラスで初めて声を掛けられた相手が薄井だった。
薄井「よっ!」
野高「はい?」
薄井「鈍いね。君に挨拶してるんだよ」
野高「どうも」
薄井「君の名前、何かに似ていると思わないかい??」
野高「何かって?」
薄井「め・だ・か☆」
野高「!?初対面で言うセリフかっっ!?」
薄井「じゃあ、友達になろうぞ♪僕は薄井 翔だ!かけるんるんと是非呼んでくれ!!」
野高「………嫌だ。」
最初は変な奴だと思ってたけど、薄井のことは一番の友人と思えるほど仲良くなった。
そんな時、薄井が突然こんなことを言い出した。
薄井「次の休みは暇かい?」
野高「暇だけど、なに?どっか遊びにでも行く?」
薄井「紹介したい人がいるんだ。僕につきあってくれるかい?」
野高「ああ…。」
次の休み、俺は薄井に連れられて病院へ行った。
野高「ここって病院じゃないか…」
薄井「何をためらっているんだい?中へ入るぞ〜」
野高「あ、待てよ!?薄井!!」
薄井の後をついて歩いていくとある病室の前に着いた。
病室の前に名前が書いてある札があった。その札には〈薄井 春〉と記されていた。
…………コンコン
薄井は扉を軽く叩いて病室に入っていった。
扉が開くとそこには……
??「………」
女の人が一人、ベッドから窓の外を眺めている姿がそこにあった。
野高「………」
俺の視線は一瞬で彼女に奪われた。
薄井「紹介しよう!僕の姉さん、薄井 春だ☆」
春「フルネームで呼ばないでくれるかなぁ?名字付けちゃうと幸薄い名前になっちゃうでしょう?」
薄井「そうかい?いい名前だと思うぞ?なぁ?優!」
野高「え?あ、うん……。」
春「こんにちは。君が野高くん?」
野高「え?なんで俺の名前……」
春「翔から聞いてるよー。いつも弟がお世話になってます」
薄井「姉さん、世話をしてるのはこの僕だよっ!?」
春「はいはい。口ばっかりの翔はほっといて、今日は来てくれてありがとう。野高くん」
薄井「どうしても優に会わせろとこの人が口うるさかったもんだから連れて来たんだ。感謝するなら僕にしなさい。」
春「はいはい。うるさいうるさい。」
薄井「僕をかわせるのは姉さんぐらいだよ…」
野高「……ぷっ」
薄井「?」
野高「あはははっ」
薄井「??爆笑するところがあったかい?」
野高「いや、仲いいなって思っただけ。」
翔&春「仲良くないっ!!」
野高「あははっ!ほら!やっぱり仲いいよ」
俺には兄弟なんていないから、言い合える二人をみてうらやましいと思っていた。
病院を出た後、薄井に聞き出せなかったことを思い切って聞いてみた。
野高「薄井のお姉さんってどこか悪いのか?」
薄井「ああ。頭が悪いよ。よくわかったね?」
野高「そうじゃなくて体の具合の方だよ…」
薄井「………。」
野高「……ごめん。無理には聞かないから」
薄井「……悪いんだ」
野高「え?」
薄井「心臓が……悪いんだ」
野高「!」
薄井「重い心臓病でね。子供の頃からよく、ぱたぱた倒れていた」
野高「……」
薄井「今も元気そうにみえるだけで、本当は辛いのを隠してる。そんな人なんだよ。僕の姉は…」
野高「よく見てるんだな。お姉さんのこと」
薄井「どうだろうね……」
二人は似ていると思った。自分の姉のことを話す薄井は、必死に辛い顔をするのを隠して話しているようにみえた。
数日後、薄井からお姉さんが仮退院することを聞いた。
野高「え?退院!?よかったじゃないか!」
薄井「ああ。でも期間は短いらしい。一週間と言っていたよ」
野高「一週間しかないのか!?」
薄井「本人は一週間でも喜んでいたよ。花子に会えるって言ってね」
野高「花子?ああ!薄井の犬だよな?」
薄井「……僕はあんまり花子が好きじゃないんだけどね。姉さんが好いてるから」
野高「少しは可愛がってあげないと花子が可哀相だよ」
薄井「僕は犬が嫌いなんだよっ!!??」
野高「そうなんだ?そんなこと今知ったよ」
薄井「それより今日、家へ来ないかい?姉さんがケーキを作って待ってるんだよ」
野高「それって薄井のために作ってるんじゃないのか?俺が行っても迷惑だよ」
薄井「優の分も作るから誘えとこの僕に命令したぞ?変な遠慮なんかせずに来たまえ!」
野高「……じゃあ、おじゃましようかな」
本当は嬉しかったんだ…。
あの人にまた会えることが………
〜優の追憶〜 完。