Cheese21〜迎えに来た〜
鈴木くんと野高先輩の決闘から数日経った放課後、あれからわたし立川 華はCheese同好会に参加していなかった。
華(さすがに顔を出した方がいいかな。でも……)
玲「さぁ〜て、部活!部活!じゃあ、華〜また明日ね〜!」
華「うん。バイバイ」
華
龍「お前、最近帰るの早くね?」
華「へ?」
龍「なんか部活入ってなかったか?」
華「ううん。帰宅部だよ」
龍「あっそ」
華(薄井先輩が嫌いなわけじゃないけど、なんか…行きたくないな…)
その日の帰り、わたしは久しぶりにコーヒーカフェを訪れた。
華(そういえば野高先輩がバイトしてるんだったっけ……)
中を覗くと野高先輩の姿はなく、変わりに山さんとカウンターに一人、女の人が座っていた。
華(お客さんかな?)
わたしはカフェの前で中に入ろうか迷っていると小さく話し声が聞こえた。
女の人「ねぇ、わたしと付き合ってくれるって話、ちゃんと考えてくれた?」
山田「あはは、無理っすよー。茜さん綺麗すぎて俺にはもったいないし」
茜「じゃあブスになれば付き合ってくれるの?」
山田「……そうは言ってないですよ」
茜「本当は彼女がいるんじゃないの〜?」
山田「いないですよ。俺と付き合ったらみんな不幸になるから」
茜「どうして?」
山田「……浮気者だから」
そう言って山田は茜の唇を奪った。
華「!!!」
…………ドサッッ
わたしはあまりにも突然な出来事に鞄を落としてしまった。
茜「やだ…人が見てるじゃない…。今日は帰るけど、わたしと付き合うかちゃんと考えといてよ?」
山田「へーい」
茜「まったくもう…」
そして女の人は店から出て行った。
華(わたしも今日は帰ろう……)
山田「花子ちゃ〜ん!おいでよ?お客いないと暇でしょーがないんだよね」
華「……花子じゃありません」
山田「え?だって前に来た金髪が花子って呼んでたような?」
華「華です。わたしの名前……」
山田「な〜んだ。そっか!俺と結婚したら山田花子になるじゃんとかって考えてたんだけど!」
華(なんかこの人……軽い………)
山田「とか言ってみたりして。立川さん?おいでよ」
華「………」
わたしは帰るに帰れず中に入った。
山田「今日は一人?玲ちゃんは?」
華「玲は……部活に出てます」
山田「へぇ〜、熱心だねぇ。君は?確か、何とか同好会に入ったんじゃなかったっけ?」
華「あれは部活というより、毎日会って話をするだけなんです。」
山田「はっは〜ん?さては物足りないんでしょ?だからここに逃げてきた…違う?」
華(悔しいけど……この人の言う通りだ…)
山田「そんな同好会なんてさ、辞めちゃえば?」
華「え?」
山田「辞めなよ。そんな同好会」
華(……辞め…る?)
山田「ね?立川さん」
そう言って山田は華の額にキスをした。
華「なっっ……!?」
山田「ははっ!ごちそーさん」
華「なんでこんなことするんですか!?さっきの人とだって…!」
山田「さっきの人はあんま好きじゃないから口にしただけ」
華「山さんの言ってること……変です…」
山田「そう?でも君は俺にとって特別だから額にしたんだよ」
華「!!馬鹿にしないで下さいっ!!!」
…………ガタッ
わたしは席を立ち、逃げるように店を出た。
山田「大真面目なんだけどなー…」
店を出たわたしは気がつくと、涙が溢れてどうしようもなかった。
華(……どうして…?なんであんなこと平気でするの………?)
??「………」
誰かがわたしの前にいる。
わたしの瞳は涙で溢れて視界がぼやけていた。
そんな顔を見られるのが嫌で涙を拭い、そこにいる人を見ると……
薄井「………」
華(薄井先輩!?いやだ……またあのテンションで何か言われるんだっ………)
薄井「どうした?」
華「え……?」
薄井「Cheese同好会をサボりすぎだよ。」
華「先輩だって……今帰ってるじゃないですか……」
薄井「君がコーヒーカフェに行ったのを見た人がいてね。迎えに来た」
華「!」
薄井「今日は君のためにイチゴのレアチーズケーキを作って待ってたんだぞ?」
華「それ……食べたいです……」
薄井「……食いしん坊万歳だよ」
華「意味わかんないです………」
薄井「さてと。じゃあ、僕と一緒に学校に戻るかい?」
華「……はい」
わたしは薄井先輩と一緒に学校へと戻った。
そしてCheese同好会の活動場所である写真部室へと入ると……
野高「おかえり」
薄井「…僕じゃなくて花子に言ってるみたいだな」
華「え?」
野高「………」
華「あ…、えっと…ただいま帰りました」
野高「うん。おかえり。立川さん」
薄井「よぉ〜し♪チーズケーキを食べよう☆花子!」
華「はいっ!」
薄井「メダカにはやらんぞ?」
野高「チーズ嫌いなんだって………」
ここが………
わたしの居場所と思ってもいいのかな……?
〜迎えに来た〜 完。