Cheese19〜龍の本気〜
今日は月曜日。春らしい風が吹くこの穏やかな日にまさかあんなことが起きようとは………
わたし立川華はこの日、水やり当番があると思い込んで朝早く学校に来てしまった。
華(そういえば今週は当番じゃないんだった!!失敗したなぁ。もう少し眠れたのに…)
そんなことを思いながら教室の中へと入った。すると鈴木くんが一人、席に座って音楽を聴いていた。
華「鈴木くん、今日は珍しく早いね〜」
龍「………」
華(音楽聴いてるから聞こえてないのかな…)
龍「………立川」
華「はいっ!?」
龍「お前…先週の金曜日、ゲーセンにいただろ?」
華「う、うん。でもなんで?」
龍「立川と一緒にいた金髪じゃない方の男の名前…教えてくんない?」
華「へ?野高先輩のこと??」
龍「野高……。クラスは?」
華「確か…2年A組だったと思う」
龍「…サンキュ」
そう言って鈴木くんは席を立ち、教室を出て行ってしまった。
華(どうして野高先輩のこと聞いたんだろう?)
しばらくして鈴木くんが教室に帰ってきた。
龍「……」
華「あの……」
龍「…なに?」
華「なっ、なんでもないですっ」
龍「……」
華(なんか今日の鈴木くん、いつもより怖い…)
その頃、薄井と野高は昇降口にて靴を履こうとしていた。
薄井「ふあ〜ぁ。朝はどうしてこうも眠いのか…人間の神秘だ」
野高「……あれ?」
薄井「なんだっ!?どうしたっっ!?」
野高「たいしたことじゃないからそんな大声で叫ぶなよ」
薄井「ムフッ…君がその手に持っているのはなにかな〜?」
野高「下駄箱に入ってたんだ。なんだろ?」
薄井「水草からのラブレターじゃないのかっ!?」
野高「水草って……かっ海藻!?」
薄井「藻だ☆藻!メダカにラブレターを送る奴なんて水草しか考えられないじゃないか!」
野高「水草は人じゃなくて川に生えてる草だろ?それに俺はメダカじゃないっ!!」
薄井「いいから中を見せたまえ〜〜いっ♪」
野高「ぅわっ!?なんでお前が先に見るんだ!?」
………ガサッ
手紙のようなものを開くと、そこには……
挑戦状
本日放課後、グラウンドにて待つ。必ず一人で来い。
鈴木 龍
野高「鈴木 龍って誰?」
薄井「なんだ。喧嘩の申し込みか。」
野高「なんだって何だよ!?重大じゃないか」
薄井「優!売られた喧嘩は買うのみだ」
野高(人事だと思ってるな……絶対。)
そして、その日の放課後、グラウンドにて事件は勃発した。
1年C組のクラスでは早くも窓から観戦している人がいた。
華「ななっ!?なんで鈴木くんと野高先輩がグラウンドに!?」
玲「ありゃ喧嘩するわね。間違いなく」
華「どうしてわかるの!?」
玲「だってアイツ、マジの時はイヤホン外すから」
華「とっ、止めなきゃ!?」
池本「男の喧嘩は止めないほうが身のためだよ?立川さん」
玲「……誰?」
池本「誰って…同じクラスの池本ですよ!?ちゃんと覚えて!?」
玲「あはは〜!…ごめん。影薄すぎて名前がね」
池本「がび〜ん。伊藤さんの前の席にいるのに………?」
玲「そうだっけ?」
池本「おいっ!?」
華「池本くん……。」
池本「なに!?」
華「ファイトっ!!」
池本「何言ってんだーーーーー!?」
その頃、野高のクラスでも窓から観戦する人が増殖していた。
二年男子「薄井〜!野高くんがグラウンドに突っ立ってるけどなんで?窓からよぉ〜く見えるんですけど」
薄井「どれどれ?……ほう。そろそろだな」
二年男子「なにが?」
薄井「見ていればわかるさ♪」
そしてグラウンドでは……
野高「鈴木くんって君だったんだね…?」
龍「……」
野高「……話し合いをしに来たんだ」
龍「俺と喧嘩しろ」
野高「出来れば喧嘩したくないんだ…。話し合いで解決できないかな?」
龍「問答無用!!」
……………ガッ
鈴木が野高目掛けてパンチをかますが……
野高「ひっ!?」
すかさず避ける野高。
龍「逃げんな。俺と勝負しろ」
野高「意味わかんないよっ!?」
…………ガッ
野高「うわっ!?」
その頃、野高のクラスでは……
二年男子「おぉ〜!!なんか始まったみたいだぞ!?」
薄井「メダカめ…。やっと覚悟を決めたか!…よし。エールでも送るとしよう♪」
……………ガラッ
薄井は教室の窓を思いきり開け、グラウンドに向かって叫んだ。
薄井「優ーーー!!」
その薄井の叫ぶ様子は華のクラスからも見えていた。
華(薄井先輩が雄叫びを上げている!?)
池本(おっ?あの先輩でもエールを送る優しさがあったか……)
薄井「チーズ食えーーーーーーーー!!!」
池本(全然関係ねぇーーーーー!?!?)
野高「この状況でチーズなんか食えるかっ……!!」
龍「さぁ、観念して俺と闘え」
野高「………っ!!」
龍の本気をみた野高は速やかに逃走。
龍「……あのやろう」
野高が捕まるのは時間の問題であった。
〜龍の本気〜 完。