Cheese17〜虹色の恋〜
保健室から戻ってきた私達は何事もなかったかのように授業を受け、普段通りに過ごしていた。
その一方で、お昼になっても雅ちゃんが教室に帰ってくることはなかった。
華「……」
龍「そんなに佐藤のこと気になるなら保健室行けば?」
華「なっ、何にも言ってないよ?わたし」
龍「いーから行けって。それともダチ宣言は嘘?」
華「嘘じゃないよ!」
龍「……」
華「ありがとう…。鈴木くん。わたし、行ってくるね!」
わたしは席を立って保健室へと走った。
龍「…ったく、女はたりぃな」
保健室前に着くと、扉が少しだけ開いていて中から話し声が聞こえた。中を覗くと、雅ちゃんと見覚えのある後ろ姿の人物が座っていた。
??「もう起きてて大丈夫かい?雅ちゃん」
雅「下の名前で呼ばないで下さい」
??「…ごめん」
華(なんで…?)
雅「それに、他の生徒がいる前で下の名前なんかで呼んだら疑われますよ?高橋先生」
高橋先生「他の生徒って……たっ立川!?いつからそこに!?」
華「どうして高橋先生が雅ちゃんのことを下の名前で…?」
高橋先生「ちっ違うんだっ!立川!!これには訳があってだな…」
華「もしかして先生、雅ちゃんのことすすっ好きなんですかっ!?」
高橋先生「は…話しを聞いてくれ〜〜!?立川ーーー!!」
落ち着きを取り戻したところで高橋先生が口を開いた。
高橋先生「実は……結婚するんだ」
華「えぇえっっ!?高橋先生と雅ちゃんがっ!?」
高橋先生「だから話しを最後まで聞いてくれ」
華「…は、はい」
高橋先生「ここにいる佐藤とじゃなくて、お姉さんの方と結婚をする予定なんだ」
華「雅ちゃんのお姉さんと……結婚?」
高橋先生「ああ…」
華「高橋先生みたいな人と結婚したいって思う人もいるんですねー」
高橋先生「立川、軽く失礼だよ…?」
華「すみませんっ」
雅「わたしは認めてませんから」
高橋先生「佐藤…」
雅「わたしが言うのも変ですけど、姉は綺麗で優しい人です。あなたのような人と結婚してほしくありません」
高橋先生「佐藤、許してくれ……」
雅「たった今知らせにきたくせに許せと?…冗談でしょう?」
華「え?高橋先生、結婚のこと…今言ったんですか?」
高橋先生「……ああ」
華「急すぎますよ!?わたしだったら絶対に許しません!!」
高橋先生「立川?」
華「大体、高橋先生がそんなこと言う資格ないんじゃないですか?」
高橋先生「……どうして?」
華「鈍いですね…。雅ちゃんのお姉さんが直接雅ちゃんに伝えないと駄目なんですよ!!わかりますか!?」
高橋先生「!!」
華「高橋先生はフライングしたんです!!」
高橋先生「そうだよな…。結婚のことを最初に俺が佐藤に言う資格がないよ。ごめん、佐藤」
雅「今頃謝ったってもう遅いんですよ」
高橋先生「…ごめん」
華(これは二人の問題だ……。わたしが口出しする資格もない)
そう思ったわたしは静かに保健室を出ようとした。
その時、
雅「華ちゃん」
華「え?」
雅「ありがとう。わたしが思ってたこと全部この人に言ってくれて」
華「…うんっ!」
その日の放課後、わたしは水やり当番の仕事をしに花壇に向かった。
華(野高先輩、来てるかな?)
…………パシャッ
突然、後ろから水しぶきが小さくあたった。
華「づめたぃっ!?」
野高「遅いよ?立川さん」
華「野高先輩!?すみませんっっ!わたしもすぐにやります!!」
野高「あはは、ごめん。俺も今来たばっかりだから気にしないで」
華「そうなんですか?先輩のところも帰りのHRが長かったんですね」
野高「いいや?薄井を撒くのに苦労しただけだよ………」
華「たっ、大変でしたね……」
野高「うん。あ…じゃあ、水やりしようか」
華「あっ、先輩!お腹の具合、良くなりましたか?」
野高「うん。薬飲んだからバッチリだよ」
華
野高「さてと、立川さん。悪いんだけどホースの水出してくれないかな?」
華「はいっ!」
わたしはホースの繋いである蛇口に向かい、ひねった。
………ブシューーーッするとホースの口から水が噴水のように飛び出した。
華「ふげぇっ!?」
野高「立川さん!?水出しすぎっ!?」
華「あぁ!?先輩っ!見てください!?」
野高「いや、それどころじゃない気が…」
華「上です!上ですよーー!!」
野高(…?何をそんなにはしゃいで……)
上を見ると………
野高「!」
華「虹ですよーー!?でっかいですっ!!」
野高「………」
華「わぁーー!!綺麗な虹……」
野高「………」
一瞬、
君が虹よりも輝いてみえたんだ。
君のことをもっと
知りたいって思った…
〜虹色の恋〜 完。