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とろけるCheese  作者: KoKoRo
155/156

Cheese155〜照れ隠しベタ〜

 みんなで鍋を食べた日の翌朝、葵は昨日の夜から様子が変で、そそくさと学校に向かってしまった。そんな葵を追い掛けるように、わたしもいつもより早く家を出た。



―――学校の昇降口にて



華(今日はなるべく薄井先輩の顔を見ずに生きよう…)



―――ぱたっ

(下駄箱から自分の上履きを取り出し、床に落とす華)



龍「よぉ、立川じゃねーか。学校来んの早ぇーじゃん」



華「鈴木くんこそ早過ぎだし…! まだ7時前だよ?」



龍「俺は今日から朝練。サッカー部のな。つか、おまえがこの時間帯にいること自体、謎だな」



華「わたしは……ちょっと時間配分を間違えただけでして……」



辻森「おーい、鈴木ー! 早く来いよー! 先輩達に自己紹介しなくちゃなんないだからさー」



龍「わりぃ、そーゆーことだから。そんじゃな、立川」



華「鈴木くん」



龍「あんだよ? 今急いで……」



華「おめでとー」



龍「はぁ!? おまっ……知ってんのかよ!?」



辻森「はーやーくーしーろ――!!」



華「へへへ、頑張ってねー」



龍「〜〜〜っ!!」



――タタタッ

(華に背を向け、辻森と一緒にグラウンドまで走る龍)



 顔を真っ赤にした鈴木くんを見送った後、わたしは誰もいない図書室で本を読んだりして、時間をつぶした。その後、教室で登校して来た玲と話していると、鈴木くんが部活から帰ってきた。



玲「……おはよ」



龍「おう」



玲「あっ、そろそろHR始まるし、席戻るね」



華「えっ、でも…」



 玲はそのまま自分の席に着いてしまった。



龍「なんだよ? 俺の顔になんか付いてるか?」



華「や、何にも付いてないよ! 付いてないけど……」



龍「俺達のことは気にすんな」



華「…………」



 それから二人は、休み時間になっても会話を交わさず、とうとう昼休みになってしまった。



玲「はーなー、一緒に食べよ」



華「……やだ。」



玲「え゛」



華「変だよ、二人! 付き合ってるんでしょお!! だったら遠慮なく、一緒に食べてきなよ! それとも玲、まだわたしのこと気にしてる?」



玲「そりゃ…」



華「もっと自分に正直に生きなくちゃ、もったいないよ。鈴木くんもいつまでも顔赤らめてないで、一緒に食べたいなら食べたいで積極的に誘わなきゃダメ!」



龍「つか、何も言ってねぇし!」



玲「食べるんだったら、屋上がいいな」



龍「……あ゛〜、たりぃな。さっさと場所取りに行くぞ」



玲「ちょっ、たりぃってなによ! 曲がりなりにもあんたの彼女なんだからね!!」



龍「……」かぁぁ



玲「なっ!? 普通、そこで赤くなるか!?」



華「いってらっしゃ〜い」



……ぱたぱた

(手を振って二人を見送る華)



玲「ありがと、華」



華「ん」



 玲と鈴木くんが屋上に向かったと同時に、わたしは一人になってしまった。



華(雅ちゃんがいれば、一緒に食べられたのになぁ……仕方ない。今日は一人で食べよう)



 わたしが机に弁当箱を広げたところで、後ろの扉から騒がしい声と共に誰かが入ってきた。



圭「あれ? たっちゃん、今日ひとり?」



華「う、うん」



圭「よかったら俺らと一緒に食わない?」



譲「はぁ? なに勝手に決めてんだよ。俺は反対だからな。淳だって嫌だろ?」



淳「俺は…」



圭「淳ちゃんみたいな優しいヤツが断るわけないだろー? ほい、机はこっち!」



―――ガガガッ

(華の机を無理矢理引きずり出す圭)



華「わわわっ!?」



 机とその上に載ったお弁当を堤之原くんに奪われ、椅子に座ったまま、その場に取り残されてしまった。



圭「何してんのー! こっちおいでよー!」



華(うぅ、何でこうなるの……)



 仕方なく、堤之原くんがわたしの机を引きずって置いた場所まで椅子を持っていき、そこで座って食べることにした。



華「……」もぐっ



譲「――チッ」



淳「…………」



圭「つーかさぁ、この購買のパン、まずくね? 超失敗した〜」



………シーーン。



圭「あれ? なんで誰も喋んないの?? 俺の話しって、そんなつまんない系?」



華「いや、そんなことは…」



譲「――」ギロッ



華「…ないと思います」



淳「仲いい友達とならわかるけど、俺らと食うってなると、立川さんには抵抗あると思うよ」



華(まただ…また「さん」付けされた……)ムッ



圭「淳ちゃんさぁ、俺どーしても1コ、気になることあんだけど、なんで……」



華「なんだか他人行儀みたい。ねぇ、淳くん。どうして〈立川さん〉なの?」



淳「や、もうそう呼ぶ資格、ないから…」



華「呼ぶなって一言も言ってないよ。そんな風に言われたら、前みたいに普通に話し掛けちゃいけないのかなって思う」



淳「そんなことないよ」



華「……あるよ」



圭「え、なにコレ? 痴話喧嘩?」



華&淳「そんなんじゃない!!」



圭「スイマしぇん…」



譲「めんどくせぇから、名前で呼んでやれば? 女って訳わかんねぇところで変なプライド持つ生きもんなんだよ」



華「わかったような口聞かないで! 言っとくけどわたし、淳くんは応援してるけど、あんたのことなんかこれっぽっちも応援してないんだから!!」



譲「言うじゃねぇか、このクソ女……」



淳「じゃあ、今度から花子って呼ばせてもらおうかな」



華「それは絶対ヤダ!」



淳「あはは、嘘だよ。華ちゃん」



華「!」



淳「久しぶりに呼んだから、なんか照れる」



圭「ブプーッ!! 超照れてやんの〜! マジウケんですけど〜!!」



淳「……フルボッコ決定。譲、日頃の恨みをぶつけてやれ」



譲「了解」



圭「ちょっとタンマ! キャ――!! どこ触ってんだよ、変態!!」



譲「脇触ったぐらいで調子のってんじゃねぇ!」



圭「意味取り違えてますから〜〜!! ギャハハハハ!!!」



淳「ははっ、もっとくすぐれ〜」



華「……ぷっ、あはははは!」




 久しぶりに心の底から笑えたような気がした。








〜照れ隠しベタ〜 完。



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