Cheese15〜玲VS雅〜
高橋先生に嘘をついて教室を出た。
きっと、玲と雅ちゃんに出会う少し前のわたしだったら絶対にしなかっただろう。
そんなわたしを変えたのは……
あの二人だと思う。
玲と雅ちゃんの後を追い掛けようと廊下に出た。しかし、二人の姿が見当たらない。
華(あれ?いない!?見失なった……?)
龍「立川」
華「鈴木くん!?どうして鈴木くんがここに!?」
龍「うぜぇこと聞くな。伊藤と佐藤は?」
華「わたしが出た時にはもういなくて……」
龍「家庭科室か屋上だな」
華「なんで?」
龍「行くなら人目につかないとこだろ?お前、屋上いけ」
華「え?」
龍「俺が家庭科室に行く。二手に別れて探した方が効率いいだろ」
華「……ありがとう」
龍「何が?」
華「二人を探す手伝いをしてくれてるんだよね?」
龍「タオル返してもらってねぇからな」
華「?」
龍「佐藤に」
華「………うん。」
鈴木くんと別れ、わたしは屋上へと走った。
その頃、玲と雅は……
玲「こんなところに来てわたしに何か用?」
雅「用?そんなもんないよ」
玲「……?ずいぶん見た目と性格が違うじゃない。佐藤さん」
雅「用はない…けど、わたしとタイマンしてくれない?」
玲「喧嘩しろって?……フン、上等」
…………ガチャッ
華「やめてっっ!!」
屋上の扉を開けると二人が今にも喧嘩をしそうな様子だった。
玲「華!?」
雅「よそ見してんなよ?伊藤さん」
玲「!?」
……………バキッ
鈍い音と共に玲が地面に叩きつけられるように倒れた。
華「玲ーーーー!?」
雅「なんだ。あの頃より弱いね」
華「もうやめて!?玲を傷つけないで!!」
玲「華、危ないからどいてて」
華「玲!?」
玲「あんた、華に手ぇ出したら許さないよ」
雅「二人しておんなじこというね?でもまぁ、伊藤さんにしか攻撃しないから安心してよ?」
玲「かかってきな」
華「や………め……」
急に声が出なくなった。目の前で喧嘩をする二人を止めることができない。
華(これじゃ…鈴木くんと玲が喧嘩した時と同じだっ!)
雅「伊藤さん、わたしのこと覚えてる?」
玲「あたしに喧嘩売ってくる奴なんて……龍とあんたぐらいだよ」
雅「あは♪じゃあ、思い出してくれたんだ?」
玲「柳川小、元柔道部の佐藤 雅。正真正銘の……男」
雅「大正解〜♪」
玲「今頃になってあたしの前に現れるなんてね。それに女装がご趣味で?」
雅「女装はフェイク。最初から俺だと気付かれたらつまんないじゃん?」
玲「わたしがこの高校に通うって知っててたの?」
雅「ある人が俺に教えてくれたんだよ。たまたまね…」
玲「ある人?」
雅「そんなことはどーでもいいや。お前はあの時、俺のプライドをズタズタにしたから絶対に許さない」
玲「昔のことをうだうだうだうだ…………あんたは龍以下だね!!!」
華「やめて」
玲「華?」
雅「あ〜あ、また邪魔する気ですか?」
華「二人が喧嘩してるのを見てるだけなんて…そんなの嫌だっ!これ以上やるなら……わたしが雅ちゃんの相手をする!」
玲「華!!なんでそんなこと言うの!?」
華「だって……だって二人共わたしの友達だもん!!!」
龍「喧嘩もできねぇくせによく言うよ」
華「鈴木くん!?」
雅「………」
龍「佐藤。貸したタオルはちゃんと返せ」
雅「タオル?君から借りた覚えがないよ。」
龍「立川があんたに貸しただろ?それ俺のなんだよ。家庭科室に置きっぱにしやがって」
雅「ああ、あの青いタオルね。鈴木くんのだったんだ?」
龍「用はそんだけ。じゃあ後まかせた」
玲「はぁ!?あんた、何しに来たのよ!?どうせなら佐藤さんを止るとかしないの!?」
龍「やだよ。こいつ、俺と立川に謝りもしねぇ」
華「………!」
龍「口で言ってもわかる奴じゃねぇよ。お前がボコすしかねぇ」
玲「そんなことは……言われなくても……」
玲が消えた。
わたしが気がついたときには雅ちゃんが玲に殴られてぶっ飛ばされていた。
龍「……はや」
華「雅……ちゃん……」
龍「お前も人が良すぎんだよ。ばーか」
華「……利用されてポイ系?」
龍「いいや?お人よしでバカ系」
華「………へへへ。やっぱり駄目だね……。わたし」
龍「しっかりしろ。立川。お前、あの面倒くさい二人のダチなんだろ?」
華「うん!」
玲「龍ーー!!華ーー!!佐藤さん保健室に連れてくから手伝ってーー?」
龍「あー、たりぃ…」
華「手伝おうよ!鈴木くん!!」
龍「……だな」
喧嘩は止められなかったけど、
それでも雅ちゃんの友達でいたいと思うわたしは……
お人よしなのかな?
〜玲VS雅〜 完。