Cheese146〜君の味方〜
清々しい秋晴れを迎えたこの日、いよいよ体育祭の後半戦がスタートした。
華「よしっ!まずは綱引き頑張るぞ〜!」
??「うはははは♪」
華(むっ?この間の抜けた笑い声の主は……)
薄井「皆の衆、引きたまえ〜〜い♪」
(遠く離れた綱の端を持って応援する薄井)
坪井&優「おまえも引け――――!!!」
浅井『おお〜っと!?青組が一気に黄色組を押しています!?』
(アナウンス中)
薄井「あははは☆そ〜れ、わっしょい♪わっしょい♪)
坪井&優(神輿じゃねぇぇぇえええ!!!)
―――バァンッ
(ピストルが鳴る)
浅井『なんと――!?青組の逆転勝利です!!』
薄井「わっははは〜!当然だ♪」
坪井&優「……」
(薄井の前に立つ二人)
薄井「なんなんだ君達は!?」
優「ちょっと反省会しよっか?」にこぉ〜
(薄井の体操着をつまみ、薄井を引きずる優)
華(連れ去られた――!?)
圭「たっちゃ〜ん!」
華「ほへ?」
圭「なんかポッケから落としたよ?はい!」
(華に紙を渡す圭)
華「ありがとう……」
浅井『続きまして、赤組男子と白組男子の対決です』
圭「やっべ!!出番だにぃ〜」
(配置に戻る圭)
華(なんの紙だろう?)
……ぺら
(渡された紙を開く華)
するとそこには、『好きです。付き合って下さい』と書かれていた。
華(わたしにこれを渡したのは堤之原……くん。じゃあ、堤之原くんがわたしのことを??)
華「えぇええっ!?」
玲「どうしたの華!?突然大声出して!」
(華のもとに駆け寄る玲)
華「ななっ、なんでもないよ!?」
……カサッ
(ポケットの中に紙を隠す華)
玲「そ〜お?じゃあ、男子の応援いこっ」
華「うん……」
わたしのモヤモヤは晴れることなく、時は無常に流れ、いよいよ最終種目である色別対抗リレーが始まろうとしていた。
華(一人でトラック2周も走れるかな)
(列に並ぶ華)
優「立川さん!」
華「のだかせんぱぃ」
薄井「よっ!花子。無事に退院していたのだな♪」
華「はい。その説は色々とご迷惑をお掛けしました」
優「あれ?立川さん、一人?」
華「はぃ」
優「えっ!?だって一人1周なのに、二人分走るなんて無茶だよ!」
華「でも、やるしか―…」
『只今より、最終種目である色別対抗リレーを行います。選手の皆さんは所定の位置について下さい』
優「いくらなんでも立川さんには荷が重過ぎるよ……。俺、寺島先生に言ってくる!」
薄井「待て。メダカ」
優「なんで止めるんだよ!?」
薄井「君を止めているのは花子だ」
優「!?」
華「……」
(優の体操着を掴む華)
華「わたし、頑張るって決めたんです。だから、無茶苦茶だってわかってても、最後まで走りきります!」
優「立川さん……」
薄井「偉いぞ。花子」
華「……」ぽか〜ん
(口を開けて茫然とする華)
薄井「なんだ!?急にやる気がなくなったのか!?」
華「いえ!薄井先輩から褒められるとは思っていなかったので……」
薄井「僕もたまには人を褒めるのだよ。……すごくたまにだ☆感謝したまえ」ニヤリ
華(あ〜…なんか違う!急に褒められた気がしなくなってきた……)
優「俺、なんか余計なことしたみたいでごめんね」
華「そんな!嬉しかったです」
『それではこれより色別対抗リレーを行います』
華
玲「位置について〜、よ――い」
……バンッ
(ピストルを鳴らす玲)
華(そういえば玲がピストル打つ係なんだよね。走る前にちょっとでも話せたらいいな。緊張、少しは解れるかも)
(軽く深呼吸する華)
山田「きぃろぉおお――――!!根性みせたれぇえええ―――い!!!」
(旗を振り回しながらエールを送る山田)
『黄色組の団長は、後ろにさがって下さい。選手の邪魔です』
山田「……チッ」
浅井『舌打ちすんな!?こらぁああ―――!!』
華(会長さんが怒ってる!?)
薄井(恥ずかしいヤツめ。……そんなに山田のことが気になるのかい?)
書記「会長。これマイク入ってるんで、暴言は控えて下さい。皆びびってます」
浅井「わかりましたよッ!フンッ」
書記(子供だ……)
そんなこんなでレースは進み、現在の順位は1位赤組、2位黄色組、3位白組、4位青組となっていた。
華(ヒィィ!?1位で回ってきた―――!?)
玲「華!!落ち着いて!リラックスリラックス!」
華「よしきたっ!ス〜〜はぁぁ〜…」
その頃、華の後方では…
薄井「いよいよ花子の出番だな」
優「うん」
赤組女子「ふがぁあああ!!!」
(もの凄い勢いで華にバトンを渡そうとする)
華(MAX緊張―――!!)
……パシッ
(バトンを受け取る華)
玲(華、あんたはやればできる子よ!!あたし、信じてるからね)
優(頑張れ。立川さん)
華(ふぎぃ―――!!)
(全速力で走る華)
薄井(無茶苦茶だ……。最初からあんなに飛ばして最後まで持つわけない。落ち着け!花子!!)
華(く、苦しい……。あと一周半、走らなくちゃ……)
譲「よぉ、もう力尽きたのか?」
(華の横に並ぶ譲)
華「!!」
譲「ま、のろのろ走ってろよ。これで白組の優勝だな」
(華を抜き去る譲)
華(悔しい……わたしがもっと速ければ!!ここまで一位を繋いで走ってきた赤組の人達に申し訳ない――…)
(黄色を応援する山田の前を通過する華)
山田「……ばれ」
山田「がんばれ――!!立川さ―――ん!!!」
華(山さんの声が聞こえる……。ありがとう、山さん……)
白組に続いて、黄色、青組と、わたしは次々と抜かされていった。
華「ハァ……ハァ……」
(二周目を走る華)
「がんばれ―――!!」
華(なんだか色んな人達の声が聞こえる)
「立川」
華(幻聴――…?だって、この声は……)
龍「よく頑張ったな。後はまかせろ」
(ぽんと華の頭を叩き、華の手からバトンを奪う龍)
わたしはほんの一瞬、この人に好かれている玲がうらやましいと思った。
〜君の味方〜 完。