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とろけるCheese  作者: KoKoRo
143/156

Cheese143〜未来の約束〜

気がつくと涙は、服の袖に付いて消えてしまった……。



華「野高先輩、こんにちは」



優「こんにちは」



華「突然どうしたんですか?びっくりしましたよ〜!」



優「立川さんのことが心配だったから…お見舞い」


(手に持っていたバスケットの中身を華に見せる優)



華「わぁ…!チーズケーキだぁ!!」



優「よかった…。崩れてなくて。立川さん、チーズケーキ好きだったよね?」



華「はい!大好きです!」



優「…うん。俺も」



華「あれ…?確か野高先輩って、チーズ苦手でしたよね?」



優「へ……?あっ、ごめん!今のなし!!何言ってんだろ…俺」



華「??」



優「はい」


(バスケットを華に渡す優)



華「あっ…ありがとうございます」



優「じゃあ、俺はこれで」



華「もう行っちゃうんですか…?」



優「うん。立川さんの元気な顔が見れたからいいんだ。早く良くなって、また三人で同好会やろうね」



華「はいっ!」



優「待ってるから」



華「先輩…」



優「ん?」



華「わたし、先輩みたいな優しい人になりたいです」



優「…俺はそんなに優しい人間じゃないよ」



華「優しいです!だって、わたしが好きなチーズケーキをお見舞いに持ってきてくれたじゃないですか!わたしなんて、いつもトゲのあることを人に言ったりして、全然ダメなんです…」



優「……だよ」



華「え…?」



優「立川さんだからだよ。俺がそんな風に見えるのはきっと」



華「………」



優「立川さんは俺にとってその……特別だから。優しくなれるんだ」



華「特、別…?」



優「かっ………帰ろっかな!うん。じゃあ、また」



華「せんぱいっ!」



優「〜〜〜〜」


(立ち止まらない)



華「ケーキ、ありがとうございました!!大事に食べます!」



優「……うん。またね」



華「はい!また!」



野高先輩みたいに、優しい人になりたいと強く思った。でも、怪我に耐えて生きる氷河真に「ばかやろう」と叫んだわたしはやっぱり……



華「最低だ……」





―――翌日、わたしは朝から荷物の整理をしていた。



華「………」



龍「よかったな。立川。すぐに退院できてよ」



華「……うん」



龍「なんだよ、たりぃな。もっと嬉しそうな顔しろよ」



華「嬉しいよ?でも、鈴木くんのイビキがうるさくて、昨日はあんまり眠れなかったんだからね!」



龍「はぁ?誰がイビキなんかかくか!つーか、寝不足なのは枕が違うから〜とかなんじゃねーの?」



華(それだけじゃない…。元気が出ない理由はもうひとつあるって、自分でもわかってる…)



龍「聞いてんのかよ、立川」



華「あっ、うん…。そういえば氷河真、朝から居ないね…」



龍「どーせ売店でカリカリ梅でも買いに行ったんじゃね?」



華「そっか…。そうだよね!じゃあ、お先に失礼します!!」


(荷物を持って龍に頭を下げる華)



龍「おう。俺もさっさと退院してやる」



華「早く玲に会いたいんだ?」



龍「………」



華「………」



龍「立川……てめぇ……」



華「しっ…失礼しましたぁ――――!!!」


(病室から逃げ出す華)



龍「…ばーか」






―――病室を出たわたしはふと、普通に走れて歩ける自分の脚に目をやった。



華(もしもこの脚が動かなくなったら、わたしは耐えられるのかな…。氷河真みたいに耐えられるのかな……?)



看護師A「朝から頑張ってたわよね。正直、意外だったわ。どんなに言っても反発して聞かなかったから」



看護婦B「そうよね…。まぁ、これも一重にチョコとかあげたりして、なんとか機嫌を良くしようと努力した結果よ」



華(誰の……こと……?)



看護師A「チョコは関係ないと思うけど、頑張ってるのは確かよね。氷河くん」



華「あのっ!」



看護師B「はい、なんでしょう?」



華「氷河真、今どこにいますか?」



看護師B「氷河くんなら……」




―――気がつくとわたしは、無我夢中で走っていた。



『氷河くんならリハビリ室よ。一人で一生懸命、歩く練習をしていたわ。手伝ってあげようと思って声を掛けたんだけど、私の声、彼に届かなかったみたい。あなたの声になら返事をしてくれるんじゃないかしら』




―――リハビリ室にて



氷河「……ってぇ」



なんで…



氷河「動けよ、クソッ…」



華(なんで今になってそんなに頑張るの?わたしなんかの言葉が…あなたを動かしたの……?)



氷河「………」


(棒に掴みながら前に進もうとする氷河)



―――声を掛けちゃいけない。わたしは黙って氷河真の姿を見つめた。



『頑張って』



どうかこの言葉だけは彼に届いて欲しい。



声を出したらすぐに届く距離。でも、わたしには氷河真が遠くに感じる。わたしより遥か遠くに……



何度転んでも立ち上がる彼の姿に、わたしは涙が出そうになるのをぐっと堪えた。




わたしにも何かできることはあるのかな?




華「………」


(氷河の前に立つ華)



氷河「立川……?」



華「氷河真は、ここまで歩いて来れますか?」



氷河「……上等」


(立ち上がる氷河)



ゆっくりでいいんだよ。



自分のペースで、その脚で、一歩一歩進んでいこう。



諦めなければ、いつかきっと………



氷河「――ッッ!!」



華「!」


(転びそうになる氷河を抱きとめる華)



氷河「かっこわりぃ」



華「そんなことない。すごいよ……」



氷河「立川は…あったかいな」



華「え……?」



氷河「なぁ、立川。鈴木なんかやめて、マジでオレと付き合わない?」



華「うん」



氷河「うん?」



華「歩けるようになったら、1回だけデートに付き合ってもいいよ」



氷河「なんだそれ…。何年先の話しだよ」



華「応援するよ。だから…頑張れ」



氷河「りょ〜…かい」



わたしよりも氷河真の方がずっと……



あたたかい人だよ










〜未来の約束〜 完。



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