Cheese142〜決めつけた心〜
病院にいると、色んなことを考えてしまう。
雅ちゃんは今頃どうしてるんだろう?
淳くんはどうしてわたしのことを名字で呼んだんだろう?
どうして鈴木くんはこんなに……
華「速水もこみちみたいな顔してるんだろう…」
龍「は?つーか、前にも同じこと、誰かが言いやがったな…」
華「でしょう!?やっぱり似てるんだよ!」
龍「だーかーらぁ〜、アイツが俺に似てんだよ。パクりみたいなもんだ」
華「顔はパクれません」
龍「うっせぇ」
華「ぶぅ〜っだッ!じゃあ、黙ってますよ〜っだ」
龍「……フッ、ガ〜キ」
華「むっ!」
―――その頃、山下病院のロビーでは…
雅「あの、すいません」
看護師「はい」
雅「立川華はどこだ?居場所を教えろ」
看護師(な、なに?この子…。可愛いと思ったらすごい口の聞き方ね…)
雅「ボケっとしてねぇで教えてくんないかなぁ?対応遅すぎ」
看護師「ちょっと君、女の子なんだから、もう少し穏やかにした方がいいわよ?」
雅「誰が女だって……?」
看護師「え?」
雅「あんた女のくせに、男の俺よりかわいくねぇのな。ふふ、超時間の無駄だった」
(真顔で立ち去る雅)
看護師「お…男の子!?」
雅(早く華に会いたい……!会って、すぐに謝るんだ。許してもらえるかわかんねぇ。だけど……)
―――ドンッ
(人とぶつかる)
雅「いってぇな!?」
氷河「そんなカリカリすんなよ。カリカリ梅食う?」
雅「いらない」
氷河「そりゃ残念」
雅(こんな奴に構ってる場合じゃない。早く華に…)
氷河「立川華、探してるんだろ?」
雅「なんで知ってんだよ?」
氷河「…来いよ」
(前に進む氷河)
雅(新手のナンパか?でも、今はコイツを信じるしかねぇよな…)
―――華の病室前にて
氷河「ここっす」
雅「さっきの質問、まだ答えてもらってないんだけど」
氷河「早く入れば?立川、中にいるぜ」
雅「あんた、華の何?」
氷河「友人Bあたり?」
雅「ふーん。友人なら別にいーけど」
氷河「恋人候補Aとか言ったら怒るわけだ?」
雅「なにっ!?」
――――ガラガラ
(病室の扉が突然開く)
華「あれ?氷河真、いたんだ」
雅「華…」
華「雅…ちゃん…?」
雅「ごめん、本当にごめん…。怒ってるよな?華にこんな辛い思いをさせるつもりはなかったんだ…。許してもらえるまで俺は何度でも謝る」
華「怒ってないよ」
雅「――え?」
華「わたしが急に飛び込んじゃったのがいけないんだよね…。だから、雅ちゃんが謝ることないよ!わざとじゃないって、ちゃんとわかってるから…」
雅「ありがとう…」
華「そんなことより、学校……退学になんてならないよね!?」
雅「退学は免れたよ。ただ、一週間の停学処分」
華「停学……」
雅「そんな顔すんなよ。また一週間経ったら華に会える」
華「そうだよね…!」
氷河「停学ねぇ〜…。あんた、何やらかしたの?つーか、この親不孝者!学校行けるだけありがたいと思えよ」
雅「華、誰なの?コイツ」
華「元ヤンキー」 コソコソ
(小声で話す華)
氷河「元じゃねーから」
華「う゛……」
龍「誰かと思えば佐藤じゃねぇか。意外と元気そうでガッカリしたぜ」
雅「鈴木…?おまえが華と同室なんて、むかつく」
龍「んなもん知るか。病院の奴に文句言えよ」
雅「…まっ。鈴木クンとここで言い合ってもしょーがないし。華の顔、見れただけで満足。俺、帰るわ」
華「もう帰るの…?」
雅「いや〜ん☆じゃあ一緒に添い寝でもする?」
――――ポカッ
(雅の頭目掛け、ペットボトルを投げ込む龍)
――――バシッ
(雑誌を雅にぶつける氷河)
氷河&龍「帰れッ!!このオカマ野郎!!!」
華(すごい…。息ぴったり!)
雅「言われなくても帰るし。本当にごめんな?華。早くよくなってくれな」
華「うん。大丈夫だよ。雅ちゃんの顔が見れただけで、元気になったもん」
雅「そっか。じゃあ、また学校でな」
華「うん!」
氷河「………」
そして雅ちゃんは、晴々とした表情で病室を出て行った。
華「よっし!早く元気になって、すぐに退院しなくちゃ!!」
氷河「ずっとここにいればいーじゃん」
華「それは絶対にない!氷河真を置いて、パパ〜っと退院しちゃうもんね!」
氷河「そんな寂しいこと言うなよ…」
華「氷河真だって、いつか退院するんでしょう?」
氷河「オレは……無理だ」
華「え……?」
氷河「一生、歩けない体になっちまったからな」
龍「……」
華「嘘……」
氷河「嘘じゃねーし。だから普通に歩けるおまえ達がうらやましいよ」
華「無理じゃない」
氷河「は?」
華「無理なんかじゃないよ…。氷河真は歩くことを諦めただけなんじゃないの!?」
氷河「脚が動かねぇんだぞ……?これでどうやって歩けっつーんだよ?」
華「自分から歩こうと努力したの…?」
氷河「!!」
華「リハビリしたら治るかもしれない。脚が動かないって決めつけたら、このままずっと、何も変わらないままなんだよ!?」
氷河「きれいごとばっか…。リハビリしたら歩けるとか、そんな都合よくいくと思ってるわけ?ドラマの見すぎなんだよ」
華「……氷河の大馬鹿野郎っ!!」
(病室から走り出る華)
龍「……立川のいうことも一理あると思うぜ」
氷河「うっさいよ」
龍
―――その頃、華は…
華(脚が動かなくなるのって、どんなに辛いことなんだろう…。わたしは普通に歩ける。でも、氷河真は違うんだ……)
「立川さん」
華「……え?」
優「来ちゃった」
華「野高先輩…」
わたしは咄嗟に、涙が出そうになった目を拭っていた。
〜決めつけた心〜 完。