Cheese140〜ビターな恋心〜
「立川」
名字で呼ぶな。
「たーちーかーわ〜〜」
華「だから名字で呼ぶなってば!!」
――――ガバッ
(ベットから起き上がる華)
華「あ…あれ?ここ、どこ?」
龍「名字で呼ぶなって言われても困るし。じゃあ、なんて呼べばいいわけ?華とか?」
華「鈴木くん!?」ドキッ
龍「よぉ、元気か?」
華「うん…。ちょっとお腹が痛いけど、元気だよ」
龍「そか」
華「……鈴木くんがいるってことは、ここって病院なんだよね?」
龍「見ればわかんだろ?まぁ、運ばれてきた時、おまえ、意識なかったもんな」
華「救急車で運ばれるほど重傷だったんだ…」
龍「は?誰が救急車で運ばれたなんて言ったよ。おまえは金髪に担がれてここまで来たんだよ」
華「金髪って……薄井先輩のこと!?」
龍「名前まで覚えてねぇ」
華(薄井先輩がわたしを助けてくれたんだ…)
氷河「元気?」
華「ひゃあっ!?」
氷河「オレの顔みていきなり叫ぶとは、とんだご挨拶だな」
華「お、脅かさないで下さい」
氷河「あげる」
…………コト
(華の前にあるテーブルにチョコを置く氷河)
華「また看護師さんにもらったんですか…?」
氷河「やだなぁ!さっき売店で買ってきたんだよ」にこぉ〜
華(なに……?そのうそくさい笑顔は……)
龍「そういやぁ、さっきまで金髪がお見舞いに来てたぜ。それ置いて帰ったけどな」
華「……?」
(龍が指さした方向をみる華)
そこには綺麗に花を咲かせた百合の花が置かれていた。
華「お礼…言わなくちゃ!!」
龍「だから、もう帰った!」
華「そうなんだ…」
氷河「………」
(無言で病室を出る氷河)
華「あれ…?どうしたんだろう…?氷河真」
龍「知るか」
華「ちょっと見てくるね」
龍「……おせっかい女」
華「今ね、なんだかすごく心があったかいんだ」
龍「だから?」
華「だから……すごく機嫌がいいってこと!」
(病室を出る華)
龍(変な奴)
ところが、病室前の廊下に出ると、そこには氷河真の姿はなかった。
華(氷河真、どこに行ったんだろう…)
―――その頃、氷河は…
氷河「何しに来た?」
男「何って…見舞いに来たに決まってんじゃん。ほら、お前の好きな酒買ってきたぜ」
氷河「帰れ。てめぇとはもう縁を切ったはずだ」
男「そんなこと言わないでよ?それともまだ怒ってんの?俺がお前をひいちゃったこと…」
氷河「!?」
男「俺だっていろいろ大変だったんだぜ?サツに一日中、睨まれながら取り調べ受けたりさぁ」
氷河「てめぇの顔なんか二度と見たくねぇ。うせろ」
男「だからさぁ、何度も謝ったじゃん?すげぇ悪いと思ってるけど、感謝もしてんだよ。氷河があの時飛び出してこなかったら、俺……あのガキ殺してたかもしんない」
(氷河の肩に手を置く男)
氷河「触るな。さっさと消えろ」
男「氷河、俺はお前が死ななくてよかったと思ってるよ。心からな」
氷河「てめぇッ!!」
華「氷河くんから離れて!!」
(氷河の前に立つ華)
氷河「立川……?」
男「なんだぁ?このブス女」
華「………!!」
氷河「立川はブスじゃねぇ。二度と俺にその面見せに来んな」
(華の腕を掴み、その場から離れる氷河)
男「あ〜あ、天下のヤンキーも病院に篭ったら終わりだねぇ」
華「氷河真をばかにしないでよッ!!」
氷河「そいつにかまうな。行くぞ」
華「……呼び捨て」
氷河「は?」
華「なんでもない」
氷河真は怒ったようにわたしの腕を掴んで、前に進んだ。
華「………」
氷河「………」
華「あの…」
氷河「………」
華「あのッ!!」
氷河「ごめんな」
華「え……?」
氷河「携帯、壊してごめんな」
華「別にいいよ〜っだ!新しいの買うもん」
氷河「かわいくね―…」
華「どうせわたしはブスですよ〜っだ…」
氷河「ブスじゃねぇよ」
華「無理しなくていいってば」
氷河「かわいいよ」
華「………」ドキッ
氷河「…まて。言い過ぎた。普通よりはいいぐらい?」
華「うぅ〜…ばか!」
氷河「立川って本当、かわいいのな。なんか俺、おまえのこと好きみたい」
華「なっ…なにを…!?」
氷河「好きになっちゃった☆」
華「かわいく言ってもダメダメダメ―――!!!」
(華、逃走)
氷河「あ、待てよ!……逃がさないし」
(華の後を追う氷河)
華(氷河真だけは絶対に―――…)
―――ガラッ
(龍の病室の扉を勢いよく開ける華)
華「無理ッッ!!」
龍「…なにが?」
氷河「立川〜!」
華「ヒィッ!?来た!?お願い、鈴木くん!かくまって!!」
(龍の腕を掴む華)
龍「もう遅ぇよ」
氷河「たーちかわ…」
華「うぅ〜…」
龍「痛ぇよ、立川。そんな強く掴むな」
華「だって…」
龍「だってもヘチマもねぇんだよ」
氷河「…お前らさぁ、付き合ってんの?」
華「へッ!!??」
龍「…そーだけど?なんか文句ある?」
華(鈴木くん、何言って…)
氷河「ねぇよ。ばーか」
(病室を出る氷河)
華「……?」
龍「妙なもんに好かれちまったなぁ?立川」
華「知ってたの!?」
龍「はぁ?おまえって本当、鈍感通り越して馬鹿だよな」
華「馬鹿さッ!ええ、ええ!馬鹿ですよ〜っだ」
龍「逆ギレかよ」
華「チョコ食べよっと」
(氷河からもらった小さなチョコを口に入れる華)
華「……にがい」
そのチョコレートは、
ほんのり甘くて苦い、
ビターチョコレートの味がした……。
〜ビターな恋心〜 完。