Cheese14〜全部 嘘〜
家庭科室。
修羅場なんかよりも酷い状況にわたしは陥っていた。
華「………」
雅「さっきから黙りっぱなしで疲れたよ。はやく返事してくれない?」
華「………」
雅「返事しないならこのまま襲っちゃうよ?」
華「…………ない」
雅「なんか言った?」
華「協力なんかしない。」
雅「俺を敵にまわす気?…ハハッ、相当頭が悪いらしい」
華「もし、玲を傷つけたら絶対に許さない!」
雅「そう睨まないでよ?華ちゃん。そんなに伊藤 玲が好きなんだー…」
華「なんで玲なの?玲が雅ちゃんに何かしたの?」
雅「………不合格。」
華「……な…に…?」
雅「利用価値がある女だと思って近づいたけど、とんだボンクラだな」
華「利用って?最初からそのためにわたしの友達になったの?違うよね!?雅ちゃん!!」
雅「見た目がマヌケそう。ボンボンつけてるから馬鹿そう。それが華ちゃんの第一印象だよ」
華「!?」
雅「仲良くなったら何でも言うこと聞いてくれそうだったから近づいただけだよ。でも、もう用なしだ。帰っていいよ」
華「……雅ちゃんはわたしを友達だと思ったことないの?」
雅「ないよ」
華「………っ!!」
雅ちゃんに押さえつけられていた手を振り解き、夢中で家庭科室を出て行った。
全部嘘だった。
わたしに笑いかけてくれたあの笑顔も……
『友達になりたかった』と言ってくれたあの言葉も……
全部……全部…………嘘だった………。
………ガラガラ………教室の扉を静かに開け、わたしは自分の席へと向かった。
玲「あっ!華、オハヨー!!鞄置きっぱなしで何処行って……」
華「…………」
玲「華?ねぇ、どうしたの?何かあったの?」
龍「伊藤」
玲「なに!?」
龍「今のこいつに何言っても無駄だ。一人にしてやれ」
玲「ほっとけって言うの!?わたしは華の友達なのにそんなこと出来るわけない!!」
龍「お前が話し掛けてんのにコイツが黙ってんのはおかしいだろ」
玲「………」
龍「言う気になったらコイツから話すだろ。今は一人にしてやれ」
玲「華…。一人であんまり考えちゃ駄目だからね。たまには友達頼ったっていいんだからね…?」
華「………ごめんね。玲」
玲「…………」
玲は黙ってわたしの席から離れていった。
華「………」
龍「タオル……はやく佐藤に返してもらえよ」
華「!?どうして知って……」
龍「朝来る時、お前らが一緒にいんの見たから」
華「そっか…。ごめんね。タオル、必ず返すから……」
龍「……」
雅ちゃんと話しをしよう。
わたしが何を言っても無駄なのかもしれない。
だけどこのままじゃ前に進まない。
……大丈夫。
雅ちゃんならきっと話しを聞いてくれる。
あの笑顔だけは嘘だと思いたくないから……………
しかし、HRが始まっても雅ちゃんは教室に戻って来なかった。
高橋先生「あの〜、佐藤は何処に行ったんだ…??」
クラス男子「さあ?」
クラス女子「そ〜いえばさっき立川さんと一緒にいたのを見ましたけど〜?」
高橋先生「立川、本当か?」
華「………はい」
高橋先生「じゃあ今、佐藤は何処に?」
華「それは………」
………ガラガラッ……突然、教室の扉が開いた。
雅「………」
高橋先生「な、なんだ…。お、遅いぞ!佐藤。はやく席に着きなさい」
雅「伊藤さん」
玲「……え?」
雅「寺島先生が呼んでます。すぐにわたしと一緒に来て下さい」
玲「………」
高橋先生「……は?寺島先生が呼んでるのは伊藤だろう?佐藤が行く必要はないんじゃ……?」
玲「わかった…。」
…………ガタッ
返事をした玲は雅ちゃんの元へ行き、教室を出て行った。
高橋先生「ちょちょちょちょっと待て!?二人で行くな!!一人で行きなさい!?」
華(玲が………危ない………!?)
………ガタッ
気がつくとわたしは席を立ち、教室を出ようとしていた。
高橋先生「……立川?お前まで何処に行くつもりだ?」
華「ごめんなさい………、具合が悪いので保健室に行きます」
そう言ってわたしは教室を出た。
…………ガタッ
龍「………」
高橋先生「す、鈴木まで立って何処に行くつもりだっ!?」
龍「トイレだよ。うぜぇこと聞くんじゃねぇ」
高橋先生「先生に向かってなんだ!?その口の聞き方は!?」
龍「……」
高橋先生「無視をするなぁぁぁーーー!?」
池本(先生の叫びも虚しく、4人は教室を出て行った。チャンチャン……と)
〜全部 嘘〜 完。