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とろけるCheese  作者: KoKoRo
136/156

Cheese136〜先輩〜

 かつて不良の頂点と呼ばれた男、氷河真に携帯を人質に盗られたわたし、立川華は、携帯を取り戻すべく山下病院へと向かった。

 込み上げる怒りを抑えながら、氷河真の待つ屋上へと駆け上がった。

 案の定、わたしの携帯は氷河真の手中に収められ、揚句、メモリまで勝手に見られていたことを知り、怒りは頂点にまで達しようとしていた。

その時……



「キスして」



 わたしは耳を疑った。



華「なっ…なんじゃそりゃあ!?」



氷河「オレにキスしたら返すよ。キミの携帯」



華「冗談はやめてください!!そんなことできるわけないじゃないですか!?」



氷河「キスなんて簡単だろ。早くしないとこの携帯、地面にクラッシュだぜ?」



華「おかしいよ…。好きでもない人とそんなことできない。簡単なんかじゃないっ…」



氷河「……あっそ」


(携帯を握った手を屋上の手摺りから出す氷河)



華「ダメ――――!!」


(氷河の手を掴む華)



氷河「消されたくない奴のメモリでも入ってるわけ?」



華「!」



氷河「面倒くさいから、そのまま動くんじゃねぇぞ」


(華に顔を近づける氷河)



華「いや……絶対ッッッいやだぁぁあああ!!」



―――ビシィィッ


(氷河に思い切りビンタする華)




――――ポロッ


(氷河の手から携帯が落下)



華「あ゛!?」



氷河「イッテェ〜…。ざまぁみろ!!」






―――その頃、病室にいた龍は…



龍(あ〜…菓子食いてぇな、畜生。立川の奴、全然使えねぇじゃねーか)



―――ひゅるるる〜


(窓の外で華の携帯が一瞬で落下)



龍「あ゛?なんだ?今の…。鳥の死体か…?」





―――屋上では…



華(もうだめだ…。落ちる――――!!)



氷河「クラ〜ッシュ…」



「花子ッ!大丈夫だ!僕にまっかせろ〜〜い♪」



華(この声は…)



優「短距離は苦手なんだ…。後はまかせた!薄井!!」



薄井「!」


(虫採り網を持ってダッシュする薄井)



氷河「あの金髪、馬鹿だな。間に合うわけねぇ…」



華(薄井先輩なら…できる…!)



薄井「うはは〜!携帯ゲ〜〜〜ット……」



――ゴチッ


(思いっきりずっこける薄井)



華「ハッ……!!」



―――ガチャンッ


(携帯が地面に落下)



氷河「う〜わ〜…、超悲惨じゃん。あれじゃあの携帯、使いものにならねぇな?」



………ガラン


しかし、そこに立川華の姿はなかった。



氷河いねぇし…






――その頃、薄井は…



薄井「――…」


(こけたまま立ち上がろうとしない薄井)



優「薄井、大丈夫か…?」



薄井「花子の携帯を壊してしまった……」



優「これはお前のせいじゃないだろ?悪いのは……悪いのは全部あいつだよ」


(屋上にいる男を見上げる優)



薄井「………」



優「ごめん、ちょっと行ってくる」


(病院の中に入る優)



優「―――」



――――パタパタ


(階段を駆け降りる華)



優「!」



華「野高先輩…」



優「……ごめん」



華「先輩…?」



―――ぽん


(華の頭に手を置く優)



優「もう大丈夫だから」



華「!」



――――タンタン


(階段を上る優)



華「―――」



――俺が君を守る――







―――病院前にて



薄井「………」



華「薄井先輩!!」



薄井「………」



華「返事をしてください!先輩!!」



薄井「すまない…花子。携帯を守れなかった」



華「もういいんです」


(壊れた携帯を拾う華)



華「これでよかったんです…」



薄井「………」



華「もうっ!いい加減、顔を上げてください!先輩らしくないですよ?」



薄井「強いな。花子」



華「そんなことは…」



薄井「強いよ」


(顔を上げる薄井)



華「ヒィッ!?」



薄井「人の顔を見て、ヒィッ!?とはなんだ!」



華「まんじゅう並のタンコブがおでこにできてますよ!?頭を強く打ったんですか!?早く病院の人に診てもらいましょう!!!」



薄井「優はどこだ…?」



華「野高先輩なら病院の階段ですれ違いましたけど…」



薄井「あのバカ……!!」


(突然走り出す薄井)



華「薄井先輩!?」







その頃、屋上では…



―――カチャッ


(屋上の扉を開ける優)



氷河「……誰?」



優「立川さんの携帯、ここから落としたのは君だよね?」



氷河「そうだけど」



優「なんでそんなことしたの?」



氷河「ふーん。理由を知りたいわけだ?…なんでだと思う?」



優「さぁ…全然わからないよ」



氷河「ただの暇つぶし」



優「―――ッ!!」


(氷河に向かって走り出す優)



―――ガッ


(鈍い音と共に氷河が殴られる)



薄井「―――」



優「薄井…」



氷河「いってぇ〜。なんなんだよ?突然出てきて殴りやがって…」



薄井「イッ……痛いではないかぁぁあああ!?」



氷河「は?」



薄井「こんのっ…石ほっぺが!!何で殴った僕の方が痛そうなんだ!?謝りたまえ!!」



氷河「馬鹿みてぇ。車イスの人間殴った罰だな」



薄井「僕じゃなくて花子にだ」



氷河「!」



薄井「僕に殴られてよかったな。本気で優に殴られたら、君は気絶していたところだ」



氷河「あんた達、なに?正義のヒーローぶってるつもりかよ?」



薄井「君こそなんだ?…ああ、そうか…。不良ぶってるのか」



氷河「!?てめぇ…」



薄井「悪いことをしたら謝るんだよ。幼稚園児でも知ってることだ」



氷河「……」


(屋上を出ようとする氷河)



優「―――逃げるの?」



氷河「あんた達の話し聞いてるだけで疲れた」



―――カチャ


(屋上の扉を開ける氷河)



氷河「!」



華「………」


(氷河に背を向けたまま、肩を震わせる華)



氷河「……悪かった。守ってくれる奴がいて、あんた幸せ者だな」



華「うっ……」






先輩達の温かい優しさに、涙が止まらなかった。










〜先輩〜 完。



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