Cheese132〜先手必勝〜
わたし、教師になる!
自分の口から出た途方もない夢。こんな決断をするなんて、高橋先生以上にわたしは驚いていた……。
高橋先生「た、立川が教師?」
華「はい。いけない…ですか?」
高橋先生「いや、夢を持つことはいいことだと思うよ。それに、僕も立川と同じ歳くらいに教師になりたいと思ったからね」
華「そうなんですか?」
高橋先生「ああ。そのかわり、たくさんのものを犠牲にしてきた。例えば、自由な時間…とか」
華「それって、ずっと勉強してたってことですよね?」
高橋先生「今からプレッシャーかけるようなこと言わないけど、本当に実現させたいのなら…諦めるな」
華「はい!頑張ってみます」
高橋先生「…さてと!未来の教師がHRサボっていいのか〜?罰として立川は色別対抗リレーに強制参加!」
華「なんですか?それ」
高橋先生「なんですかもなにも、一週間後にやる体育祭の種目だよ」
華「あぁ〜、なるほど!……って!?色別対抗はクラスの中で1番速い人が走るんですよ!?わたし、むむむっ無理ですッ!!」
高橋先生「文句があるなら今日サボったこと、職員会議で報告しちゃうぞ〜?」
華「出ます!出ますから許して下さい!?」
高橋先生「そうか!頼んだぞ〜」
華(うぅ、ビリ確実だぁ〜…)
高橋先生「あと男子一人、うちのクラスから出さないといかんなぁ…。立川!クラスの中で1番走るのが速いのは誰だ?」
華「鈴木くんです!」
高橋先生「鈴木は入院中だ」
華「じゃあ…」
―――その後、6時間目のLHRで種目決めが行われ…
圭「ははいのは〜〜い!俺、色別リレー出ま――す!」
高橋先生「…」(唖然)
華「…」(茫然)
クラス男子「マジかよ〜?堤之原〜!おまえ、速くねーだろ?」
圭「速いとか遅いとか関係なくない?大事なのはハートだろ?」
高橋先生「意味がわからないぞ〜?堤之原〜…」
圭「淳ちゃんもそう思うよな!?」
淳「………」
(黙々と何かを書き続ける淳)
高橋先生「池本〜?書くのは一時やめにして、そろそろ種目決めに参加してくれないか?」
淳「俺は余りでいいですから」
華(淳くん…?)
―――ガタッ
(急に立ち上がる雅)
雅「わたしが色別やります」
高橋先生「え?」
クラス女子「男女一人ずつだから、佐藤さん出らんないよ〜?立川さんが選ばれてるし」
雅「問題…ないですよね?先生」
高橋先生「な、何言って…」
圭「さささ佐藤さんって走るの速いよな〜!なっ?火護くん!」
火護「え?え―、まぁ…」
圭「どうしてもって言うなら、譲ってあげてもいいよ〜?男子二人が出るなら他のクラスから文句言われるかもだけど、女子二人なら…ねぇ!?」
(高橋先生を見る圭)
高橋先生(堤之原、おまえ…)
火護「他の立候補もいないし、それでいいと思います」
高橋先生「そうだな…。じゃあ、頼んだぞ。佐藤」
――――ガタッ
(無言で座る雅)
華(雅ちゃん、さっき…何か言おうとした……?)
―――その後、放課後となり…
―――♪♪♪♪
(ベースの重低音が教室に響く)
雅「堤之原くん」
圭「な〜に〜?あ、うるさいとか言わないでね?これでもボリューム下げて弾いてますから」
雅「個人的な話しがあるんですけど?」
圭「…さっきの話し?だって君、なんか全部言っちゃいそうな感じだったじゃん」
雅「あれで私をかばったつもりなの?……余計なことしないでくれる?」
圭「なんだよ、それ…」
淳「さっきから何の話?圭、お前なんかしたのか?」
圭「俺、何もしてないし!つーか、佐藤さんが…」
雅「ちょーどよかった、池本淳。話しがあるんだけど」
淳「今、忙しいんで」
――――ガシッ
(淳の書く手を掴む雅)
雅『立川華ちゃんについてなんだけど』
(耳元で囁く)
淳「!!」
雅「廊下出て話そっか?」
圭「おい…、淳ちゃんに何話す気だよ!」
淳「いいよ。俺も話したいことあるからさ」
圭「………」
―――教室から離れた廊下にて
淳「〜♪」
雅「鼻歌なんてずいぶんと余裕じゃない?」
淳「今ちょうど、頭の中でいいメロディーが浮かんだんだよね。忘れないうちに口ずさんでおいた」
雅「ふざけないでよ…。よくそんなヘラヘラしてられるわね!?華ちゃんがどれだけ傷ついたかわかってるの!?」
淳「佐藤さん、知ってるんだ…。俺達が別れたこと」
雅「どうゆうつもりなの?あんたが好きで華と付き合ったんでしょう?もう華のこと、眼中にないってわけ?」
淳「俺がフラれたんだ。…立川さんに」
雅「タチカワさん?」
淳「もう馴れ馴れしく呼べないよ」
雅「……お前みたいな男、フラれて当然だ」
淳「……」
雅「もう、いーや。お前に隠す意味もなくなった。華は俺が守る」
淳「好きだったんだな。佐藤はずっと…」
雅「あっれ〜?結構冷静じゃん?もっと驚くかと思ったのに」
淳「知ってたから」
雅「は?」
淳「後夜祭のとき、立川さんと踊ってたのはお前だろ?」
雅「なんのことだかさっぱり…」
淳「立川さんは知らない奴に誘われて踊るような子じゃないよ」
雅「華のこと何でも知ってる風な顔で言わないでくんないかな?ムカつくから」
淳「佐藤は逃げてるよな」
雅「!!」
淳「いつまで女の恰好してるつもり?俺には言えて、皆には言えない理由ってなに?」
雅「うるさい…」
淳「そんな生き方してないで、ありのままの自分で生きろよ」
雅「黙れ……っ!!」
淳「もう何も言わない。……俺、教室に戻るから」
(教室に向かって歩き出す淳)
雅「俺は…」
―――それでも
淳「……」
―――この気持ちだけは
雅「華が好きだからな!!」
淳
―――譲らない
〜先手必勝〜 完。