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とろけるCheese  作者: KoKoRo
128/156

Cheese128〜てんとう虫〜

頭の上に感じる、ほのかな手の温もりが、わたしの心を落ち着かせてくれた。


 気がつくとその手は、わたしが泣き止むまで置かれていた…




華「………」



薄井「ん?泣き止んだかい?」



華「はい…。もう大丈夫です!いっぱい泣いたので、すっきりしました」



薄井「嘘発券機ピコピコ〜ン!本当はまだ泣き足りないんだろう?隠したって無駄だよ。僕にはわかる」



華「…先輩はなんでもお見通しなんですね」



薄井「図星か…。そうだ!花子!写真部室に行かないか?いいものをあげるよ」



華「……?」



―――そう言って、足早に保健室を出た先輩の背中を、わたしは追い掛けていた。






―――写真部室にて。



華(電気が消えてる…)



………ガチャガチャ


(鍵を開けて中に入る薄井)



薄井「なに突っ立ってんだね?おいで」



華「先輩、Cheese同好会のほうは何も出展しなかったんですか?」



薄井「何言ってんだ!?これでも朝は大変だったんだぞ?作ってきたチーズケーキも即完売の大盛況だ」



華「チーズケーキ…」



薄井「ああ。中にレモン果汁とか入れてみたり、抹茶風味にしてみたり、ブルーベリーをトッピングしてみたり…とにかくチーズに合いそうなものを色々試して作ったんだ」



華「わたしも食べてみたかったな…なんて!もう遅いですよね」



………コトッ


(テーブルの上にケーキを置く薄井)



薄井「花子スペシャルだ」



華「これ…わたしの顔ですか…?」



薄井「僕が描いたんじゃないぞ!?メダカが勝手に描いたんだ。まぁ、クリームは全部僕が作ったから、味は保証する」



華「………」



薄井「さぁ!食べたまえ♪」



華「もったいなくて食べられないです…」



薄井「腐るぞ?」



華「それは嫌です」



薄井「ならば僕が切ってあげよう!」


(ケーキを切ろうとする薄井)



華「待って下さい!?もったいないですっ!!せめて写真に撮って残したいです!」



優「写真なら撮ってあげるよ」



華「野高先輩!?」



薄井「いつのまに…」



優「セルフタイマーにセットしてあるから、三人で写らない?記念にさ」



薄井「Cheese同好会の記念すべき初ショットだな♪」



華「わたしには写る資格ないです…。今までずっとサボってきたんですよ?文化祭のお手伝いだって、何もしてないのに―――…」



優「あ、シャッター降りるよ」



薄井「笑いたまえ」



………むぎゅっ


(華のほっぺを引っ張る薄井)



華「ふぎぃ!?」




――――パシャッ





初めて三人で写ったその写真は、わたしが卒業するその日まで、写真部室に飾られることになる―――――








その後、文化祭二日目も無事に終了し、後夜祭というイベントが待ち構えていた。




――1年C組教室にて。



男子A「あ〜…やっと悲劇が終わったぁ〜」



男子B「ずっと女装して逃走すんのもしんどいよな〜」



玲「男子諸君!お疲れ!ほら、ジュースあげるよ」



男子A「サンキュ〜!伊藤さん」



男子B「あれ?そういえば鈴木は?」



男子A「知らね〜。つーか、アイツ一回も捕まらなかったらしいぜ?」



玲(龍が…いない?)



男子B「もしかして、まだ逃げてたりして」



玲(アイツが隠れてる場所……あそこしかないわね)


(突然走り出す玲)



男子A「あれ?伊藤さん、どこ行くの?」



玲「空の上」



男子A&B「――は?」








――――体育館にて。



玲(まずは2階に上るか…!)


(はしごを使って上る玲)



――――ガラッ


(体育館の窓を開け、さらに屋根の上へと続くはしごに手を掛ける玲)



玲(ひぇ〜…怖っ!落ちたら真っ逆さまね…)





――――まだ見えない屋根の先に……アイツはきっといると、なぜかそう思った――――



――――ガッ


(屋根の上に乗る玲)



…ほらね、やっぱり




玲「龍!」



龍「……」


(屋根の上でねっころがる龍)



玲「あんたいつまで逃げる気?文化祭、もう終わったよ」



龍「なぁ、こっち来てみろよ」



玲「なに?」


(龍のもとに歩み寄る玲)



龍「あれ」


(空を指差す龍)



玲「空がどうかしたの?雲ひとつないじゃない」



龍「ばか。ちげーよ。俺の指」



玲「指?…あ!てんとう虫!」



龍「こいつ、俺の指から離れねーんだよ」



玲「へぇ…。いいわね?虫に好かれて」



龍「何でてんとう虫っつーんだろうな?転倒する虫だからとか?」



玲「何回も転んで、また起き上がって…サッカーやってた時のあんたはそうだったよね」



龍「昔の話だろ?サッカーなんかもうどうでもいいし」


(起き上がる龍)



玲「あ」



龍「あ゛?」




(てんとう虫が飛び立ち、空に消える)



玲「あんたが動くから逃げちゃったじゃない!」



………グイッ


(突然、髪ゴムを引っ張り、玲の髪をほどく龍)



玲「イタッ!?」



龍「後夜祭でダンスやるらしいぜ。その髪型でなら一緒に踊ってやるよ」



玲「下手くそな誘い方!…踊るなら早く行くわよ」



龍「いっとくけど、俺のダンスは天下一品だからな」



玲「口ばっかり」



龍「俺のことだけみてろよ」



玲「――え?」



龍「ダンスの時」



玲「ばっ…バカヤロウ!」



龍「なにキレてんだよ?変な女」



玲「それはあんたが――」



龍「!」


(玲の顔に近づく龍)



玲「!?なっ…なに!?」



龍「動くな。おまえの顔にさっきのてんとう虫が止まってる」



玲「嘘。虫が止まってたら自分でわかるでしょ」



龍「今取るから、動くなよ」



玲「顔……近いって…」



龍「ほら、ここ」



玲「―――!!」





――――一瞬、何が起こったのかわからなかった




気づくと、あいつの顔が目の前にあって…………触れた。




あいつの口元に触れたのだ―――……











〜てんとう虫〜 完。



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