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とろけるCheese  作者: KoKoRo
127/156

Cheese127〜涙の行く先〜

 大好きな人と別れることが、こんなにも辛いなんて思わなかった。



文化祭を楽しむ人達の笑顔が眩しい…。


まっすぐと続く廊下をぼんやりと歩きながら、「これでよかったんだ」と、心の中で強く自分に言い聞かせた。



そうしなければ、今にも涙が溢れ出てきてしまうから……




「立川さん」



華「!」



優「よかった。三回目で気付いてくれたね」



華「野高先輩!ごめんなさい、気付かなくて…」



優「ううん、気にしないで。立川さんに会えてよかった」



華(優しい笑顔…。先輩、怒ってないのかな?ずっと同好会をサボってたのに……)



華「それにしても先輩の恰好…凄いですね。はっぴですか?」



優「こっ…これは薄井が考えたデザインで、好きで着てるわけじゃないんだよ?断じて!!」



坪井「あ゛ーー!?野高くん、発見!!今までどこであぶらうってたんだよーー?」



優「坪井…?ごめんごめん、ちょっとギター同好会のライブ見に…」



華「先輩も見てたんですか?」



優「うん。池本君達、かっこよかったよね」



坪井「はー!?ライブあったの?なんで隠してたんだよ〜…」



優「別に隠してたわけじゃないよ。でも近い将来、チケット買えば見に行けるんじゃないかな」



華「……!」



坪井「い゛。文化祭なのに金取んの?」



優「そうゆう意味じゃなくて…まだ先の話ってこと」



樽本「坪井く〜〜ん!!至急教室まで援護に来てーー!緊急事態発生ーー!」



坪井「オッケー!あ、仕事放棄の罰として、俺の分のビラ配りよろしく!ほんじゃね〜♪」



優「…っておい!こんなにたくさん配れるわけないだろーー!!」



華「大変そうですね。手伝いましょうか?」



優「…ん?いいよ、いいよ。大丈夫。その変わり、このチラシ一枚貰ってくれればそれでいいから」


(華にチラシを渡す優)



華「チーズINタコ焼き…?」



優「うん。うちのクラスで作ってるんだよ。よかったら食べに来てね」



華「はい!もちろん食べに行きます!早速今から買ってきますね。チラシ配り、頑張ってください!!」


(走り去りる華)



優「無理に笑ってるみたいだ…。立川さん…」





―――その頃、2年A組教室では…



坪井「緊急事態ってなに!?まさか材料不足かっ!?ケチケチ金を集めてあれほど買い貯めしたのにぃぃ〜!!」



薄井「材料なら足りてるよ。何を一人で焦ってるんだね?ツボーキサイト」



坪井「ななななんで薄井が焼いてんだよ―――!?おまえ、焼く当番じゃねぇだろーー―!?」



お客A「チーズタコ焼きふたつ下さ〜い」



薄井「INが抜けてるから焼いてあ〜げない」



坪井「営業妨害やめろーーーー!?」



樽本「やっぱり野高くんを連れてくるべきだったかな…。薄井くんを止められるのって、野高くんしかいないよね!?」



お客B「チーズ抜きタコ焼き下さ〜い!あ、マヨネーズたっぷりで♪」



薄井「チーズ…抜き?このとんちあんぽんたんめっ(?)なにがマヨネーズだ!!ふはは、これで十分だ♪ON THE カラ〜〜シィィィ〜〜!!!」


(タコ焼きの上にカラシを撒き散らす薄井)



坪井「ヤメテェェーーー!?」



クラス女子「あ゛!?薄井くん、タコ焼きひっくり返さないと焦げちゃうよ!?」



薄井「む?それはいかんな。とりゃあぁぁ!!」



坪井「ゆっくりやってーーーー!?」



…………ぴゅ〜〜〜


(タコ焼きが宙を舞う)



華「すみません!チーズINタコ焼きをひとつ……」



…………べちゃっ


(華の頭上に落下)



坪井「あ」



樽本「ああ!?」



薄井「あぁ?」



坪井「なんで語尾を下げるんだよ!?語尾をッ!」



華「………あつい」



樽本「だだっ大丈夫!?」



華「あついあついあついぃぃ!?」



薄井「大きな声を出すな!まったくもって、大袈裟だね」


(タコ焼きを掴み取る薄井)



薄井「あちぃっ!?」



坪井「熱いんじゃねーかよ!?」



薄井「これじゃあまるで爆弾焼きだ!?」



坪井(作ったのおまえだーーー!?)



薄井「すまない…花子。念には念だ。保健室へ行こう」



華「うぅ…。平気です」



薄井「いいからついてきなさい」



華(Cheese同好会に行かなかったこと、先輩は絶対怒ってる…)



薄井「ほら、行くよ」


(華の腕を掴んで走り出す薄井)



華「先輩…!?」



薄井「うはは♪人間急患車だ〜(?)」



華(人間急患車って一体??それにしても…走るのが早過ぎる〜〜!?)





―――保健室にて。



薄井「田中ティーチャーはいないようだね」



華「ぜーはーぜーはー…」



薄井「どうした?花子。心不全か?」



華「先輩のせいです!!」



薄井「とりあえず、頭に消毒液を塗るべきか…」



華「遠慮します」



………バチコーーンッ


(突然華の額を平手打ちする薄井)



華「!?!?」



薄井「蚊だ」


(手の平を見せる)



華「………」



薄井「やっぱり痛むんだろう?我慢するな。つむじ君が赤くなってるよ。それともなにかぁ!?さっきの平手が効いてしまったのか!?」


(華の顔を覗き込む薄井)



華「うっ…」


(泣き出す華)



薄井「花子?」



華「わたし、淳くんと……別れてきたんです…」



―――何言ってんだろう…。わたし



薄井「そうか…」



華「でも――これでよかったのかわからなくて…。まだ好きなのに……大好きなのにっ…!」



薄井「………」



――――ぽん


(華の頭に手を置く薄井)



薄井「泣きたい時は我慢するな。思いきり泣けばいいさ」



華「――――っ…」



薄井「……」




泣きじゃくる彼女を、僕は抱きしめて慰めるべきなのだろうか…?


そんなことを少し考えたが、僕には出来なかった。




『大丈夫、大丈夫』




花子の頭を撫でながら、僕は心の中で何度も唱えた。








〜涙の行く先〜 完。



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