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とろけるCheese  作者: KoKoRo
126/156

Cheese126〜さよなら〜

 鳴り止まない拍手と歓声の中、わたしの好きな人はステージの上で輝いていた。



―――そう、誰よりも。




「ピンレモ最高ー!!」



「いつか絶対デビューしろよーー!!」





(ステージの幕が完全に降りて、照明が消える)




あ〜あ、終わっちゃったんだ…



もっと見ていたかったな…



貴方の傍でずっと…




玲「はーなっ!最高だったね〜!池本の演奏…」



華「―――」



玲「華?どうしたの?なんで泣いてるの…?」



華「ううん、なんでもないよ。なんかすっごい感動しちゃって…。堤之原くんも鳴海くんも淳くんもみんなかっこよかった」



玲「それで泣いてたわけ?まったくもー!泣き虫ねぇ!」



華「わたし、淳くんに会わなくちゃ…」



玲「あ、そっか!早速演奏よかったよ〜って言いに行くのね?」



華「ううん、ありがとうって…言いに行く」



玲「―――え?」




―――その頃、体育館裏の一室では…



圭「キャー!!ですよ?キャーって…イコール俺達ってイケテるメンズってことっスか!?」



譲「喜んでるとこ悪いけど、お前への声援じゃねぇぜ?」



圭「じゃあ誰だよ?」



譲「俺だ」



圭「う〜わ。淳ちゃん、今の発言聞きました?」



淳「ごめん、ちょっと出るな。俺、行かなきゃいけないところがあるから」



圭「へ?どこに…」



譲「彼女んとこ?」



淳「…うん」



圭「そっか!うん。いってらっしゃい」



淳「いってきます」



―――ガチャ


(ドアを開け、部屋を出る淳)



譲「……」



圭「男二人、むさい空間になっちゃったね」



譲「淳がいたらもっとむさいだろーが」



圭「おぉう!?それもソーダ村(?)」



譲(また…あの女か…)



圭「おぃぃ〜!人がせっかくボケたんだから、ツッコんでよ」



譲「淳とあの女って、似合わないよな」



圭「……は?」





――――体育館に繋がる通路にて。



淳(華ちゃん…どこだ?今、どこに――)



そういえば、前にも同じことがあったな…



君を追い掛けて、ただがむしゃらに走ってた。



君のために作った曲を届けたくて、君に会いたくて―――




淳(そうだ、携帯!メールで…いや、電話の方が早いよな)



――――ピッ


(華の携帯に電話を掛ける淳)



〜〜〜♪

(すぐ側で着信音が響く)


淳(!この曲……俺が華ちゃんに貸したアルバムの中にある曲だ…)



「PINK LEMONボーカルの池本淳の初ステージは、最高でした」



淳「華ちゃん…?」


(少し前にある壁の後方を覗く淳)



華「えへへ…、みつかっちゃった」



淳「会いたかった」



華「わたしも淳くんに会いたかった。会って伝えたいことがあったから…」



淳「ありがとう」



華「え…?」



淳「俺がミスして演奏止めたのに、最高なんてさ」



華「最高だったよ。たった一度のミスでそんな俯いたりしちゃダメ!」


(淳の額を小突く華)



淳「はい」



華「―――もう、邪魔したりしないよ…」



淳「え…?」



華「淳くんはずっと、夢のために頑張ってたよね。淳くんの弾くギターの音が、世界で1番好きだったよ」



淳「華ちゃん…?」



華「夏祭りで見た花火、綺麗だったよね!学校が終わって、淳くんと一緒に帰る道が、いつまでも続けばいいなって思ってた。でもそれが……淳くんから大切な時間を奪った証拠なんだよ…」



淳「そんなこと言うなよ…。そんな風に思ったこと、俺は一度もない」



華「淳くんにはわたしより、堤之原くんと鳴海くんとの時間を大切にしてほしい」



淳「華ちゃんが傍にいたから今まで頑張れたんだ。圭と譲も大事だけど、俺は――」



華「わたしね、淳くんの邪魔をしたくない」



淳「邪魔なんかじゃない!」



華「ずっとずっと、淳くんのこと応援してる」



淳「俺の傍で…1番近くで応援してくれないのか…?」



華「別れよう…。淳くん」



淳「―――」




――もう、決めたんだ…



――夢を追い掛ける貴方の背中を、遠くから応援するって



―――でも




―――苦しいよ…




華「―――」



淳「後悔するなよ」



華「!」



淳「本当はなに考えてんだよってすげぇ怒鳴りたいけど……やめた。そんな顔してさぁ、ズルイんだよ。華ちゃんは」



華「ごめん…」



淳「俺のこと…好きだった?」


(華の頬に触れる淳)



華「好きだよ。今も変わらない…」



淳「俺も大好きだ」



―――――ギュッ


(華を抱きしめる淳)



淳「何年先になるかわからないけど、いつか絶対デビューしてみせる。約束する」



華「うん…」



淳「だからずっと、応援していてほしい。それだけで十分だよ…」



華「………」


(淳から離れる華)



駄目だ…。今、淳くんの顔をみたら、わたし――――



華「バイバイ。淳くん」


(走り出す華)



淳「華ちゃん!」



振り返っちゃ駄目だ!前だけを見るんだ!



淳「―――華!」




夢を叶えてね。淳




―――大好きだよ―――










―――体育館裏の一室にて。



―――バタンッ


(ドアを開け、中に入る淳)



圭「おかえりー♪淳ちゃ…」



淳「文化祭って何時までだっけ?…俺、先に帰るから」


(鞄を持って部屋を出ようとする淳)



圭「待てよ!なんかあったの!?」


(淳の腕を掴む圭)



淳「離せよ!一人にしてくれ」



譲「…彼女と何かあったとか?それとも、もう別れてきたか?」



淳「!」



圭「なんだよ、その言い方…。お前、何か知ってんのかよ!?」



譲「俺はただあの女に淳の邪魔すんなって言っただけだぜ?」



圭「!?ふざけんなッ!!」


(譲の胸倉を掴む圭)



淳「やめろ、圭」



圭「だって…!!」



淳「いいんだ」



圭「―――…」



譲「!」




―――この時見た淳の眼差しを、俺は一生忘れない―――








〜さよなら〜 完。



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