Cheese124〜集まる観客〜
―――文化祭二日目の午後、わたしの大切な人が、たくさんの人達の前で演奏する―――
――体育館裏の一室にて。
圭「あぁあ〜!超キンチョーしてきたぁ〜!!」
(辺りをウロウロする圭)
譲「落ち着けよ。つーか、この空いてる時間に練習しろ」
圭「譲ちゃんが冷静すぎんだよ!ねぇ?淳ちゃん」
淳「……」
(無言でギターを弾く淳)
圭「…練習しよっかな」
譲「最初からそうしろって言っただろ?」
―――コンコンッ
(誰かが部屋をノックする)
圭「誰か来たぁ!?もしかして俺達のファン!?」
譲「夢みすぎだろ…」
「池本いるーー?」
圭「あれ?この声、どっかで聞いたことあるような…」
淳「伊藤さんの声だ」
―――ガチャ
(部屋を開ける淳)
玲「よっ!ちょうどよかった。あんたに用があるのよ」
淳「俺に?」
玲「そう。…華がね」
(淳の耳元で囁く玲)
淳「華ちゃんが…?」
玲「あっちに隠れてるから、早く会いに行ってあげてよね」
淳「あっちって…どっち?」
玲「あっちだよッ!」
―――バシッ
(淳の背中を思い切り叩く玲)
淳「いてっ!」
華「……あ」
淳「あ」
華「元気かな?」
淳「…元気だよ」
華「今ね、体育館見てきたんだけど、人でいっぱいだったよ!溢れそうなくらい!」
淳「よかった。なんか安心した」
華「あれ?意外だな。緊張しない…?」
淳「するよ。心臓バクバク!でもさ、やっとこの日がキターーって感じ。ステージに立つことが楽しみだよ」
華「淳くんらしいね」
淳「そう?」
華「うん!あ、そうだ。これ…」
(ポケットからギターのストラップを出す華)
淳「これ、俺が使ってるギターにそっくりだね。色もおんなじだ」
華「淳くんにあげる。ライブ成功のお守り」
淳「俺に…?」
華「一生懸命さがして見つけたんだよ!淳くんに似てるギターじゃなきゃ意味がないって思ったから…」
淳「ありがとう。大事にする。今日から俺の宝物だ」
華「……そろそろだね」
淳「うん。俺も一生懸命演奏して歌ってくる。華ちゃんがこのストラップ見つけてくれたように」
華「頑張ってね」
淳「ちゃんと最後まで見てろよ?俺の姿」
華「うん」
―――みてるよ。
――――ずっとみてる。
「淳ちゃ〜〜ん!もうすぐ開演だぞ〜〜!」
華「堤之原くんが呼んでる…」
淳「華ちゃんは1番前のど真ん中の席に戻って。俺はステージ。…行ってきます」
華「いってらっしゃい」
―――淳くんの背中を見つめながら
涙が出そうになった…
玲「お話は済んだの?華」
華「うん。済みました!淳くん、呼んできてくれてありがとう」
玲「………」
華「ほら、早く行こう?始まるよ!」
(玲の手を引く華)
玲「あっ…ちょっとちょっと!」
―――その頃、体育館前では…
田奈「……」
田奈「………はぁ」
(体育館前で立ち止まる田奈)
田奈(やっぱりやめよう…。中に入らなくても外でだって聞けるよね…)
桜「入らないんですか?」
田奈「ひぇっ!?」
桜「ドラムの人、知ってます?無神経男だけど、意外とうまいんですよ」
田奈「いや、私はベースの人が……いやいや」
桜「それ、チケットですよね?もうすぐ始まる時間だから一緒に行きましょう」
田奈「あ、私はここで…」
桜「なんでですか?」
田奈「なんでと聞かれても…」
桜「もしもあの三人が超有名になったら、チケットだってすぐにSOLD OUTですよ。そしたらもう二度と間近でライブする姿を見れなくなっちゃったりするんですよ?」
田奈「それはいけません!私、中に入ります!」
桜「じゃあ、行きましょー♪」
田奈(あれ…?うまく乗せられた??)
―――同じ頃、学校の門前では…
茜「………」
(門の前で学校をみつめる茜)
書記「そこにいるお姉さーん。入るんですかー?そこに立たれると、車で来るお客さんの迷惑なんでー」
茜「あー、ごめんごめん!邪魔だった?」
書記「はい。かなり」
茜(はっきり言うわね…。このガキ…)
「チケットどうっスか〜?」
茜「!」
山田「もうすぐ始まるよ」
茜「誘ってくれた人が迎えに来るの遅いってどーゆーことかなぁ?」
山田「すまん!マジで時間ないから走ってくれ!」
(茜の手を取り、走り出す山田)
茜「拓ちゃん、速い〜!」
山田「その呼び方、やめれ!!」
浅井「―――」
(走り去る二人を呆然と見届ける浅井)
書記「あ、おかえり〜会長〜。トイレ長かったっスね」
浅井「一般客で賑わってて混んでたのよ。あんた、サボってないでしょうね?生徒会は文化祭を無事に成功させるために働くんだからね」
書記「へ〜い。わかってま…す……よ……」
浅井「仕事仕事仕事ばっかり…。もう……疲れちゃったな…」
書記「会長?」
浅井「見んな!馬鹿!」
(涙を拭う浅井)
書記「いや、あの〜、俺が泣かしてるように見えるんで、我慢してくれます?」
浅井
―――その頃、音楽室前の廊下では…
―――♪♪――♪
(ピアノの音が廊下に響き渡る)
雅「―――」
「いつまでそこにいる気なんだ?佐藤」
(音楽室の中から雅に声を掛ける高橋)
雅「気付いてたの?」
高橋「ここから少しだけ、お前の髪の毛が見えてな」
雅「あっそ。髪切ればよかった」
(音楽室前から立ち去ろうとする雅)
高橋「佐藤。僕は…お前のことが大好きだ」
雅「キモい」
高橋「キモくていいさ」
雅「うざい」
高橋「うざくても僕は…」
雅「―――でも、あんたのこと、嫌いじゃないよ」
高橋「!」
雅「グリーンスリーブス、また弾いて聞かせろよな」
高橋「ああ、もちろんだ。何度でも弾くよ」
雅「………」
―――そしてライブ開演の時刻となった―――
〜集まる観客〜 完。