Cheese122〜思い出の曲〜
文化祭初日、校内は異様なほど活気に満ち溢れていた…。
樽本「あ!?みつけた〜!!」
龍(うわっ、また逃げねーといけねっ)
………ドタドタッ
(ドレスを持ち上げ、全速力で走る龍)
樽本「坪井く〜ん!そっちにいったよ〜〜!!」
龍(!?)
坪井「ジャジャジャジャーン☆」
(突然、壁の隙間から出る坪井)
龍「挟み打ちかよ……、畜生がッッ」
……ドタタ――タンッ
(目の前にあった障害物を駆け上がり、坪井を飛び越える龍)
坪井「わぉ!人間技じゃないね?でも、そっちには――…」
龍(ヘッ、ざまぁみろ……!!??)
優「万事休す…だね」
龍「骨なし野郎!?」
優「失礼だな。俺は骨太だよ?」
………ガシッ
(飛んできた龍の腕を捕まえる優)
坪井「やりぃ♪さっすが野高くん!」
龍「三人でグルしてやがったのかよ」
優「俺達は賞品めあてで君を捕まえたわけじゃないから。…はい、これ。負けた変わりにうちのクラスのタコ焼き食べに来てね」
(龍にビラを配る優)
龍「…宣伝かよ」
優「確か君、立川さんと同じクラスだったよね?彼女にも食べに来てって伝えといてくれないかな」
龍「俺は一日中逃亡しなきゃいけない身なんで、アイツに会える保証できねーから」
優「あはは…、そんなこと言わないでよ…」
龍「まぁ、要するに、言いたきゃ自分で言えよってことで」
優「……」
樽本「野高くーーん!次は三年生の階行って、チラシ配ろー!」
優「あ、うん」
………タタッ
(龍の元を離れる優)
龍(いちいちめんどくせー奴…)
――その頃、屋上では…
―――♪♪――♪―♪
(ギターの音が響く)
―――ガチャ
(屋上の扉が開く)
圭「やーっぱりここに居たんだ。淳ちゃん」
淳「なんだよ、邪魔しに来たのか?」
圭「ちがいますぅ〜。つーか、たっちゃん!せっかくの文化祭なのに、一緒に回んなくていいの?」
淳「少しでも練習できる時間に練習した方がいいって、華ちゃんに言われた。俺だって一緒に回りたいけど、本番、明日だもんな」
圭「じゃあ、俺も混ぜて?んでさ、これ食おうぜ」
淳「タコ焼き?へぇ〜、旨そう」
圭「中にチーズが入ってんだってさ。すげぇ恰好で焼いてたよ。ザ・祭り!的な」
淳「ごめん、お前の表現じゃわかんない」
――その頃、職員室では…
高橋先生「いやぁ〜、うちのクラスの『鬼バトロワイヤル』は大盛況なんですよ〜!先生方も是非」
寺島先生「それって女装した男子を捕まえるってやつでしょ?いやいや、若い奴には敵いませんよ。体力の限界だ」
青山先生「体育教師が何を言ってるんですか。もっとしっかりして下さいよ」
寺島先生「鎌倉先生も、もう限界でしょう?」
鎌倉先生「決めつけないで下さい」
寺島先生「こりゃ失敬!それはそうと高橋先生!風の噂で聞いたんだが、奥さん、妊娠したんだって?」
高橋先生「え、ええ。まぁ…」
青山先生「あら、そうなの?おめでとうございます」
高橋先生「あ、どうも…」
寺島先生「なんだよ?あんまり嬉しそうじゃねーな」
高橋先生「いや、その…どうしても認めてもらえない子がいまして…」
寺島先生「えっ?嫁さんに隠し子でもいるのか!?」
鎌倉先生(…なんでそうなるんだ?)
高橋先生「いや、お互い初婚なので」
………カタッ
(テーブルに紅茶が置かれる)
田中先生「さ、これでも飲んでくださいな」
高橋先生「田中先生…ありがとうございます…」
田中先生「いえいえ。皆さんもどうですか?ついでにタコ焼きもどうぞ」
先生全員(紅茶とタコ焼きって合うのか?合うのか…?合うのかぁぁぁーーーー!!??)
――その頃、音楽室では…
――♪―♪♪―♪――♪
(ピアノの音が響く)
雅「……」
―――ぱちぱち
(拍手する音が音楽室に広がる)
雅「ずいぶん安っぽい拍手してくれるじゃない?華ちゃん」
華「!」
―――パチパチパチ
(拍手の音を大きくする華)
雅「……ばかな子」
華「今の曲ってなんていう曲なの?前とは違って、壮大な感じがした!」
雅「モルダウ。中学の時、合唱コンクールで弾かされた曲」
華「合唱コンクールかぁ…!懐かしいね。高校でもやりたかったなぁ」
雅「そんなのがあったら、また俺が伴奏やるはめになるだろ?勘弁してよ」
華「雅ちゃんって、中学の時は普通に男の子…だったんだよね?」
雅「そ。普通に学ラン着て、普通にズボン履いて…。今じゃ想像つかないだろうけど」
華「その頃の雅ちゃんに会いたいな。そしたらまた、今みたいに友達になれるかな?」
雅「友達…ね」
華「不満?」
雅「チケット配りをすっぽかして、油売ってる友達に捧げる曲はこれだな」
―――♪――♪―…
(ピアノを弾く雅)
華(なんだろう…、すごく哀しい曲に聞こえる…)
雅「チケット、配りに行かなくていいの?華ちゃん」
華「あ、うん。行かなくちゃ!その前にひとつだけ…今の曲はなんていうの?」
雅「ヒミツ。幼稚園の頃に通ってたピアノ教室で、先生が弾いてた曲なんだ。思い出の曲…かな」
華「そっか…、大切な曲なんだね」
雅「オラ!サボってないで、とっととチケット配ってこい!」
華「はいぃっ!!」
(ダッシュで音楽室を出る華)
雅(本当にばかだな。あいつは…)
――その頃、Cheese同好会では…
樽本「これ、おいしー!薄井くんが作ったの!?」
薄井「当然だ。朝の4時に起きて、仕込みに仕込みをかけた極上の一品だ!」
坪井「うめぇ〜!!チーズケーキって、こんなに旨いのな!」
薄井「……」
優「よかったな。褒めてもらえて」
薄井「あ、あぁ…」
優「……照れてる」
薄井「なっ…!照れてなどいないぞ!?断じて照れてないッ!」
坪井「お〜?照れてる照れてる〜!」
薄井「ちがぁぁう!!」
優「……」
―――この日、立川さんがCheese同好会に顔を出すことはなかった……。
〜思い出の曲〜 完。