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とろけるCheese  作者: KoKoRo
117/156

Cheese117〜ひとつの選択〜

 文化祭直前、淳がバンド活動をやらずに帰ったことが、大きな波紋をもたらすこととなった。



――翌日の早朝、教室にて。



圭「何で昨日黙って帰ったんだよ?」



淳「ごめん。詩は家で書いてきたから…」


(鞄から詩を書き込んだ紙を取り出す淳)



圭「作曲しないといい詩が書けないって言ったのは淳ちゃんだろ!?全員でやらなきゃ意味ないんだよ!」



淳「…ごめん」



圭「ごめんで済んだら警察いらねーんだよ!」



……ガタッ


(前の席に座っていた玲が立ち上がる)



玲「あ〜もう!朝からうるさい!転校生。後ろでそんな大声出さないでくれる?池本も反省してんだから、もういいじゃない」



圭「アネさんには関係ないことっス!」



玲「…アネさん?ちょっと!変なあだ名つけないでよ!」



圭「じゃあ、アネゴ!」



玲「余計駄目だっつーのぉ〜(怒)」


(圭の髪に縛られたゴムを引っ張る玲)



圭「これだけはご勘弁を…!イデデデッ」



玲「男が髪縛るんじゃない!キモイ!」



圭「これは、たっちゃんの真似しただけで…」



玲「…許すまじ」



圭「痛い痛い!?」



淳「……」




――その日の昼休み



……ガタッ


(弁当を持ち、席を立つ淳)



……グイッ


(淳の腕を掴む圭)



圭「捕獲」



淳「圭…」



圭「昼、譲も誘って一緒食べよ。そんで、練習しよ」



淳「悪いけど、今日は華ちゃんと食べる約束してるから…」



圭「三人でやらなきゃ意味ないって言っただろ?淳ちゃん、バンドやる気ないのかよ…?文化祭まで時間ないって分かってる?もっと真面目に考えろよ!」



……バッ


(圭に掴まれた腕を振り解く淳)



淳「俺はちゃんとやることやってるよ。詩だって書いてるし、作曲だってしてる。今まで全部一人でやってきたんだ。何もしてないお前に、とやかく言われる筋合いないね。ろくにベースも弾けないくせに」



圭「―――」



淳「…」



圭「俺が1番下手くそで、足引っ張ってんのはわかってる…けど、皆に追いつきたいから、毎日練習してる。必死にやってんだよ…!」



そう言い残して、圭は教室を出て行った。



淳「……」



華「…淳くん」



淳「華ちゃん…今の見てたのか?」



華「ごめんなさい。わたしのせいだよね…」



淳「華ちゃんは何も悪くないよ」



華「だって…わたしが一緒にお昼食べようって言わなかったら、堤之原くんと喧嘩にはならなかったでしょう!?」



淳「違う。俺が圭にきついこと言ったから…。全部、俺のせいだよ」



華「……」



淳「そんな顔しないで。華ちゃん。圭とはまたすぐに元通りになるから。だから、一緒にご飯食べよう」



華「……うん」




――その日の放課後



……ガラッ


(譲が華のクラスに潜入)



譲「オイッ!ナポリタンきやがれ!」



圭「ナポリタンって…俺のこと!?」



譲「お前しかいねぇだろーが!つーか、寝癖ぐらいちゃんと直してから学校来い!」



圭「すいましぇん」



譲「リーダーいねぇじゃねぇか?またサボリかよ!?ざけんじゃねぇ!」



……グッ


(圭の髪ゴムを引っ張る譲)



圭「イチェーー(?)淳ちゃんなら便所だよ!便所!」



譲「ならいい」



……バサッ


(髪ゴムを引き抜き、圭の頭が爆発)



圭「ギャーー?!せっかくごまかしてたのに」



譲「…なぁ、淳に彼女がいるって言ってたよな?お前」



圭「え?あ、うん。たっちゃんのことね」



譲「そいつ誰だ?このクラスか?」



圭「うん。あ、今、花壇に水やってる子だよ」



譲「……」


(教室の窓から花壇を見下ろす譲)



圭「結構かわいいっしょ?淳ちゃんにはもったいないくらい」



譲(!俺が初めて学校に来たとき、ぶつかってきた馬鹿そうな女…あいつが淳の…?)



圭「譲ちゃん、どーしたの?もしかして、たっちゃんに惚れた?」



譲「あんなガキみたいなリボンつけた女なんかに興味ねぇよ」



圭「あ〜…そっか!譲ちゃん、彼女いそうだもんね!」



譲「彼女ならいねぇよ。こっちに来るとき別れた」



圭「えぇ!?なんでだよ!遠距離に自信なかったとか?」



譲「邪魔だったから」



圭「――え?」



譲「俺はプロになりたくて上京して来たんだ。もうバンド組むことしか頭になかった」



圭「だから別れたの?」



譲「そうゆう選択肢もあるってことだ」



圭「俺も…」



譲「は?!お前みたいなバカにも彼女いたのかよ?」



圭「俺も譲ちゃんとベースが好きだよ!大好き!」



譲「げ」



淳「…ゲイの集団がいるよ」



譲「バカヤロウ!のん気に見てねぇで、このアホを止めろ!」


(抱き着こうとする圭を両手で抑える譲)



淳「いいんじゃないの〜?バンドの仲が深まるのはいいことだよ」



……ガタッ


(席に着く淳)



譲「コイツ、目がマジだし!?絶対ゲイだ」



圭「愛してるぅ〜」



譲「キショイッッ!!」



……ガンッ


(ドラムスティックを圭に直撃させる譲)



圭「角に当たった〜?!いてぇーー!」



淳「…さてと。詩でも考えよーっと」


(ノートを開く淳)



譲「オラッ!ナポリタン!コード繋いでこい。練習やるぞ」



圭「へいへ〜い」


(席を立ち、コードを繋げに行く圭)



淳「……」ぼ〜〜


(ぼんやり花壇を見つめる淳)



譲「…おい。手が止まってんぞ。手が」



淳「あ、わるい」



譲「……」




その後、作詞と作曲活動を続けた三人だったが、作業が進まず、二時間ほど練習をして解散となった。



圭「作曲が進まないのって誰のせい?」



譲「お前だよ。8ビートしか弾けねぇんじゃ、ベースが泣くぞ?」



圭「ウッス。もっと頑張るよ」



譲(圭は十分、頑張ってる。短期間でよくここまで…。問題があんのは…)



淳「じゃ、また明日な」



圭「今日もたっちゃんと一緒に帰んの?」



淳「ああ。図書室で待ってもらってるから、俺、先に帰るな」



譲「淳」



淳「ん?」



譲「…なんでもない」



淳「また明日」



譲「おう」




譲の中に生まれた疑問は、次第に深まっていった…。




〜ひとつの選択〜 完。



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