Cheese116〜疑惑〜
鈴木くんの好きな人が玲だとわかった瞬間、なぜだか嬉しくなった。
本当は照れてるくせに、鈴木くんは一生懸命否定し続けていた。
頬は真っ赤なのにね。
――その日の放課後
淳「華ちゃん、帰ろっか」
華「うん!…あ、もしかしたら薄井先輩が教室に来るかもしれないから、急いで帰ろう?」
淳「え?まだ続けてるんだ…」
華「ごめんね。正直に言うと、まだ決心がつかなくて…。もう少し考えてからでもいいかな…?」
淳「うん。俺は華ちゃんと一緒に帰れるだけで、十分だから」
華「ありがとう…」
―――華と淳が教室を出た数分後
………ガラガラッ
薄井「はぁなぁこぉぉ〜〜!今日は同好会に来たまえ〜〜い!!」
玲「うわっ!?出た…。金髪先輩……」
薄井「ん?花子はどこだ?どこに隠した!?」
玲「隠してませんよ!華なら、さっき帰りましたけど?池本くんと一緒に」
薄井「ジュンジュン?」
圭「エェーーー!?聞いてないよ〜〜!?淳ちゃん、帰っちゃったの?」
薄井「なんだ?チミは?会話に割り込むとは何事だっ!?」
圭「チミじゃなくて、堤之原ですよ。…ってゆうか今の話、マジっすか?」
玲「マジだけど。何?池本くんに用事でもあったわけ?」
圭「…バンドの練習。曲だってまだ完成してない。文化祭まで時間ないのに……」
薄井「文化祭なら2年A組に顔を出したまえ。タコ焼きを作って待ってるよん♪」
圭「タコ焼き…?」
玲「へぇ〜!先輩のところはもう文化祭の出し物、決まってるんですね」
薄井「ま〜ね。タコ焼きの中にチーズを入れたらどうだろうかという僕の提案に、女子達がやけに賛同してくれてね。即決まり!みたいな感じだな」
圭「うちのクラスって、文化祭のことについて話したっけ…?」
玲「してないわね。全く。まぁ、担任が高橋じゃしょーがないでしょ」
薄井「なんだ、まだ決まっていないのかい?全くあてにならない担任を持つと苦労が堪えないね」
圭「淳ちゃんの方があてにならないよ…」
薄井「堤之ハラッパラッパー…?」
玲(げ…。何そのニックネームのセンスのなさ…)
………ガラガラッ
(教室の扉を開けて、譲が中に入る)
譲「あれ?リーダーどうしたよ?」
圭「……帰った」
譲「は?」
薄井「僕も帰る。あ。花子に伝えといてくれ。これから文化祭の準備で忙しくなるから、来れる日にでも来てくれって」
玲「あ、あたしに言ってんですね?わかりました…一応伝えときます」
薄井「一応じゃなくて絶対だ。頼むよ?貞子くん」
玲「……誰が貞子じゃい(怒)」
………ガラガラ
(1年C組の教室を後にする薄井)
薄井(花子が水やり当番を忘れて帰るとは……まさか、若年アルツハイマー??)
―――その頃、優は保健室にいた
田中先生「野高くん?大丈夫?」
優「は…はぃ…なんとか…」
田中先生「またハデにお腹壊したわねぇ。顔が紫よ?」
優「む、紫ですか…?ははは、それはヒドイ…」
田中先生「笑ってる場合じゃないわよ。もう学校も終わったし、今日は早く帰って休みなさい」
優「いえ、そうはいきませんよ…。まだ俺には仕事が残ってて…」
(立ち上がろうとする優)
田中先生「駄目だったら……!」
(倒れかけた優を抱きとめる田中先生)
優「すいません…」
田中先生「………」
………ガラガラッ
(保健室の扉が開く)
薄井「メダカーー!花子が水やりサボっ……」
田中先生「!?」
・・・。
(重い沈黙が流れる)
薄井「田中ティィーーチャーーー!!??」
田中先生「ぅひっはいっ!?」
薄井「安心したまえ!誰にも言わないよ…」
田中先生「見事に勘違いしてるわね…。私はただ、親切で支えてあげただけよ」
………パッ
(優の肩から手を離す田中先生)
………バターーーン
(優、転倒)
薄井「しっかりしろーー!メダカーー!?死ぬなぁぁぁーーー!!」
優「死んでないよ…。これでも、まだちゃんと生きてんだから…」
(ゆっくりと起き上がる優)
薄井「そうか。あ。花子が当番と同好会サボって帰ったそうだよ」
優「そうなんだ…。じゃあ、俺一人でも水やりしなくちゃな…」
(よろよろと歩き出す優)
田中先生「だから無理しないでって……」
………トサッ
(再び倒れそうになる優を支える薄井)
薄井「当番は僕が引き受けるから、優は帰りたまえ。体弱いくせに、無茶するな」
優「……ごめん、ありがとう…」
薄井(僕の周りには、心配ばかりかける奴が多いな…)
薄井「じゃ。田中ティーチャー、後は頼みました〜」
田中先生「え、ええ」
………ガラガラ
(保健室を出て行く薄井)
薄井「…さてと。水やりでもしに行くとしよう」
山田「お、金髪くんじゃん。保健室から出て来たってことは、お前も怪我したのか?」
薄井「なんでチミがここにいるんだね?」
山田「そりゃこっちが聞いてんだろーが。…ま、いーや。文化祭の準備手伝ってたら、カッターで指切ったもんで、痛いのなんのって…」
薄井「ドジだね」
山田「直で言うな。腹立つから」
―――その頃、1年C組教室では…
譲「なんで帰んの止めなかったんだよ!?時間ねぇことわかってんだろ!?」
圭「わかってるよ!!でもそれは淳ちゃんが1番よくわかってることじゃね!?俺だってなんで黙って帰ったか知りたいぐらいだよっ!!」
玲「…ちょっと、アンタ達。こんなところで喧嘩しないでよ」
譲「うぜぇんだよ!いちいち口挟んでくんじゃねぇ!!このブス!」
圭「これは俺達の問題だから、伊藤さんには関係ないっしょ!?」
……………ドゴッ
(壁を殴る玲)
譲&圭「………」
玲「いい加減にしなさいよね……このクズ男共。殴られたいの?」
譲&圭「すいません…」
玲の一喝により、騒ぎは納まったようにみえた。だが、譲と圭の心には、靄がかかったままだった……。
〜疑惑〜 完。