Cheese114〜純情系?〜
文化祭まであと二週間と迫っていた。
―――放課後の1年C組教室にて。
圭「響け〜〜俺の〜〜ベースプレイ♪」
淳「なんでお前はそんなにテンション高ぇんだよ…」
譲「リーダーがせっかく作詞に集中してんだから、邪魔すんなよ」
圭「すいまちぇんでちた〜…」
譲「コイツ、一発、殴っていいか?」
淳「お好きにどうぞ?」
圭「ワ―――!?スイマセンスイマセン、本当にスイマセン!?」
火護「あの〜、取り込み中のところ悪いんだけど…」
淳「別に取り込んでないよ。何?」
………ドタドタッ
(教室中を逃げ回る圭とそれを追う譲)
火護「……あの転校生と池本くんと堤之原でバンド組んでるんだったよな?」
淳「まぁ、一応」
火護「もちろん文化祭で何かやるんだろ?記事にしたいから、バンドの名前教えてもらえない?」
淳「…え?」
圭「…へ?」
譲「…は?」
火護「いや、バンドの名前…」
圭「俺ら重大なこと、決めてなくね!?」
淳「曲作るので手一杯だったよ…。火護くんさぁ、記事にしてくれるのはありがたいんだけど、もう少し待ってもらえる?」
火護「……わかった」
淳「ごめんね」
火護「締切は明日の朝までね」
淳「早ッ!?」
………その後、淳は作詞活動を続け、圭と譲はバンド名を考えることとなった。
圭「ショッキングバブルズなんてよくね?」
譲「却下だな」
圭「……じゃあ、ゴシックサスペンダラスは!?」
………ガタッ
(急に立ち上がる淳)
淳「お前はパンクにしたいのか!?何なんだよ?そのネーミングセンスのかけらのなさは!!」
圭「何イライラしてんだよ〜?最近、たっちゃんとうまくいってないからってさぁ…」
淳「……そんなんじゃねぇよ」
………ガタ
(席に着く淳)
譲「誰のこと言ってんの?」
圭「淳ちゃんの彼女!今日、茶髪の先輩に横取りされたからイライラしてんの」
………ポカッ
(圭の頭に消しゴムを投げ込む淳)
圭「本当のことだろーー!?……あ゛!!」
譲(彼女ねぇ…)
圭「俺達の下の名前、取って繋げたらすごいぜ!?」
譲「はぁ?何言ってんだよ、お前。頭おかしいんじゃねーか?…いや、元からか」
圭「淳・譲・圭……俺達、純情系じゃん!?」
………ボカッッ
(圭の頭に筆箱を投げ込む淳)
淳「却下。」
圭「ひでぇ!?まだ何にも言ってないじゃんか!?」
淳「そんな妙ちくりんなバンド名にするのは却下だからな!?」
譲「案外イケるんじゃねぇか?」
淳「おいおい…」
圭「なっ?イケてるよな!?」
淳「お前は口を開くな!!」
譲「そのまんまじゃダセェけど、英語にしてみたらバンド名には使えるだろ」
圭「英語にしたら…ウィ〜ハブピュアラブラブ……?」
譲「全体的に違うじゃねぇかッッ!?口縫うぞ、テメェ!!」
圭「ヒィィ〜〜!?」
淳「英語にしたら、One of the naiveだな。あんまりバンド名っぽくないね」
圭「すげぇ〜〜!!淳ちゃん!ちゃっかり英語出来る系?つーか、淳ちゃんがバンド名決めてよ」
譲「そうだな。お前が作ったバンドだろ?」
淳「圭!好きな色は?」
圭「ピンク!!」
淳「ピンクかよ…。まぁ、いいや。譲!嫌いな果物は?」
譲「……レモン」
淳「じゃあ、PINKLEMONで決まりだな」
譲「はぁ!?」
圭「やだよ!そんなガールズバンドみたいな名前!」
淳「お前ら、俺が決めていいって言ったよな?」
譲&圭「……」
淳「よし。決まり!バンド名はPINKLEMON。略してピンレモな」
圭「略したらマシになったね。譲ちゃん」
譲「……まぁな」
淳「バンド名も決まったし、作曲活動手伝えよな?出来る曲次第で、歌詞も変わるから」
圭「じゃあ俺、ベースソロとかやっちゃうよん♪」
淳&譲「お前には無理」
圭「がちょ〜〜ん…」
――そして、翌日になり…
華「へぇ…!バンド名、PINKLEMONにしたんだぁ!」
淳「うん。あんまかっこよくないけどね」
華「そんなことないよ!呼びやすいし、みんなに覚えてもらえそうな感じがして、すごくいいと思う!」
淳「華ちゃんがそう言ってくれるなら、間違いないな」
華「…?」
淳「絶対いいバンドにしてみせる。だからこれからも…」
華「はいっ!応援してます!」
淳「…うん、ありがとう」
華「ふぁ…ふぁ…ハクシュンッッ」
(突然クシャミをする華)
淳「大丈夫?もしかして風邪?」
華「ううん!昨日、ちょっと水被っちゃって…。熱とかなかったから大丈夫だよ」
淳「本当に…?」
華「うん!本当に本当!…あ、予鈴鳴ったから席に戻った方がいいよ?」
淳「うん。じゃあ、また後で」
華「淳くん!!」
淳「え?」
華「今日は一緒に帰ろうね!」
淳「了解。約束ね」
華「うんっ!」
龍「朝からあちぃんだよ…。お前ら」
華「…ヘクシュンッッ!」
龍「色気ねぇクシャミすんな」
華「ずみまぜん……ハックシュン!!」
龍「……」
――その日の放課後…
華「……」ぐたぁ〜
(机に寝そべる華)
龍「おいおい、立川?大丈夫かよ?」
華「平気なのら〜(?)」
玲「全然平気そうじゃないわよ!保健室に連行させるからね!」
雅「なんなら私がおぶっていこうか?」
淳「待って!俺が行く」
玲「…そうね、よろしく頼むわよ」
淳「わかった。華ちゃん、立てる?」
華「…うぅ」
(淳の腕を擦り抜けて倒れそうになる華)
淳「華ちゃ…」
………ガシッ
(誰かが華を抱きとめる)
薄井「ちゃんと支えたまえ」
淳「薄井先輩…」
薄井「Cheese同好会に連行しようと思ったが、こんな状態じゃ無理だな…」
淳「…そんな同好会に華ちゃんを巻き込むのはもう、やめてください」
薄井「行くか行かないかは花子が決めることだ」
淳「………」
玲「…ちょっと龍!この険悪なムード、なんとかしなさいよ!」
(小声)
龍「たりぃ…」
重い空気を残したまま、薄井は教室を出て行った。
〜純情系?〜 完。